【応用】半角のtanを用いた三角関数の媒介変数表示
ここでは、 $\tan \dfrac{1}{2}\theta$ を用いて、 $\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ を表す方法を見ていきます。
半角のtanを用いた三角関数の媒介変数表示
$t=\tan\dfrac{1}{2}\theta$ とおき、 $t$ を用いて、 $\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ を表してみましょう。この式変形は、三角関数の分野ではあまり使わない(これを示すこと自体が問題になることはある)のですが、将来、三角関数の積分を学ぶときに出てきます。なお、 $\theta$ は $\tan$ が存在するときのみを考えます。
まず簡単なのは、 $\tan\theta$ ですね。これは、2倍角の公式(参考:【標準】2倍角の公式)を用いることで
\begin{eqnarray}
\tan\theta
&=&
\dfrac{2\tan\dfrac{1}{2}\theta}{1-\tan^2\dfrac{1}{2}\theta} \\[5pt]
&=&
\dfrac{2t}{1-t^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となることがわかります。
$\cos\theta$ も、2倍角の公式を用います。さらに三角関数の相互関係を用いて次のように変形することができます。
\begin{eqnarray}
\cos\theta
&=&
2\cos^2\dfrac{1}{2} \theta -1 \\[5pt]
&=&
2\times\dfrac{1}{1+\tan^2\dfrac{1}{2} \theta} -1 \\[5pt]
&=&
\dfrac{2}{1+t^2} -1 \\[5pt]
&=&
\dfrac{1-t^2}{1+t^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}このようになります。
最後の $\sin\theta$ は、この2つから次のように求めることができます。
\begin{eqnarray}
\sin\theta
&=&
\tan\theta\cos\theta \\[5pt]
&=&
\dfrac{1-t^2}{1+t^2} \times \dfrac{2t}{1-t^2} \\[5pt]
&=&
\dfrac{2t}{1+t^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}また、2つを経由せずに直接出すには、次のように変形します。
\begin{eqnarray}
\sin\theta
&=&
2\sin\dfrac{1}{2}\theta\cos\dfrac{1}{2}\theta \\[5pt]
&=&
\frac{2\sin\dfrac{1}{2}\theta\cos\dfrac{1}{2}\theta}{\sin^2\dfrac{1}{2}\theta+\cos^2\dfrac{1}{2}\theta} \\[5pt]
&=&
\frac{2\tan\dfrac{1}{2}\theta}{\tan^2\dfrac{1}{2}\theta+1} \\[5pt]
&=&
\frac{2t}{1+t^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}途中で、無理やり分母に $1$ があると考え、相互関係を用いて変形するところが難しいですね。
ここで見たように、 $t=\tan\dfrac{1}{2}\theta$ を用いれば、 $\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ をすべて、 $t$ の式で書くことができます。変数 $t$ を媒介として、 $\theta$ と $\sin$, $\cos$, $\tan$ との関係を示す書き方なので、このような書き方を媒介変数表示といいます。
\begin{eqnarray} \sin\theta &=& \dfrac{2t}{1+t^2} \\[5pt] \cos\theta &=& \dfrac{1-t^2}{1+t^2} \\[5pt] \tan\theta &=& \dfrac{2t}{1-t^2} \\[5pt] \end{eqnarray}
今の段階では、この表現を見ても、「 $\tan\dfrac{1}{2}\theta$ が有理数だったら、 $\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ もぜんぶ有理数だな」くらいしかわかりませんが、三角関数の積分など、将来では使うこともありますし、この変形を知らないと解けない問題もあります。
おわりに
ここでは、 $\tan \dfrac{1}{2}\theta$ を用いて、 $\sin\theta$, $\cos\theta$, $\tan\theta$ を表しました。2倍角の公式や相互関係を駆使して導きました。すべて半角の $\tan$ だけで書けるのはきれいですね。