【基本】自然対数
ここでは、対数関数の微分を計算する途中で出てくる、自然対数の話をしていきます。
対数関数を微分しようとすると
三角関数の微分は見たので、次は指数関数・対数関数の微分について考えていきましょう。諸事情があり、まずは対数関数の微分から見ていきます。
対数関数 $f(x)=\log_a x$ について考えましょう。ここで、 $a$ は $1$ ではない正の実数とします(参考:【基本】対数)。定義に沿って、対数関数を微分してみましょう。いきなり一般の $x$ について考えるのではなく、まずは、 $x=1$ での微分係数を求めてみます。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{h\to 0} \frac{f(1+h)-f(1)}{h} \\[5pt]
&=&
\lim_{h\to 0} \frac{1}{h}\cdot\{\log_a (1+h)-\log_a 1\} \\[5pt]
&=&
\lim_{h\to 0} \log_a (1+h)^{\frac{1}{h} } \\[5pt]
\end{eqnarray}計算の途中で、 $\log_a 1=0$ となることや $\log_a M^k=k\log_a M$ となることを使っています(参考:【基本】対数の基本性質、【基本】対数の性質(積や累乗の対数))。
この最後の式に出てくる次の部分\[ \lim_{h\to 0} (1+h)^{\frac{1}{h} } \]を抜き出して注目してみましょう。この値はどうなるでしょうか。
自然対数
引き続き、次の値について考えてみます。\[ \lim_{h\to 0} (1+h)^{\frac{1}{h} } \]
$h\to +0$ のとき、 $1+h\to 1$ であり $\dfrac{1}{h}\to \infty$ です。つまり、「1よりちょっと大きい値を、たくさん掛ける」ということです。 $1+h\to 1$ なので、なんとなく1になるような気がするのですが、実はそうはなりません。
具体的に計算してみましょう。 $h=0.1$, $-0.1$ としてみましょう。こうすると、 $1.1^{10}$, $\dfrac{1}{0.9^{10} }$ を計算することになります。これらの結果は(計算機を使うと)、それぞれ、 $2.59374\cdots$, $2.86797\cdots$ となることがわかります。以下、同じように計算すると $(1+h)^{\frac{1}{h} }$ の結果は次のようになります。
\begin{eqnarray}
& & h=0.1 &:& 2.59374\cdots \\
& & h=0.01 &:& 2.70481\cdots \\
& & h=0.001 &:& 2.71692\cdots \\
& & h=0.0001 &:& 2.71814\cdots
\\[5pt]
& & h=-0.1 &:& 2.86797\cdots \\
& & h=-0.01 &:& 2.73199\cdots \\
& & h=-0.001 &:& 2.71964\cdots \\
& & h=-0.0001 &:& 2.71829\cdots \\[5pt]
\end{eqnarray}これを見てわかるのは、 $h$ を $0$ に近づけていくと、 $2.718$ くらいの値になるんじゃないか、ということです。
今の時点では示すのが難しいのでやめておきますが、 $h\to 0$ としたとき、 $(1+h)^{\frac{1}{h} }$ はある値に収束することが知られています。この極限値を $e$ で表します。この $e$ を底とする対数を、自然対数(natural logarithm) と呼びます。 $e$ を自然対数の底ともいいます。
$e$ の具体的な値は、上でも少し計算しましたが、\[ e=2.71828182846 \cdots \]となります。値を見て予想できるかもしれませんが、無理数であることが知られています(示すことは難しいです)。値が $2.7$ 程度であること(特に、 $2$ と $3$ の間であること)くらいは覚えておいた方がいいでしょう。
この $e$ は、対数関数の微分を考えるときに登場しますが、他の場面でもいろいろ登場します。数学の世界はもちろん、他の自然科学や金融といった、数学以外の分野でもよく顔を出します。
なお、$e$ を底とした対数 $\log_e x$ は、一般的には $\log x$ と書きます。つまり、「底を略したら、その対数は自然対数を意味する」ということです。自然対数がこのように特別扱いされるのは、これがとても重要だからですが、どれくらい重要なのかは今後学んでいくことになるでしょう。
おわりに
ここでは、自然対数や自然対数の底 $e$ について見てきました。対数関数の微分を計算する途中で出てきた極限を見て、自然対数を導入したのでしたね。対数関数の微分は、この自然対数を使って表すことができます。その方法は次で見ることにしましょう。