【発展】微分と重解
ここでは、微分を用いて、因数定理を拡張し、重解に関する条件に応用する方法を見ていきます。
微分と重解
整式 $f(x)$ について、 $f(x)$ が $x-c$ で割り切れることと、$f(c)=0$ が成り立つことは同値です。これを因数定理というのでした。(参考:【基本】因数定理)
また、整式 $f(x)$ が $(x-c)^2$ で割り切れるとき、 $x=c$ は $f(x)=0$ の重解といいます(参考:【基本】高次方程式と重解)。
整式 $f(x)$ が $(x-c)^2$ で割り切れるなら、 $f(c)=0$ となりますが、逆は成り立ちません。では、 $f(c)=0$ 以外にどのような条件があれば、 $(x-c)^2$ で割り切れるといえるでしょうか。
$f(x)$ を $(x-c)^2$ で割ったとき、商を $g(x)$ とし、余りを $ax+b$ と書くことにします。二次式で割っているので、余りは一次以下の式になります。\[ f(x)=g(x)(x-c)^2+ax+b \]もし、$f(c)=0$ だとすると、 $ac+b=0$ となりますが、これだけでは $a=b=0$ まではいえません。
そこで、微分をしてみるとどうでしょうか。微分をした結果は\[ f'(x)=g'(x)(x-c)^2+2g(x)(x-c)+a \]となります。ここで、 $x=c$ とすることで\[ f'(c)=a \]が得られます。また、 $f(x)$ の式で $x=c$ とすると
\begin{eqnarray}
f(c) &=& ac+b \\[5pt]
&=& f'(c)c+b \\[5pt]
b &=& f(c)-f'(c)c \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、 $f(x)$ を $(x-c)^2$ で割った余りは、
\begin{eqnarray}
& &
ax+b \\[5pt]
&=&
f'(c)x+f(c)-f'(c)c \\[5pt]
&=&
f'(c)(x-c)+f(c) \\[5pt]
\end{eqnarray}とかけることがわかります。
この式から、 $f(c)=f'(c)=0$ なら、$(x-c)^2$ で割り切れることがわかります。また、逆も成り立つことがわかります。
これは教科書には載っていないことが多いので、上に書いたような証明をしたうえで(といっても、余りを $ax+b$ と置いて微分するだけですが)使った方がいいかもしれません。
一般の場合
先ほどは $(x-c)^2$ で割り切れる場合を見ましたが、これを一般化した $(x-c)^n$ で割り切れるについても、同じような条件を考えることができます。
$n$ を自然数とし、 $f(x)$ を整式とします。 $f(x)$ を $(x-c)^n$ で割ったとき、商を $Q(x)$、余りを $R(x)$ とおくことにしましょう。
割り切れる条件を考えるので、注目するのは $R(x)$ です。また、先ほど見たように、 $x=c$ と代入することを見越すと、 $x-c$ が出てくるような式変形をしたほうがよさそうです。
そこで、 $R(x)$ を $(x-c)^{n-1}$ で割ったときの商を考えましょう。 $R(x)$ は $n-1$ 次以下の式なので、商は $x$ を含まない値になります。これを $q_{n-1}$ とおきます。
次に、 $R(x)$ を $(x-c)^{n-1}$ で割ったときの余りを考えます。これは $n-2$ 次以下の式です。なので、 $(x-c)^{n-2}$ で割ると、商は $x$ を含まない値になります。この商を、$q_{n-2}$ とおきましょう。
以下、次数の高い順に $(x-c)^k$ で割っていき、 $q_{n-1},q_{n-2},\cdots$ を計算していきます。最後は、 $(x-c)^1$ で割り、商を $q_1$ として、余りを $q_0$ とします。これは、 $(x-c)^0=1$ で割ったときの商を $q_0$ にする、と考えてもいいです。
こうすれば、もとの式は次のように表せることがわかります。
\begin{eqnarray}
f(x)
&=&
(x-c)^n Q(x)+R(x) \\[5pt]
&=&
(x-c)^n Q(x)+\sum_{k=0}^{n-1} (x-c)^k q_k \\[5pt]
\end{eqnarray}
ここで、 $0\leqq r\lt n$ のとき、 $(x-c)^n Q(x)$ を $r$ 回微分すると、どの項も $x-c$ を含むので、 $x=c$ とすると $0$ になります。($r=0$ のときは、微分しないそのままの式を考えるものとします)
また、 $(x-c)^k$ の部分は、 $k\lt r$ なら $r$ 回微分すると $0$ となり、 $k\gt r$ なら $r$ 回微分すると $x-c$ が残るので $x=c$ とすると $0$ になります。 $k=r$ のときは、 $r!$ となります。
以上から、 $f(x)$ を $r$ 回微分して $x=c$ とすると、\[ f^{(r)}(c)=r! q_r \]となります。
ここまでの計算を踏まえて考えていきます。
$f(x)$ が $(x-c)^n$ で割り切れるとしましょう。このとき、余りの $n-1$ 次の項は $0$ でないといけないので、 $q_{n-1}=0$ となります。同様に、次数の高い方から順番に考えていくと\[ q_{n-1}=q_{n-2}=\cdots=q_1=q_0=0 \]が得られます。ここで、 $f^{(r)}(c)=r! q_r$ なので、\[ f^{(n-1)}(c)=f^{(n-2)}(c)=\cdots=f'(c)=f(c)=0 \]となります。
逆に、\[ f^{(n-1)}(c)=f^{(n-2)}(c)=\cdots=f'(c)=f(c)=0 \]が成り立つとすると、\[ q_{n-1}=q_{n-2}=\cdots=q_1=q_0=0 \]なので、余りが $0$ になることがわかります。
$(x-c)^n$ で割り切れて $(x-c)^{n+1}$ で割り切れないとき、 $x=c$ は $n$ 重解といいます。微分をして $x=c$ の値を調べれば、 $n$ 重解かどうかを調べることができます。
おわりに
ここでは、微分を用いて因数定理を拡張し、重解を持つ条件に応用する方法を見ました。 $(x-c)^n$ と微分を組み合わせることがポイントです。