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【応用】一次分数関数の逆関数

ここでは、一次分数関数の逆関数を求め、もとの関数と一致するための条件について見ていきます。なお、ここで得られる結果は、特に覚える必要はありません。

📘 目次

一次分数関数の復習

【基本】一次分数関数でも見ましたが、一次分数関数とは、次の形で書ける関数のことを言います。\[ y=\frac{ax+b}{cx+d} \]ただし、係数に関してはいくつか条件を付けていました。

1つは、 $c\ne0$ という条件です。 $c=0$ であれば、上の関数はただの一次関数になってしまうため、こういう場合は除いて考えよう、ということにしていました。

また、もう1つ、 $ad-bc\ne0$ という条件も付けていました。これは、上の関数が、約分により定数になってしまう場合を除くための条件です。少し式変形をして、確認してみましょう。右辺を定数とそれ以外の部分に分ける、という方針で変形していきます。
\begin{eqnarray} y &=& \frac{ax+b}{cx+d} \\[5pt] &=& \frac{\frac{a}{c}x+\frac{b}{c} }{x+\frac{d}{c} } \\[5pt] &=& \frac{\frac{a}{c}\left(x+\frac{d}{c}\right)-\frac{ad}{c^2}+\frac{b}{c} }{x+\frac{d}{c} } \\[5pt] &=& \frac{a}{c}+\frac{\frac{1}{c^2}\left( -ad+bc \right)}{x+\frac{d}{c} } \\[5pt] &=& \frac{a}{c}-\frac{ad-bc}{c(cx+d)} \\[5pt] \end{eqnarray}$c\ne 0$ としていましたが、上の変形ではこの条件も使っています。この最後の式の後半部分を見れば、 $ad-bc=0$ の場合はこの関数は定数関数になることがわかります。こうした場合も除外したいので、 $ad-bc\ne 0$ という条件も付けて考えることにしていたのでした。

まとめると、ここで考える一次分数関数とは、\[ y=\frac{ax+b}{cx+d} \]の形で書けて、 $c\ne0$, $ad-bc\ne0$ という条件を満たす関数、ということになります。

以下では、これに逆関数はあるのか、あるならどういう形か、逆関数と元の関数が一致することはあるか、あるならどういう条件を満たしているときか、を考えていきます。

一次分数関数の逆関数(一般形)

さて、ここからは一次分数関数の逆関数を考えていきます。逆関数は、「 $y=$ 」と書かれた式を「 $x=$ 」の形に変えれば、求めることができました(参考:【基本】逆関数の定義域と値域)。上で行った変形も使って、計算していきましょう。
\begin{eqnarray} y &=& \frac{ax+b}{cx+d} \\[5pt] &=& \frac{a}{c}-\frac{ad-bc}{c(cx+d)} \\[5pt] cy-a &=& -\frac{ad-bc}{cx+d} \\[5pt] \end{eqnarray}ここで、 $ad-bc\ne0$ なので、右辺は0でないから左辺の $cy-a$ も0ではありません。よって、さらに次のように変形できます。 \begin{eqnarray} cx+d &=& -\frac{ad-bc}{cy-a} \\[5pt] cx &=& \frac{-ad+bc}{cy-a}-d \\[5pt] &=& \frac{-ad+bc-cdy+ad}{cy-a} \\[5pt] &=& \frac{-cdy+bc}{cy-a} \\[5pt] x&=& \frac{-dy+b}{cy-a} \\[5pt] \end{eqnarray}ここで、 $c\ne 0$ であることも使っています。

このことから、今考えている条件下では、一次分数関数 $y=\dfrac{ax+b}{cx+d}$ の逆関数はつねに存在し、 $y=\dfrac{-dx+b}{cx-a}$ であることがわかります。

上の変形を見てもわかりますが、一次分数関数の逆関数を計算するときに、 $c\ne 0$, $ad-bc\ne 0$ が重要な役割をしています。これらの条件が、逆関数が存在するために大きく寄与していると言えるでしょう。

一次分数関数の逆関数が元の関数と一致するための条件

さきほどは、一次分数関数の逆関数を求めました。これが元の関数と一致するための条件について、以下で考えていきましょう。

もちろん、力任せに\[ \dfrac{ax+b}{cx+d}=\dfrac{-dx+b}{cx-a} \]を解く、という方法が考えられます。ただの恒等式の問題なので、係数比較の形に持ち込むといいですね(参考:【基本】恒等式と係数比較)。
\begin{eqnarray} \dfrac{ax+b}{cx+d} &=& \dfrac{-dx+b}{cx-a} \\[5pt] (ax+b)(cx-a) &=& (cx+d)(-dx+b) \\[5pt] ac x^2 +(-a^2+bc)x-ab &=& -cdx^2 +(bc-d^2)x+bd \\[5pt] (a+d)c x^2 +(-a^2+d^2)x-(a+d)b &=& 0 \\[5pt] \end{eqnarray}ここで、各係数が $0$ にならないといけません。 $x^2$ の係数が $0$ で、 $c\ne0$ だったから、 $a+d=0$ という条件が得られます。また、この条件が満たされれば、左辺の他の係数も $0$ となります。よって、 $a+d=0$ が求めたかった条件となります。

なお、ここまで大変な計算をしなくても、もう少し簡単に求める方法もあります。恒等式であるための条件を求める場合、係数比較以外にも、「特別な値を代入して、必要条件を求めてから考える」という方法がありました(参考:【基本】恒等式と数値代入)。「必要条件から求める」という方法は、ここでも使えます。

元の関数と逆関数が同じであれば、漸近線も同じはずです。漸近線の1つは、分母が $0$ となる条件を考えればいいですね(参考:【基本】一次分数関数のグラフ)。元の関数は、漸近線 $x=-\dfrac{d}{c}$ をもち、逆関数は、漸近線 $x=\dfrac{a}{c}$ をもちます。 $y$ 軸に平行な漸近線はこれだけなので、この2つが一致しなければいけません。よって、 $a+d=0$ という条件が得られます。

ここで重要なのは、これはあくまでも「 $y$ 軸に平行な漸近線が同じ」であるための条件であって、「関数が同じ」であるための条件ではないということです。 $a+d=0$ は前者を満たしていますが、関数が一致しているかどうかは、別途確認する必要があります。

$d=-a$ とすると、もとの関数は\[ y=\dfrac{ax+b}{cx+d}=\dfrac{ax+b}{cx-a} \]となり、逆関数は\[ y=\dfrac{-dx+b}{cx-a}=\dfrac{ax+b}{cx-a} \]となります。一致していますね。この確認により、 $a+d=0$ という条件が、もとの関数と逆関数が一致するための条件であることが言えます。

2通りの方法で確かめましたが、一次分数関数 $y=\dfrac{ax+b}{cx+d}$ が、この逆関数と一致するための条件は、 $a+d=0$ であることがわかりました。

おわりに

ここでは、一次分数関数の逆関数を求めたり、もとの関数と逆関数が一致するための条件を見ました。ここで得られた式や条件は、覚えておく必要はありません。しかし、自力で計算できるようにはなっておきたいですね。

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