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【応用】不定積分の置換積分(分母に三角関数)

ここでは、置換積分を使って不定積分を計算する問題のうち、分母に三角関数があらわれるものを扱っていきます。なお、このページでは、 $C$ は積分定数を表します。

📘 目次

分母に三角関数のある不定積分その1

例題1
次の不定積分を計算しなさい。\[ \int\frac{1}{\cos x}dx \]

シンプルな形ですが、意外とうまくいきません。 $\log|\cos x|$ を微分しても、 $\sin x$ が出てきてしまうし、 $u=\cos x$ や $u=\sin x$ と置こうとしても、このままでは $du$ へ変換するところがうまくいきません。【基本】三角関数・指数関数の不定積分で見たように、分母が2乗なら簡単なのですが、1乗だと難しくなります。

三角関数を用いた置換積分は、【標準】不定積分の置換積分(三角関数)でも扱いましたが、リンク先では、無理やり $\cos x dx$ や $\sin x dx$ を作り出して計算しました。これにより、うまく置換積分の計算ができたわけですが、この例題でも、無理やりそのような変形をします。

現状では、 $\cos x dx$ や $\sin x dx$ がないので、分母・分子に無理やり掛けてみましょう。今の場合、 $\cos x$ を掛けてみると、 $u=\sin x$ とおいて、次のようにうまく計算できます。
\begin{eqnarray} & & \int\frac{1}{\cos x}dx \\[5pt] &=& \int\frac{\cos x}{\cos^2 x}dx \\[5pt] &=& \int\frac{1}{1-\sin^2 x}\cdot(\sin x)' dx \\[5pt] &=& \int\frac{1}{1-u^2}du \\[5pt] \end{eqnarray}ノーヒントで、「分母分子に $\cos x$ を掛ける」ことを思いつくにはハードルが高いですが、 $\cos x dx$ や $\sin x dx$ を作り出すための変形だと考えれば、今後は思いつきやすくなるかもしれません。最後の不定積分は、【標準】部分分数分解と不定積分で見たように、部分分数に分解して計算します。 \begin{eqnarray} & & \int\frac{1}{1-u^2}du \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\int\frac{1}{1+u}du+\frac{1}{2}\int\frac{1}{1-u}du \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\log|1+u|-\frac{1}{2}\log|1-u|+C \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\log\frac{|1+u|}{|1-u|}+C \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\log\frac{1+\sin x}{1-\sin x}+C \\[5pt] \end{eqnarray}となります。絶対値の中が負になることはないので、最後に絶対値を外しています。なお、 $\cos x\ne 0$ なので、 $1-\sin x\ne 0$ です。

【標準】不定積分の置換積分(三角関数)では「3乗を、2乗と1乗に分ける」という計算をしましたが、ここでは、「-1乗を、-2乗と1乗に分ける」という計算をしています。後者は、思いつくのはなかなか難しいです。

分母に三角関数のある不定積分その2

例題2
次の不定積分を計算しなさい。\[ \int\frac{1}{1+\sin x}dx \]

分母に $1$ も入ったバージョンです。これがあるだけで、先ほどと同じ解き方はできなくなります。分母・分子に $\cos x$ や $\sin x$ を掛けても、計算がうまくいきません。

ただ、先ほどの例題で\[ \sin^2x+\cos^2x=1 \]を使ったので思いつく人もいるかもしれませんが、分母が $1-\sin^2 x$ になれば、うまく変形することができますね。なので、今回は、 $1-\sin x$ を、分母・分子に掛けてみましょう。
\begin{eqnarray} & & \int\frac{1}{1+\sin x}dx \\[5pt] &=& \int\frac{1-\sin x}{(1-\sin x)(1+\sin x)}dx \\[5pt] &=& \int\frac{1}{\cos^2 x} dx +\int\frac{-\sin x}{\cos^2 x} dx \\[5pt] \end{eqnarray}1つ目の不定積分の被積分関数は、 $\tan x$ を微分したものです。なので、こちらは簡単です。一方、2つ目の不定積分は、 $u=\cos x$ とおくと、 $-\sin x dx$ を $du$ に置き換えられるので、次のように計算できます。 \begin{eqnarray} & & \int\frac{1}{\cos^2 x} dx +\int\frac{-\sin x}{\cos^2 x} dx \\[5pt] &=& \int\frac{1}{\cos^2 x} dx +\int\frac{1}{u^2} du \\[5pt] &=& \tan x-\frac{1}{u}+C \\[5pt] &=& \tan x-\frac{1}{\cos x}+C \end{eqnarray}

おわりに

ここでは、分母に三角関数が含まれているときの、不定積分の置換積分について見てきました。分母・分子に何かを掛けて変形するのは、難易度が高いですね。 $\cos x dx$ や $\sin x dx$ を生み出せないか、という発想で考えてみましょう。

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