【応用】eのπ乗とπのe乗、どちらが大きい?
少し変な問題ですが、ここでは、 $e^{\pi}$ と $\pi^e$ のどちらが大きいか、という問題を考えてみましょう。
eのπ乗とπのe乗
どこから手をつければいいのかわかりにくいですね。 $e$ は $2.7$ くらいで、 $\pi$ は $3.14$ くらいですが、これを計算するのは大変です。指数に小数が含まれると計算は難しくなります。
そこで、指数の部分をうまく処理するために、対数を使ってみましょう。2つの数に対して、底が $e$ の対数を考えると、\[ \pi\log e,\ e\log \pi \]となります。お互いに1つずつ文字が入っていますが、 $e\pi$ で割れば、\[ \dfrac{\log e}{e},\ \dfrac{\log \pi}{\pi} \]となります。
$e^{\pi}$ と $\pi^e$ だと考えにくいですが、上のように変形すれば、 $\dfrac{\log x}{x}$ という関数の増減がどうなっているかを調べればいいことがわかります。具体的な2つの値ではなく、関数全体の一部だと考えるわけですね。
$x\gt 0$ とし、 $f(x)=\dfrac{\log x}{x}$ について考えましょう。この関数の増減を調べるために微分をすると
\begin{eqnarray}
f'(x)
&=&
\frac{\dfrac{1}{x}\cdot x-(\log x)\cdot 1}{x^2} \\[5pt]
&=&
\frac{1-\log x}{x^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。これより、増減表は次のようになります。
\begin{array}{c|cccc}
x & 0 & \cdots & e & \cdots \\
\hline
f'(x) & & + & 0 & - \\
\hline
f(x) & & \nearrow & & \searrow
\end{array}このことから、 $x\gt e$ のときは、 $f(x)$ は単調減少であることがわかります。つまり、\[ f(e)\gt f(\pi) \]ということですね。これから、\[ \dfrac{\log e}{e} \gt \dfrac{\log \pi}{\pi} \]であり、 $e\pi$ を掛けて対数を元に戻せば、\[ e^{\pi} \gt \pi^e \]となることがわかります。
【応用】微分を用いた不等式の証明では、不等式を示すために微分を用いましたが、この問題のような場合に、「ある関数の特別な値だ」ととらえて、微分の問題に帰着させることもあります。
なお、 $e^{\pi}$ と $\pi^e$ を比較するために、 $g(x)=e^x-x^e$ を考えたいという人もいるかもしれません。ただ、この方法では、増減を調べるのが少し難しいです。対数を考えてから考えたほうがいいでしょう。
ちなみに、 $e^{\pi}$ は約 $23.14$ で、 $\pi^e$ は約 $22.459$ です(計算機を使って計算しています)。たしかに $e^{\pi}$ の方が大きくなります。
先ほどの増減表について、もう少し考えてみましょう。
$x\to +0$ とした場合、 $\dfrac{\log x}{x}$ の分子は負の無限大に発散し、 $\dfrac{1}{x}$ は正の無限大に発散するため、 $f(x)$ は負の無限大に発散します。
また、 $x\to \infty$ のときは、【応用】指数関数の発散速度で見たように、対数関数より多項式関数の方が発散速度が速いため、\[ \lim_{x\to \infty}\dfrac{\log x}{x}=0 \]となります。証明は、リンク先を見てみましょう。
おわりに
ここでは、 $e^{\pi}$ が $\pi^e$ よりも大きくなることを、関数の微分を用いて示しました。この結果が重要というわけではありません。重要なのは、このような問題にも微分を用いることができる点です。