🏠 Home / 数学III / 積分 / 不定積分の置換積分

【応用】不定積分の置換積分(√(x^2-a^2) を含むもの)

ここでは、 $\sqrt{x^2-a^2}$ の入った不定積分を、置換積分を用いて計算する方法について見ていきます。√(x^2+1) を含むものその1その2と関連していますが、さらに計算が複雑になり、難易度が上がったものを扱います。なお、このページでは、 $C$ は積分定数を表します。

📘 目次

ルートの部分を置換する方法(準備編)

例題
次の不定積分を計算しなさい。\[ \int \sqrt{x^2-x-1} dx \]

見た目はそんなに複雑そうではないですが、かなり計算が大変です。解き方は1つではないですが、ここでは、【応用】不定積分の置換積分(√(x^2+1) を含むものその2)の後半で見たように、ルートの部分を置換する方法を使いましょう。ただ、ここも少し工夫が必要です。

被積分関数は、次のように変形できます。\[ \sqrt{x^2-x-1}=\sqrt{\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-\frac{5}{4} } \]これより、次のように $t$ を置くことにします。\[ t=x-\frac{1}{2}+\sqrt{\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-\frac{5}{4} } \]上で紹介したリンク先のやり方を真似れば、 $x+\sqrt{x^2-x-1}$ としたくなりますが、ルートの中に $x-\dfrac{1}{2}$ の2乗があることを踏まえると、上のように置いたほうが後で計算がうまくいきます。

さて、こう置いたとして、まず、 $x$ を $t$ で表すことにしましょう。先ほどの $t$ の定義式を変形していきます。
\begin{eqnarray} t-\left(x-\frac{1}{2}\right) &=& \sqrt{\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-\frac{5}{4} } \\[5pt] \left\{t-\left(x-\frac{1}{2}\right)\right\}^2 &=& \left(x-\frac{1}{2}\right)^2-\frac{5}{4} \\[5pt] t^2-2t\left(x-\frac{1}{2}\right) &=& -\frac{5}{4} \\[5pt] x-\frac{1}{2} &=& \frac{-t^2-\frac{5}{4} }{-2t} \\[5pt] &=& \frac{1}{2} \left(t+\frac{5}{4t}\right) \\[5pt] \end{eqnarray}このようになります。 $x$ ではなく、 $x-\dfrac{1}{2}$ を $t$ で表しています。

これより、 $x$ を $t$ で微分すると\[ \frac{dx}{dt}=\frac{1}{2}\left(1-\frac{5}{4t^2}\right) \]となることがわかります。この式は置換積分の計算で使います。

最後に、被積分関数を $t$ で表してみましょう。 $t$ の定義式より、
\begin{eqnarray} \sqrt{x^2-x-1} &=& t-\left(x-\frac{1}{2}\right) \\[5pt] &=& t-\frac{1}{2} \left(t+\frac{5}{4t}\right) \\[5pt] &=& \frac{1}{2} \left(t-\frac{5}{4t}\right) \\[5pt] \end{eqnarray}と表すことができます。1行目から2行目への変形では、 $x-\dfrac{1}{2}$ を $t$ で表した式を使っています。

ちなみに、 $x-\dfrac{1}{2}$ と被積分関数 $\sqrt{x^2-x-1}$ について、 $t$ で表した式を比較すると、 $\dfrac{5}{4t}$ の符号が違うだけだという点に注目しておきましょう(後の計算で効いてきます)。

ルートの部分を置換する方法(積分計算編)

長かったですが、ここまでが準備です。使うものをまとめておきます。

まず、 $t$ の定義式です。\[ t=x-\frac{1}{2}+\sqrt{\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-\frac{5}{4} } \]これを変形し、 $x-\dfrac{1}{2}$ を $t$ で表した式がこれです。\[ x-\frac{1}{2}=\frac{1}{2} \left(t+\frac{5}{4t}\right) \]これを微分すると\[ \dfrac{dx}{dt}=\frac{1}{2}\left(1-\frac{5}{4t^2}\right) \]となります。また、被積分関数は\[ \sqrt{x^2-x-1}=\frac{1}{2} \left(t-\frac{5}{4t}\right) \]となります。

これらを組み合わせると、次のように計算できます。
\begin{eqnarray} & & \int \sqrt{\left(x-\frac{1}{2}\right)^2-\frac{5}{4} } dx \\[5pt] &=& \int \frac{1}{2} \left(t-\frac{5}{4t}\right) \cdot \frac{1}{2}\left(1-\frac{5}{4t^2}\right) dt \\[5pt] &=& \int \frac{1}{4} \left(t-\frac{5}{2t}+\frac{25}{16t^3}\right) dt \\[5pt] &=& \frac{1}{4} \left( \frac{t^2}{2}-\frac{5\log|t|}{2}-\frac{25}{32t^2} \right) +C \\[5pt] &=& \frac{1}{8} \left( t^2-\frac{25}{16t^2} \right)-\frac{5}{8}\log|t| +C \\[5pt] &=& \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2}\left( t+\frac{5}{4t} \right) \cdot \frac{1}{2}\left( t-\frac{5}{4t} \right)-\frac{5}{8}\log|t| +C \end{eqnarray}ここで、2つのカッコの部分は、上のまとめにある「 $x-\dfrac{1}{2}$ を $t$ で表した式」と「被積分関数を $t$ で表した式」を使って変形できるので \begin{eqnarray} &=& \frac{1}{2} \left( x-\frac{1}{2} \right)\sqrt{x^2-x-1} \\[5pt] & &\ -\frac{5}{8}\log\left|x-\frac{1}{2}+\sqrt{x^2-x-1}\right| +C \end{eqnarray}となります。これが答えです。

おわりに

ここでは、 $\sqrt{x^2-x-1}$ の不定積分を、置換積分を使って計算しました。置換積分の計算だけでなく、式変形も工夫することや気づかないといけないことが多くて、かなり難易度が高いです。

関連するページ

YouTubeもやってます

チャンネル登録はコチラから (以下は、動画のサンプルです)
慶應義塾大学薬学部2024年度数学第1問5 同志社大学文系2024年度数学第1問3 昭和大学医学部I期2024年度数学第2問 兵庫医科大学2024年度数学第3問 共通テスト2B2024年度第3問2のヒントについて 久留米大学医学部推薦2024年度数学第4問