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【標準】三角関数などの微分と極限値

ここでは、三角関数や指数関数の微分を用いて、極限値を求める問題を見ていきます。微分係数とは極限の一種なので、これを別の極限値の計算に利用しよう、ということです。

📘 目次

微分係数を使って極限値を表すその1

例題1
次の極限値を求めなさい。\[ \lim_{x\to 0}\frac{e^{3x}-1}{x} \]

$x=0$ とすると、分母も分子も $0$ になってしまいます。このような場合は「不定形」と呼ばれ、式変形をしてから計算をする必要があります。

そもそも分子がなぜ $0$ になってしまうかというと、分子にある $1$ が $e^0$ と等しいからですね。つまり、\[ \lim_{x\to 0}\frac{e^{3x}-e^0}{x} \]と変形できます。この分子をよく見ると、微分係数の定義と似た形をしていますね。 $f'(a)$ の定義は\[ f'(a)=\lim_{x\to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a} \]でした。今の場合、 $f(x)=e^{3x}$, $a=0$ とすれば、例題の式が出てきます。合成関数の微分を使えば、 $f'(x)=3e^{3x}$ と計算できるので、極限値は $f'(0)=3$ と求めることができます。

また、 $e^{3x}$ ではなく、 $e^x$ を使う方法もあります。 $g(x)=e^x$ と置くと、分子は $g(3x)-g(0)$ と変形できます。微分係数の定義をそのまま使うには、分子と分母は対応している必要があるので、分母は\[ 3x-0 \]とならなければいけません。よって、以下のように変形して計算します。
\begin{eqnarray} & & \lim_{x\to 0}\frac{e^{3x}-1}{x} \\[5pt] &=& \lim_{x\to 0}\frac{e^{3x}-e^0}{3x-0} \times 3 \\[5pt] &=& e^0 \times 3=3 \\[5pt] \end{eqnarray}2行目から3行目に移るときに、 $g'(0)=e^0$ であることを使っています。

このように、極限値を計算するときに微分係数が利用できる場合があります。分母と分子の $x$ の対応をあわせ、どのような関数の微分を利用するか、を考えるようにしましょう。

微分係数を使って極限値を表すその2

例題2
次の極限値を求めなさい。\[ \lim_{x\to \frac{\pi}{3} }\frac{\sin x-\sin \frac{\pi}{3} }{x^3-\frac{\pi^3}{27} } \]

これも、 $x=\dfrac{\pi}{3}$ としたときに、分母・分子は $0$ になるので、工夫が必要となります。

分子を見ると、 $\sin$ の微分が利用できるのではないか、と考えられますが、分母が $x-\frac{\pi}{3}$ の形にはなっていません。しかし、分母を因数分解すると、出てきます。
\begin{eqnarray} & & \lim_{x\to \frac{\pi}{3} }\frac{\sin x-\sin \frac{\pi}{3} }{x^3-\frac{\pi^3}{27} } \\[5pt] &=& \lim_{x\to \frac{\pi}{3} }\frac{\sin x-\sin \frac{\pi}{3} }{\left(x-\frac{\pi}{3}\right) \left(x^2+\frac{\pi}{3}x+\frac{\pi^2}{9}\right)} \\[5pt] \end{eqnarray}ここで、\[ \frac{\sin x-\sin \frac{\pi}{3} }{x-\frac{\pi}{3} } \]の部分は、 $\sin$ の微分が使えます。 $f(x)=\sin x$ とすると、 $f'(x)=\cos x$ なので、 $x\to \dfrac{\pi}{3}$ とすると、 $\dfrac{1}{2}$ に収束することがわかります。また、残りの部分も $0$ でない値に収束するので、 \begin{eqnarray} & & \lim_{x\to \frac{\pi}{3} }\frac{\sin x-\sin \frac{\pi}{3} }{x^3-\frac{\pi^3}{27} } \\[5pt] &=& \frac{1}{2} \times \frac{1}{\frac{\pi^2}{9}+\frac{\pi^2}{9}+\frac{\pi^2}{9} } \\[5pt] &=& \frac{3}{2\pi^2} \end{eqnarray}となります。これが答えです。

先ほどの解き方では、微分係数の定義を用いるには、分母に $x-\dfrac{\pi}{3}$ が必要だったので、分母を因数分解しました。因数分解できる場合はもちろんこれでもいいのですが、別の方法として、次のように $x-\dfrac{\pi}{3}$ をひねり出す方法もあります。\[ \lim_{x\to \frac{\pi}{3} } \frac{\dfrac{\sin x-\sin \frac{\pi}{3} }{x-\frac{\pi}{3} }}{\dfrac{x^3-\frac{\pi^3}{27} }{x-\frac{\pi}{3} }} \]こうすると、分子では $\sin x$ の微分が使えます。また、分母もよく見ると、 $x^3$ の微分が使えることがわかるでしょう。 $f(x)=\sin x$, $g(x)=x^3$ とすると、この極限は\[ \frac{f'\left(\frac{\pi}{3}\right)}{g'\left(\frac{\pi}{3}\right)} \]となることがわかります。これを計算することで、極限値を $\dfrac{3}{2\pi^2}$ と求めることもできます。

おわりに

ここでは、三角関数や指数関数の微分を用いて極限値を求める問題を見ました。式の形から微分が利用できることに気づくのは難しいので、微分係数の定義を見直しながら練習するようにしましょう。

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