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【標準】高次導関数

ここでは、高次導関数を求める問題を見ていきます。数学的帰納法を用いる問題を考えます。

📘 目次

高次導関数を求めるための実験

例題
$y=xe^x$ の第 n 次導関数を求めなさい。

それぞれのパーツは見たことがありますが、 $xe^x$ 全体では見たことがないですね。なので、実際にいくつか計算してみて、様子を見てみることにしましょう。

第3次までを計算すると次のようになります。
\begin{eqnarray} y^{(1)} &=& e^x+xe^x =(1+x)e^x \\[5pt] y^{(2)} &=& e^x+(1+x)e^x =(2+x)e^x \\[5pt] y^{(3)} &=& e^x+(2+x)e^x =(3+x)e^x \\[5pt] \end{eqnarray}こうして見ると、微分をするたびに $e^x$ が1つずつ増えていくことから\[ y^{(n)}=(n+x)e^x \]となるのではないか、と予想できます。

このように、高次導関数を求める問題は、まず実際に計算をしてみて、どのような結果になりそうか、予想を立てることが重要です。この予想は、今の時点では、いくつかの結果から推測したただの予想なので、これが正しいことを証明しましょう。すべての自然数に関する命題で、しかも、前の結果から次の結果が導けるような状況であれば、数学的帰納法を使うことができます。これを利用して示すことにしましょう。

高次導関数と数学的帰納法

$y=xe^x$ の第 n 次導関数を求める問題を考えているのでした。いくつか計算してみると、\[ y^{(n)}=(n+x)e^x \]と予想できるので、これを数学的帰納法で示していきます(参考:【基本】数学的帰納法)。

数学的帰納法とは、まず、 $n=1$ のときに正しいことを示すこと、そして、 $n=k$ のときに正しいとすれば $n=k+1$ のときにも正しいと示すこと、この2つを示すことで、「すべての自然数について成り立つこと」を示す方法です。

今の場合、 $n=1$ のときは、\[ y^{(1)} = e^x+xe^x =(1+x)e^x \]なので、たしかに $n=1$ のときは、\[ y^{(n)}=(n+x)e^x \]が成り立ちます。

次に、 $n=k$ (k は自然数)のときに\[ y^{(k)}=(k+x)e^x \]が成り立つとします。これをもう一度微分すると
\begin{eqnarray} y^{(k+1)} &=& e^x+(k+x)e^x \\[5pt] &=& \{(k+1)+x\}e^x \\[5pt] \end{eqnarray}となることから、 $n=k+1$ のときも成り立つことがわかります。

以上から、第 n 次導関数は\[ y^{(n)}=(n+x)e^x \]となることがわかりました。これが答えです。

このような問題が出た場合、答案では、推測している部分は書く必要はありません(書いても構いません)。推測したうえで、「何を数学的帰納法で示すか」を冒頭で書くだけでいいでしょう。

三角関数の高次導関数を一つの式で書く方法

あまり本質的な話ではないですが、 $\sin$ の高次導関数をスッキリ書く方法を紹介しておきましょう。

【基本】高次導関数でも見た通り(見なくても計算すればわかりますが)、 $y=\sin x$ を微分すると、
\begin{eqnarray} y^{(1)} &=& \cos x \\[5pt] y^{(2)} &=& -\sin x \\[5pt] y^{(3)} &=& -\cos x \\[5pt] y^{(4)} &=& \sin x \\[5pt] \end{eqnarray}となり、4回微分すると元に戻ります。なので、 $y^{(n)}$ の $n$ を4で割った余りで場合分けをして高次導関数を表現することができます。例えば、余りが1の場合は $\cos x$ 、余りが0の場合は $\sin x$ 、という感じですね。

しかし、4つも場合を分けてかくのは面倒です。これらをまとめて書く方法があります。たまたまではあるのですが、以下の左辺を加法定理を用いて計算すると、右辺に出てくる式とぴったり一致します。
\begin{eqnarray} \sin \left(x+\frac{1}{2}\pi\right) &=& \cos x \\[5pt] \sin \left(x+\frac{2}{2}\pi\right) &=& -\sin x \\[5pt] \sin \left(x+\frac{3}{2}\pi\right) &=& -\cos x \\[5pt] \sin \left(x+\frac{4}{2}\pi\right) &=& \sin x \\[5pt] \end{eqnarray}このことから、高次導関数は、次のように書けます。\[ y^{(n)}=\sin \left(x+\dfrac{n}{2}\pi\right) \]微分をすることと90度回転することが対応しているのはおもしろいですね。なお、 $y=\cos x$ も同様に\[ y^{(n)}=\cos \left(x+\dfrac{n}{2}\pi\right) \]と書くことができます。

おわりに

ここでは、高次導関数を求める問題を見てきました。形を予想した後は、数学的帰納法を用いてその予想が正しいことを示します。場合分けをして答えないといけないこともありますが、 $\sin$ や $\cos$ のときのように、まとめられることもあります。

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