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【標準】極限から係数を求める

ここでは、ある関数の極限が分かっている状態から、もとの関数を求める、という問題を見ていきます。

📘 目次

極限から係数を求める

例題
次の等式が成り立つとき、定数 a, b の値を求めなさい。\[ \lim_{x\to 0} \frac{a\sqrt{x+1}+b}{x}=1 \]

今までは極限を求めていましたが、今回は極限から関数の方を考える、という問題になっています。文字が2つあるのに、式が1つしかないので、他に何かの関係式が必要だと予想できます。

$x\to 0$ としたとき、分母は $0$ に収束します。しかし、極限は有限の値ですね。なので、例えば、分子が $1$ に収束することはないことがわかります。分母が $0$ に収束するので、分数全体の絶対値はどんどん大きくなり、極限が有限の値になりえないからです。同様に、分子が $-1$ などといった値に収束するということもありえないことがわかるでしょう。

また、分子が振動する場合も、極限が有限の値になるとは考えにくいです。有限の値に収束するなら、分子は $0$ に収束するしかないんじゃないか、と予想できます。

これは、次のように考えるとわかりやすいでしょう。\[ a\sqrt{x+1}+b=\frac{a\sqrt{x+1}+b}{x}\times x \]これは、 $x\ne 0$ のときには常に成り立ちます。このとき、 $x\to 0$ とすれば、右辺は $1\times 0=0$ に収束することがわかります。よって、左辺も $x\to 0$ となることがわかります。

つまり、分子は $x\to 0$ としたときに $0$ に収束するんですね。このことから
\begin{eqnarray} a\sqrt{0+1}+b &=& 0 \\[5pt] b &=& -a \\[5pt] \end{eqnarray}となります。これは、極限が有限の値をとるための必要条件です。

これを極限をとる前の関数に代入してみると
\begin{eqnarray} & & \frac{a\sqrt{x+1}+b}{x} \\[5pt] &=& \frac{a\sqrt{x+1}-a}{x} \\[5pt] &=& \frac{a(\sqrt{x+1}-1)(\sqrt{x+1}+1)}{x(\sqrt{x+1}+1)} \\[5pt] &=& \frac{ax}{x(\sqrt{x+1}+1)} \\[5pt] \end{eqnarray}となるので \begin{eqnarray} \lim_{x\to 0} \frac{a\sqrt{x+1}+b}{x} &=& 1 \\[5pt] \lim_{x\to 0} \frac{a}{\sqrt{x+1}+1} &=& 1 \\[5pt] \frac{a}{2} &=& 1 \\[5pt] a &=& 2 \end{eqnarray}となります。よって、 $a=2$, $b=-2$ というのが、答えとなります。

この問題を解くときに使った「分子も $0$ に収束する」という内容は、次のように一般化することができます。

分数型の関数の極限が存在するための条件
2つの関数 $f(x),g(x)$ について、 $x\to a$ としたとき、 $g(x)\to 0$ であり、 $\dfrac{f(x)}{g(x)}$ は収束するとする。このとき、 $x\to a$ のときに $f(x)\to 0$ となる。

今までに、「0 ÷ 0」の形となる極限を何度か考えてきましたが、逆に、分数型の関数が収束し、分母が0に収束するなら、「0 ÷ 0」の形になっていないといけないんですね。

このことが成り立つ理由は、上の例題を考えたときにも出てきた\[ f(x)=\frac{f(x)}{g(x)}\times g(x) \]という変形を使います。 $x\to a$ とすると、右辺は、有限の値と $0$ との積に収束します。よって、左辺も $0$ に収束することがわかります。これはつまり、分子も $0$ に収束する、ということですね。

おわりに

ここでは、極限から関数の係数を求める問題を見てきました。分数が有限の値に収束し、分母が $0$ に収束するなら、分子も $0$ に収束する。この「分子も $0$ に収束する」という隠れた条件はなかなか気づきにくいですね。

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