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【標準】三角関数の不定積分

ここでは、三角関数の不定積分のうち、変形が必要なものを見ていきます。なお、このページでの $C$ は、すべて積分定数を表しています。

📘 目次

三角関数の不定積分の復習

【基本】三角関数・指数関数の不定積分で見た通り、三角関数の不定積分でよく出てくる基本的なものに、次のようなものがあります。

\begin{eqnarray} & & \int \sin x dx = -\cos x +C \\[5pt] & & \int \cos x dx = \sin x +C \\[5pt] & & \int \frac{1}{\cos^2 x} dx = \tan x +C \\[5pt] \end{eqnarray}

これらは、すべて右辺を微分すれば左辺の被積分関数になることが確かめられます。符号に注意して計算していきましょう。

三角関数の不定積分その1

例題1
次の不定積分を求めなさい。
(1) $\displaystyle \int \sin \dfrac{x}{2} dx$
(2) $\displaystyle \int \sin^2 \dfrac{x}{2} dx$

(1)は、さきほど見た式の $\sin x$ の $x$ が $\dfrac{x}{2}$ に変わっただけですね。こう変わると、【基本】一次式と不定積分で見たように、定数倍だけズレてしまうことに注意しないといけません。

つまり、 $-\cos\dfrac{x}{2}$ だと、微分した結果は\[ \dfrac{1}{2} \sin \dfrac{x}{2} \]となり、 $\dfrac{1}{2}$ 倍だけズレてしまうんですね。そのため、 $\dfrac{1}{2}$ で割る必要があります。よって、結果は、\[ \int \sin \dfrac{x}{2} dx=-2\cos \dfrac{x}{2} +C \]となります。右辺を微分すれば、計算が合っていることが確かめられます。

(2)は、(1)の問題で、 $\sin$ だったところが $\sin^2$ に変わっています。見た目でいうと小さな違いですが、積分の計算としてはかなり大きな違いです。

「 $\sin$ の不定積分が $-\cos$ だから、 $\sin^2$ の不定積分は $-\cos^2$ かな?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。 $-\cos^2 x$ を微分すると $2\cos x\sin x$ となり、 $\sin^2 x$ とはなりません。

では、「2乗が残るように、 $\sin^3 x$ にすればいいか?」というと、そうでもありません。これを微分すると $3\sin^2x \cos x$ となり、 $3$ と $\cos x$ が残ってしまいます。 $3$ ははじめから $\dfrac{1}{3}$ 倍しておけばいいのですが、 $\cos x$ ははじめから割ればいいわけではありません。 $\dfrac{\sin^3 x}{\cos x}$ を微分してみるとわかるでしょう。 $\sin^2 x$ にはなりません。

つまり、 $\sin^2$ というように2乗がついてしまったとたんに、今までの不定積分の結果はそのままでは使えなくなってしまうんですね。

この場合は、微分・積分のほうをいじるのではなく、三角関数の方をいじります。 $\dfrac{x}{2}$ の形からピンとくるかもしれませんが、【標準】半角の公式を使いましょう。これを使えば、\[ \sin^2 \dfrac{x}{2}=\dfrac{1-\cos x}{2} \]となります。左辺には2乗がありますが、右辺は定数と $\cos x$ だけです。どちらも不定積分はわかります。
\begin{eqnarray} & & \int \sin^2 \frac{x}{2} dx \\[5pt] &=& \int \frac{1-\cos x}{2} dx \\[5pt] &=& \frac{x-\sin x}{2} +C \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

このように、積分の計算では、半角の公式を、2乗を消すもの、次数を下げるものとして利用することがあります。

三角関数の不定積分その2

例題2
次の不定積分を求めなさい。\[ \int \cos 3x \cos x dx \]

積の微分の公式はありましたが、積の積分の公式というものはありません。微分して $\cos 3x \cos x$ となるものを見つけるのは難しいです。

ここでも、先ほどの例題で見たように、三角関数の公式を使って、被積分関数のほうを変形します。被積分関数が積の形になっているのがイヤなのですが、積を和に変える公式がありましたね。【標準】三角関数の積から和への公式で見た内容を使うと
\begin{eqnarray} & & \int \cos 3x \cos x dx \\[5pt] &=& \int \frac{\cos 4x+\cos 2x}{2} dx \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\int \cos 4x dx +\frac{1}{2}\int \cos 2x dx \\[5pt] &=& \frac{1}{8}\sin 4x +\frac{1}{4}\sin 2x +C \\[5pt] \end{eqnarray}となります。 $\cos 4x$ や $\cos 2x$ の不定積分は、先ほどの例題の1つ目と同じように、定数倍のズレを補正する計算をしています。

おわりに

ここでは、三角関数の公式を使って、不定積分を計算する方法を見ました。半角の公式を使って次数を下げたり、積を和に変換することで、計算できる形にできるのでした。

三角関数の公式の記憶が薄れてしまった人もいるかもしれませんが、積分の計算では三角関数の公式を使う場面はよく出てきます。不安な人は復習しておきましょう。

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