【標準】正弦・余弦の加法定理の使い方
ここでは、正弦・余弦の加法定理を使った問題を見ていきます。
足りないパーツを求めてから計算する
【標準】三角関数の加法定理の証明で見た三角関数の加法定理を使って、和の角や差の角の三角関数の値を求める問題を見ていきましょう。【基本】正弦・余弦の加法定理の使い方で見た内容より、少し準備が必要な問題を扱います。
角の和 $\alpha+\beta$ の三角関数の値を求めるので、加法定理を使います。 $\sin$ の加法定理は次のような内容でした。\[ \sin(\alpha+\beta) = \sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta \]今、左辺が求めたいものです。そこで、右辺に値を代入していけばいいのですが、 $\cos$ の値がわかりません。なので、この値を先に求める必要があります。
$\sin$ の値がわかっているので、 $\cos$ の値を求めるためには、三角関数の相互関係を使えばいいですね(参考:【基本】三角関数の相互関係)。 $0\lt\alpha\lt\dfrac{\pi}{2}$ なので $\cos\alpha\gt 0$ だから
\begin{eqnarray}
\cos\alpha
&=&
\sqrt{1-\sin^2\alpha} \\[5pt]
&=&
\sqrt{1-\left(\frac{3}{5}\right)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{4}{5}
\end{eqnarray}と求められます。また、 $\dfrac{\pi}{2}\lt\beta\lt\pi$ だから $\cos\beta\lt 0$ なので
\begin{eqnarray}
\cos\beta
&=&
-\sqrt{1-\sin^2\beta} \\[5pt]
&=&
-\sqrt{1-\left(\frac{5}{13}\right)^2} \\[5pt]
&=&
-\frac{12}{13}
\end{eqnarray}となります。
これでようやく加法定理が使えて
\begin{eqnarray}
\sin(\alpha+\beta)
&=&
\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta \\[5pt]
&=&
\dfrac{3}{5} \cdot \left(-\frac{12}{13}\right)+\frac{4}{5}\cdot \dfrac{5}{13} \\[5pt]
&=&
-\dfrac{16}{65}
\end{eqnarray}と求められます。
このように、加法定理を使う前に、足りないものを計算しておかないといけないこともあります。
足りないパーツを工夫して求めてから計算する
$\cos$ の加法定理は次のような内容でした。\[ \cos(\alpha-\beta)=\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta \]与えられている条件式は $\sin$ 同士の和、 $\cos$ 同士の和ですが、加法定理で必要なのは積です。どうすれば、和から積が求められるでしょうか。
先ほどの例題とは異なり、今度の例題は少しパズルチックな解き方をします。条件式をそれぞれ2乗すると、積が出てきます。これを使います。余分な項も出てきますが、2乗した式をそれぞれ足すと、うまい具合に値が求まります。
1つ目の条件式を2乗すると\[ \sin^2\alpha+2\sin\alpha\sin\beta+\sin^2\beta=\dfrac{25}{16} \]となります。また、2乗目の条件式を2乗すると\[ \cos^2\alpha+2\cos\alpha\cos\beta+\cos^2\beta=\dfrac{25}{16} \]となります。この2つの式を辺々足し、相互関係も使うと、
\begin{eqnarray}
1+2(\sin\alpha\sin\beta+\cos\alpha\cos\beta)+1 &=& \frac{25}{8} \\[5pt]
\sin\alpha\sin\beta+\cos\alpha\cos\beta &=& \frac{9}{16} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。 $\sin^2\alpha+\cos^2\alpha=1$ などとなって、2乗の部分はうまく消えるんですね。最後の式の左辺は、加法定理の右辺そのものなので、この式から\[ \cos(\alpha-\beta)=\frac{9}{16} \]と求められます。
このように、加法定理を使う前に、少し工夫をして計算しないといけない場面もあります。
おわりに
ここでは、正弦・余弦の加法定理を使って解く問題を見ました。必要な値を求めないといけない場面もあるし、その際に工夫が必要なこともあります。加法定理を覚えているだけではなく、いろいろな問題を通じて、使い方を学んでいきましょう。