【応用】加法定理と三角関数の次数下げ
ここでは、2倍角の公式を使って、三角関数の次数下げを行う方法を見ていきます。半角の公式や合成の話も取り上げます。
三角関数の次数下げ
$\sin$ と $\cos$ が混じっていてややこしいですね。こういう場合は、できる限りくっつけて、動くものを1つだけにしたほうが考えやすくなります。
まず、真ん中の項を見てみましょう。2倍角の公式に次のようなものがありました(参考:【標準】2倍角の公式)。\[ \sin 2x=2\sin x \cos x \]これを右辺から左辺に変形すると、今考えている式の真ん中の項は $2\sin 2x$ と変形できることがわかります。
残りの2つも、2倍角の公式を使って変形することができます。 $\cos 2x$ は、 $1-2\sin^2 x$ と書けることから\[
\sin^2 x=\dfrac{1-\cos 2x}{2} \]となります。また、 $2\cos^2 x-1$ とも書けるので、\[ \cos^2 x=\dfrac{1+\cos 2x}{2} \]となります。これらは、半角の公式(参考:【標準】半角の公式)で見た内容と同じ変形です。
これらを使えば、もとの式はすべて2倍角の三角関数で書くことができます。二次式の項がすべて一次式の項に変換できています。
\begin{eqnarray}
& &
\sin^2 x +4\sin x \cos x -3\cos^2 x \\[5pt]
&=&
\dfrac{1-\cos 2x}{2} +2\sin 2x -3\times \frac{1+\cos 2x}{2} \\[5pt]
&=&
2\sin 2x -2\cos 2x -1 \\[5pt]
\end{eqnarray}さらに、 $\sin 2x$ と $\cos 2x$ は、三角関数の合成を使って1つにできます(参考:【標準】三角関数の合成)。よって、さらに変形できて
\begin{eqnarray}
& &
\sin^2 x +4\sin x \cos x -3\cos^2 x \\[5pt]
&=&
2\sqrt{2} \sin \left(2x-\dfrac{1}{4}\pi\right) -1
\end{eqnarray}とできることがわかります。 $0\leqq x \lt \pi$ なので、\[ -\dfrac{1}{4}\pi \leqq 2x-\dfrac{1}{4}\pi \lt \frac{7}{4}\pi \]だから、 $x=\dfrac{3}{8}\pi$ のときに最大値 $2\sqrt{2}-1$ をとり、 $x=\dfrac{7}{8}\pi$ のときに最小値 $-2\sqrt{2}-1$ をとることがわかります。
この問題で見たように、2倍角の公式を使うことで、以下のような変形をすることができます。
\begin{eqnarray}
\sin x \cos x &=& \dfrac{1}{2} \sin 2x \\[5pt]
\sin^2 x &=& \frac{1-\cos 2x}{2} \\[5pt]
\cos^2 x &=& \frac{1+\cos 2x}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}これらの変形により、二次式を一次式に変形できるようになります(その代わり、角は2倍になります)。そうすると、2倍の角の $\sin$ と $\cos$ の式になるので、合成によってさらに $\sin$ だけにまとめることができる、というようになります。
おわりに
ここでは、2倍角の公式を用いて、三角関数の次数下げを行う問題を見ました。2倍角に変換し、合成することで、動きがわかりやすくなりました。いろいろな変形の仕方があるので、1つずつマスターしていきましょう。