【応用】sinθとcosθの対称式の最大・最小
ここでは、 $\sin$ と $\cos$ の対称式の最大・最小を求める問題を見ていきます。
sinθとcosθの対称式の最大・最小
$\sin2\theta$, $\sin\theta$, $\cos\theta$ と動くものが3つもあって考えづらいですね。できる限り1つにまとめて考えやすくなるようにしましょう。
すぐに思いつく変形は、 $\sin2\theta$ の部分を、2倍角の公式を使って\[ \sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta \]とすることでしょう(参考:【標準】2倍角の公式)。左辺のままではわかりませんでしたが、右辺のようにかくと、 $\sin\theta$, $\cos\theta$ の対称式(入れ替えても変化しない式。参考:【標準】対称式の値)であることがわかります。
対称式ではよく行う変形ですが、2倍角の公式の右辺は、 $f(\theta)$ の後半部分の $\sin\theta+\cos\theta$ を2乗すると、次のように現れることがわかります。
\begin{eqnarray}
(\sin\theta+\cos\theta)^2
&=&
\sin^2\theta+2\sin\theta\cos\theta+\cos^2\theta
\end{eqnarray}さらに、相互関係から
\begin{eqnarray}
2\sin\theta\cos\theta &=& (\sin\theta+\cos\theta)^2-1
\end{eqnarray}となることがわかります。
以上から、 $f(\theta)$ は、
\begin{eqnarray}
& &
\sin 2\theta-2(\sin\theta+\cos\theta) \\[5pt]
&=&
(\sin\theta+\cos\theta)^2-1-2(\sin\theta+\cos\theta) \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できます。こうすると、 $\sin\theta+\cos\theta$ の部分が共通していますね。これを $t$ とおけば
\begin{eqnarray}
f(\theta)
&=&
t^2-2t-1 \\[5pt]
&=&
(t-1)^2-2 \\[5pt]
\end{eqnarray}となることがわかります。
ここまでくれば、後は二次関数のグラフをかくだけ、といきたいところですが、その前に $t$ の範囲を考えておく必要があります。 $t=\sin\theta+\cos\theta$ はどんな値でもとるわけではありません。
この範囲を考えるには、三角関数の合成が使えます。【応用】sinθとcosθの和の最大・最小で見たように、三角関数の合成により、 $\sin\theta+\cos\theta$ は $\sqrt{2} \sin \left(\theta+\dfrac{1}{4}\pi\right)$ と変形することができます。 $0\leqq \theta\lt 2\pi$ なので、考えるべき範囲は $-\sqrt{2}\leqq t \leqq \sqrt{2}$ であることがわかります。
$-\sqrt{2}\leqq t \leqq \sqrt{2}$ の範囲で、 $y=(t-1)^2-2$ のグラフをかくと、次のようになります。
このことから、 $f(\theta)$ の最小値は $-2$ であることがわかります。また、最小値をとるのは、 $t=1$ のとき、つまり、 $\sin \left(\theta+\dfrac{1}{4}\pi\right)=\dfrac{1}{\sqrt{2} }$ のときなので、 $\theta=0,\dfrac{1}{2}\pi$ のときです。
最大値は $2\sqrt{2}+1$ となります。また、最大値をとるのは、 $t=-\sqrt{2}$ のとき、つまり、 $\sin \left(\theta+\dfrac{1}{4}\pi\right)=-1$ のときなので、 $\theta=\dfrac{5}{4}\pi$ のときです。
ここで見たように、次のように変形することはよくあります。\[ \sin 2x=(\sin x+\cos x)^2-1 \]【標準】三角関数を使った式の値(相互関係を使う)で見たときとは異なり、左辺を見て $\sin x+\cos x$ のにおいを感じ取るのは少し難しいですが、よく使う変形ですので使えるようになっておきましょう。
おわりに
ここでは、 $\sin\theta$ と $\cos\theta$ の対称式の最大・最小を求める問題を見ました。 $\sin 2\theta$ が対称式だと見るのはなかなか難しいですが、よく出てくる変形ではあります。また、対称式で表した後、 $t=\sin\theta+\cos\theta$ とおくこともよくあります。このとき、 $t$ の範囲を考える必要がありますが、ここで合成を使うこともよくあります。1つの問題で複数の公式を使うこともあるので、それぞれの公式を使う練習をよくしておきましょう。