【標準】3倍角の公式
ここでは、3倍角の公式を見ていきます。
3倍角の公式
【標準】2倍角の公式では、2倍角の三角関数について見ましたが、2倍があるなら3倍もあります。ここでは、3倍角の三角関数の値を求める公式を見ていきます。
3倍角の三角関数とは、 $\sin 3\alpha$ などのことで、これを $\alpha$ の三角関数の式で表すことを考えます。これは、加法定理を繰り返し用いて変形していくだけです(参考:【標準】三角関数の加法定理の証明)。
$\sin$ の場合は、
\begin{eqnarray}
\sin 3\alpha
&=&
\sin (2\alpha+\alpha) \\[5pt]
&=&
\sin 2\alpha \cos \alpha + \cos 2\alpha \sin \alpha \\[5pt]
&=&
2\sin \alpha \cos \alpha \cdot \cos \alpha \\
& & + (1-2\sin^2 \alpha) \sin \alpha \\[5pt]
&=&
2\sin \alpha (1-\sin^2 \alpha) \\
& & + (1-2\sin^2 \alpha) \sin \alpha \\[5pt]
&=&
3\sin \alpha -4\sin^3 \alpha
\end{eqnarray}となります。途中で、2倍角の公式を用いています。 $\sin 3\alpha$ は、 $\sin \alpha$ の三次式で表すことができるんですね。
$\cos$ も同じように加法定理と2倍角の公式を用いて
\begin{eqnarray}
\cos 3\alpha
&=&
\cos (2\alpha+\alpha) \\[5pt]
&=&
\cos 2\alpha \cos \alpha -\sin 2\alpha \sin \alpha \\[5pt]
&=&
(2\cos^2 \alpha-1) \cos \alpha \\
& & -2\sin\alpha\cos\alpha \cdot \sin \alpha \\[5pt]
&=&
(2\cos^2 \alpha-1) \cos \alpha \\
& & -2\cos \alpha (1-\cos^2 \alpha) \\[5pt]
&=&
-3\cos \alpha +4\cos^3 \alpha
\end{eqnarray}となります。 $\cos 3\alpha$ は、 $\cos \alpha$ の三次式で表すことができるんですね。
こうして並べてみると、2つの式はよく似ていることがわかります。1乗と3乗があって、係数には3と4が出てきています。符号が逆になっているだけですね。
よく似ているということは、覚え間違いをしやすいということです。しかも、加法定理や2倍角の公式と比べると、出題頻度は低めです。
なので、もし出くわしたら、加法定理と2倍角の公式からササっと導くのがいいと思います。覚えておくとしても、使う前には、 $0$ や $\dfrac{\pi}{2}$ などのわかりやすい値を入れて、係数や符号が間違っていないか確認してから使ったほうが安全でしょう。
例として、 $\alpha=\dfrac{\pi}{6}$ というすでに分かっているもので実験してみましょう。 $\sin 3\alpha=1$ ですね。また、3倍角の公式の右辺に代入すると
\begin{eqnarray}
3\sin\dfrac{\pi}{6}-4\sin^3\dfrac{\pi}{6}=\frac{3}{2}-\frac{4}{8}=1
\end{eqnarray}となり、たしかにあっています。こうしたチェックをしてから使った方がいいと思います。
3倍角の公式を見ましたが、4倍、5倍と続いていくことはなく、普通は、出てくるとしても、3倍角までです。もし仮に3倍より大きいものが出てきた場合は、3倍角のときと同じように、加法定理を繰り返して変形していくことになります。
おわりに
ここでは、3倍角の公式を紹介しました。 $3\alpha$ の三角関数の値を $\alpha$ の三角関数の式で書くことができます。これを用いる場面は、問題の序盤で式変形を行うときであることが多いため、覚え間違いをしていると大けがをする可能性があります。使う前に、具体的な値を入れて、符号や係数が間違っていないか確認するようにしましょう。