【応用】ロピタルの定理と極限値

ここでは、三角関数などの微分を用いて極限値を求める問題を見ていきます。また、最後に、入試で裏ワザ的に利用されるロピタルの定理の紹介もします。

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微分係数を使って極限値を表す

例題
次の極限値を求めなさい。\[ \lim_{x\to 0}\frac{\log (x+1)}{\tan x} \]

$x\to 0$ とすると、分母も分子も $0$ に収束してしまうため、工夫をして計算をする必要があります。

ただ、分母も分子も、これ以上式をいじることは難しいです。【標準】三角関数などの微分と極限値で見たように、関数の微分を使って極限を求める方法を見ましたが、今回は、微分の定義が使えそうな気配が感じられません。

そこで、次のように分母と分子を同じ数で割り、無理やり微分の定義が使える形に変形してみましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to 0}\frac{\log (x+1)}{\tan x} \\[5pt] &=&
\lim_{x\to 0}\frac{\dfrac{\log (x+1)-\log(0+1)}{x-0}}{\dfrac{\tan x-\tan 0}{x-0}} \\[5pt] \end{eqnarray}こうすると、 $x\to 0$ としたときの分母・分子の極限は、関数の微分を用いて表すことができます。 $f(x)=\log(x+1)$ とすると\[ f'(x)=\frac{1}{x+1} \]であり、 $f'(0)=1$ となることがわかります。また、 $g(x)=\tan x$ とすると\[ g'(x)=\dfrac{1}{\cos ^2 x} \]であり、 $g'(0)=1$ となることがわかります。分母は $0$ でないので、分母・分子はそれぞれの極限値に収束する(参考:【基本】関数の極限の性質)ので、
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to 0}\frac{\log (x+1)}{\tan x} \\[5pt] &=&
\frac{1}{1}=1
\end{eqnarray}となります。これが答えです。

ここで見たように、分母・分子に微分可能な関数がある不定形の極限値は、次のようにして求めることができます。

微分係数を用いて極限を表す方法
($x=a$ を含むある開区間で)微分可能な関数 $f(x),g(x)$ について、 $f(a)=g(a)=0$ で、 $g'(a)\ne 0$ であれば、次が成り立つ。\[ \lim_{x\to a} \frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f'(a)}{g'(a)} \]

例題と同じように、左辺を\[ \lim_{x\to a} \frac{\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}}{\dfrac{g(x)-g(a)}{x-a}} \]と変形すれば、なぜ成り立つかがわかるでしょう。

この式はそのまま使うほどのことではないので、上の例題のように、途中の式変形で使うようにしましょう。大事なのは、こういう式変形によって極限値が求められる場合があることを理解しておくことです。

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ロピタルの定理

先ほどのように、不定形の極限を求めるときに使える定理として、次のロピタルの定理(L’Hôpital’s rule) が紹介されることがあります。いくつかバリエーションがありますが、その1つを紹介します。

ロピタルの定理
関数 $f(x),g(x)$ が次の条件を満たしているとする。

  • $x\to a$ のとき、 $f(x)\to 0$, $g(x)\to 0$ となる。
  • $x=a$ を含むある開区間から $a$ を除いた点で、 $f(x),g(x)$ は微分可能で、 $g'(x)\ne 0$ である。
  • $x\to a$ のとき、 $\dfrac{f'(x)}{g'(x)}\to L$ となる($L$ は、有限の値、正の無限大、負の無限大のいずれか)。

このとき、次が成り立つ。\[ \lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a} \frac{f'(x)}{g'(x)} \]

先ほどと大きく違うのは、こちらは、定義域に $x=a$ が含まれているとは限らない点です。 $f(x)$ や $g(x)$ が $x=a$ で定義されていなくてもいいし、微分可能でなくてもかまいません。なので、先ほどよりもだいぶ自由度があるわけです。

このロピタルの定理は、大学入試で使えるテクニックとして紹介されることが多いです。証明は、高校の範囲では難しいため行われず、教科書にも載っていません。しかし、不定形の極限を簡単に計算できるようになるので、裏ワザとして紹介されます。

一般には、入試の解答に使うのはやめたほうがいい、と言われています。一つは、高校の範囲で証明するのが難しいから、というのもありますが、そもそも条件チェックをするのが難しいから、間違って使ってしまう可能性があるから、という理由もあります。

一番最悪なのは、「あー、分母・分子を微分してから極限を考えればいいのね」と短絡的に考えてしまうことです。例えば、\[ \lim_{x\to\infty}\frac{\sin x}{x} \]を考えるときに、分母分子を微分して\[ \lim_{x\to \infty} \frac{\cos x}{1} \]だから、もとの式の極限は存在しない、とやってしまうかもしれません。しかし、これは間違いです。そもそも、これは不定形ではないからです。本当の極限は $0$ です。

また、\[ \lim_{x\to\infty}\frac{x+\sin x}{x} \]を考えるときに、分母分子を微分して\[ \lim_{x\to \infty}\frac{1+\cos x}{1} \]だから、もとの式の極限は存在しない、やってしまうかもしれません。これも間違いです。今回は不定形であることはいいのですが、 $\dfrac{f'(x)}{g'(x)}\to L$ となるという条件を満たしていません。微分したもの同士の分数が振動するからといって、もとの極限も振動するとはいえません。本当の極限は $1$ です。

これらの理由から、極限の答えの予想に使うにはいいのですが、答案に書いてしまうのはよくないでしょう。一般的には、ロピタルの定理を使わなくても、極限値が計算できるような出題がされているはずです(上の例題のように)。上手い式変形を使って計算しましょう。

おわりに

ここでは、不定形の極限を、微分を用いて計算する方法を見てきました。また、関連事項として、ロピタルの定理を紹介しました。強力なツールではありますが、使い方が難しいツールでもあるので、確認に使う程度にとどめておいた方が安全でしょう。