【標準】不定積分の置換積分(分数型)
ここでは、被積分関数が分数の形をしている置換積分(不定積分)の計算について見ていきます。 $\tan x$ の不定積分も突然出てきます。なお、このページでは、 $C$ は積分定数を表します。
不定積分の置換積分(分数型)
【基本】不定積分の置換積分(微分ごと置き換え)で見たように、 $u=g(x)$ のとき\[ \int f(g(x))g'(x)dx=\int f(u)du \]と変形することができます。 $g(x)$ を $u$ に、 $g'(x)dx$ を $du$ に置き換えればいいんですね。この置換積分の具体的な計算は、【基本】不定積分の置換積分の計算でも見ました。
この式で、 $f(x)=\dfrac{1}{x}$ とすると、左辺は\[ \int \frac{g'(x)}{g(x)}dx \]となります。このような、分母の微分が分子と一致しているタイプの積分に遭遇することがあります。置換積分により、先ほどの式の右辺は\[ \int \frac{1}{u}du \]となりますが、この不定積分は【基本】xのp乗の不定積分で見たように、 $\log|u|+C$ となります。 $u=g(x)$ だったので、結局\[ \int \frac{g'(x)}{g(x)}dx=\log|g(x)|+C \]が成り立ちます。この式は、置換積分の特殊例ではありますが、よく使うものなので、公式として紹介されていることがあります。右辺を微分すれば、被積分関数になることが確かめられますね。
絶対値を忘れないようにしましょう。
不定積分の置換積分(分数型)の計算例
(1) $\displaystyle \int \frac{x^2}{x^3+1} dx$
(2) $\displaystyle \int \frac{e^x}{e^x+1} dx$
(3) $\displaystyle \int \tan x dx$
(1)は、分母の微分が $3x^2$ なので、 $\dfrac{1}{3}$ 倍すれば分子と等しくなります。なので、先ほどの公式が使えて
\begin{eqnarray}
& &
\int \frac{x^2}{x^3+1} dx \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3}\int \frac{(x^3+1)'}{x^3+1} dx \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3}\log|x^3+1|+C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
(2)は、分母の微分がそのまま分子と等しくなるので、
\begin{eqnarray}
& &
\int \frac{e^x}{e^x+1} dx \\[5pt]
&=&
\int \frac{(e^x+1)'}{e^x+1} dx \\[5pt]
&=&
\log (e^x+1) +C
\end{eqnarray}となります。 $e^x+1$ はつねに正なので、絶対値を外しています。
最後の(3)は、(1)(2)と違って分数の形にはなっていません。しかし、三角関数の相互関係から\[ \tan x=\frac{\sin x}{\cos x} \]であり、よく見ると、分母の微分に $-1$ を掛ければ分子と一致します。なので、 $\tan x$ の積分は、分数型の置換積分で計算することができて
\begin{eqnarray}
& &
\int \tan x dx \\[5pt]
&=&
\int \frac{\sin x}{\cos x} dx \\[5pt]
&=&
-\int \frac{(\cos x)'}{\cos x} dx \\[5pt]
&=&
-\log|\cos x|+C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
【基本】三角関数・指数関数の不定積分では、「 $\tan x$ の積分は、もっと後にならないと出てこない」と書きましたが、それは置換積分を使うからだったんですね。同じジャンルの関数でも、積分の計算方法も難易度もまったく違いますね。
おわりに
ここでは、分母の微分が分子になっている分数の不定積分について見てきました。 $f(x)=\dfrac{1}{x}$ と合成されていると考えることで、置換積分を行うことができます。また、 $\tan x$ の不定積分の計算が、このタイプであることも見ました。分数の形に変換することがポイントです。