【応用】三角関数の極限と加法定理
ここでは、三角関数の極限を求めるときに、加法定理を使うものを見ていきます。
三角関数の極限と加法定理
三角関数の極限に関する問題は、【基本】関数の極限とはさみうちの原理で見た、 $x\to \infty$ としたときの $\dfrac{\sin x}{x}$ の極限や、【基本】三角関数の極限で見た、 $x\to 0$ としたときの $\dfrac{\sin x}{x}$ の極限を考えてきました。今回は、 $x\to\dfrac{\pi}{4}$ としたときの極限で、今までとまた少しパターンが違います。
ただ、 $x\to \dfrac{\pi}{4}$ としてみると、分母も分子も $0$ に収束します。なので、\[ \lim_{x\to 0} \dfrac{\sin x}{x} \]と状況が似ていることがわかります。どちらも、「0 ÷ 0」の形をした極限ですね。
なので、これを使うんじゃないかと予想して、式変形をしてみましょう。今考えている極限は $x\to \dfrac{\pi}{4}$ としているので考えづらいですが、 $\theta=x-\dfrac{\pi}{4}$ とおけば、 $\theta\to 0$ となることがわかります。 $0$ に近づける、と考えたほうがわかりやすくなります。
さて、他の部分も $\theta$ で置き換えてみましょう。分母は $\theta$ そのものですね。分子は、加法定理(参考:【基本】正弦・余弦の加法定理の使い方)を使って変形できます。よって、極限は
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to \frac{\pi}{4} } \frac{\sin x-\cos x}{x-\frac{\pi}{4} } \\[5pt]
&=&
\lim_{\theta \to 0} \frac{\sin \left(\theta+\frac{\pi}{4}\right)-\cos \left(\theta+\frac{\pi}{4}\right)}{\theta} \\[5pt]
&=&
\lim_{\theta \to 0} \frac{\frac{\sqrt{2} }{2}\sin \theta +\frac{\sqrt{2} }{2}\cos \theta -\frac{\sqrt{2} }{2}\cos \theta+\frac{\sqrt{2} }{2}\sin \theta}{\theta} \\[5pt]
&=&
\lim_{\theta \to 0} \sqrt{2} \times \frac{\sin \theta}{\theta} \\[5pt]
&=&
\sqrt{2}
\end{eqnarray}と求められます。これが答えです。
また、難易度は高くなりますが、 $\dfrac{\sin x}{x}$ の極限を使いたいという考えから、分子を1つにまとめてしまう、というやり方もあります。【標準】三角関数の合成を使えば、\[ \sin x-\cos x=\sqrt{2}\sin \left(x-\dfrac{\pi}{4}\right) \]と変形できます。これより、
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to \frac{\pi}{4} } \frac{\sin x-\cos x}{x-\frac{\pi}{4} } \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to \frac{\pi}{4} } \frac{\sqrt{2}\sin \left(x-\dfrac{\pi}{4}\right)}{x-\frac{\pi}{4} } \\[5pt]
&=&
\lim_{\theta \to 0} \frac{\sqrt{2}\sin \theta}{\theta} \\[5pt]
&=&
\sqrt{2}
\end{eqnarray}と求めることができます。こちらの方がスッキリとはしますが、分子を見ていきなり三角関数の合成が思いつくのは少し難易度が高いかもしれません。
$x\to \pi$ や $x\to \dfrac{1}{2}\pi$ と近づけたときの極限は、はじめの解き方と同じように、 $\theta=x-\pi$ などと変形するといいでしょう。そうすると、 $x=\theta+\pi$ という角に対する三角関数を考えることになります。これは、加法定理を用いてもいいし、【基本】一般角の三角関数と鋭角の三角関数や【標準】一般角の三角関数と鋭角の三角関数で見た、三角関数の値に関する性質を使って式変形をすることもできます。
おわりに
ここでは、加法定理を使った、三角関数の極限を求める問題を見てきました。 $x$ を0以外の値に近づける場合、少し考えづらいので、0に近づくように変数を変えました。そうすると、加法定理を使う必要が出てくるのでした。加法定理の内容を忘れてしまった人は、見直しておきましょう。