【標準】不定積分の置換積分(三角関数)
ここでは、三角関数を用いた置換積分(不定積分)の計算について見ていきます。なお、このページでは、 $C$ は積分定数を表します。
三角関数を用いた置換積分
被積分関数は $\cos^3 x$ ですが、これの不定積分は $\dfrac{1}{4}\cos^4 x +C$ ではありません。微分してみるとわかりますが、 $\sin x$ が出てきてしまいます。
三角関数に関する置換積分は、【基本】不定積分の置換積分の計算で見ましたね。 $u=\cos x$ とおくなら、 $-\sin x dx$ を $du$ に置き換えることになります。また、 $u=\sin x$ とおくなら、 $\cos x dx$ を $du$ に置き換えることになります。
今の場合、 $u=\cos x$ とすると、 $-\sin x dx$ の部分が出てきません。なので、これではうまくいかないようです。一方、 $u=\sin x$ とおいてみると、 $\cos x dx$ の部分はありますが、 $\cos^2 x$ が残ります。一見するとダメそうですが、これを $1-\sin^2 x$ と変形すれば、 $1-u^2$ と置き換えられます。
つまり、被積分関数を\[ \cos^3 x=\cos^2x \cdot \cos x=(1-\sin^2 x)\cos x \]と変形して考えるということです。こうしてから $u=\sin x$ とおくと、 $\cos x dx$ がうまく出てくるし、残りの部分も $u$ で置き換えることができます。結局、この不定積分は
\begin{eqnarray}
& &
\int \cos^3 x dx \\[5pt]
&=&
\int \cos^2 x \cdot \cos x dx \\[5pt]
&=&
\int (1-\sin^2x)\cdot(\sin x)' dx \\[5pt]
&=&
\int (1-u^2)du \\[5pt]
&=&
u-\frac{1}{3}u^3+C \\[5pt]
&=&
\sin x-\frac{1}{3}\sin^3 x+C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
3乗を、2乗と1乗に分けて考える、というのはなかなか思いつきにくい変形ですね。
3倍角の公式を使った別解
先ほどの問題\[ \int \cos^3 x dx \]は、3倍角の公式を使って解くこともできます。
もともと、3倍角の公式とは、【標準】3倍角の公式で見たように\[ \cos 3x=4\cos^3x -3\cos x \]という、「 $x$ の3倍の角の三角関数の値を、 $x$ という角の三角関数の値の式で書く」という内容です。これを変形して\[ \cos^3 x=\frac{1}{4}\cos 3x+\frac{3}{4}\cos x \]として、積分の計算に使おう、というのが、別解の方針です。
これと似たような話は、【標準】三角関数の不定積分#三角関数の不定積分その1で扱っています。リンク先では、2倍角を「2乗を、1乗の式に変形するもの」として使っています。ここでは、3倍角の公式を「3乗を、1乗の式に変形するもの」として使うわけです。
これにより、不定積分は
\begin{eqnarray}
& &
\int \cos^3 x dx \\[5pt]
&=&
\frac{1}{4}\int \cos 3x dx +\frac{3}{4}\int \cos x dx \\[5pt]
&=&
\frac{1}{4}\cdot\frac{1}{3} \sin 3x +\frac{3}{4}\sin x+C \\[5pt]
&=&
\frac{1}{12}\sin 3x +\frac{3}{4}\sin x+C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
さっきの答えと全然違う形になっていますが、実は同じ内容です。ここで得られた式に対して、3倍角の公式を使えば
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{12}\sin 3x +\frac{3}{4}\sin x+C \\[5pt]
&=&
\frac{3\sin x-4\sin^3 x}{12} +\frac{3}{4}\sin x+C \\[5pt]
&=&
\sin x -\frac{1}{3}\sin^3 x +C \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、先ほどの答えと同じになります。
どのように計算するかで、得られる不定積分の見た目が変わることがあります。もちろん、変形して同じになるなら、どちらで答えても構いません。
おわりに
ここでは、三角関数の置換積分について見てきました。 $\sin x dx$ や $\cos x dx$ を変換するためにどのように置き換えるのか、注意して計算しましょう。