【応用】不定積分の置換積分(半角のtanを利用)
ここでは、半角の $\tan$ を利用して置換積分を行う方法を見ていきます。なお、このページでは、 $C$ は積分定数を表します。
半角のtanを利用した変換
次のような不定積分を考えてみます。\[ \int\frac{1}{\sin x+\cos x+1}dx \]これは、 $u=\sin x$ と置いたり、 $u=\cos x$ と置いても、うまく変形することができません。変形できない部分が残ってしまいます。また、分母・分子に何かを掛けて変換することも難しいです。
このような、三角関数を含む不定積分で、単純に $\sin x$ や $\cos x$ と置いてもうまくいかない場合は、 $t=\tan\dfrac{x}{2}$ $(-\pi\lt x\lt\pi)$ と置換するとうまくいくことがあります。
「半角の $\tan$ は、どこから出てきたんだ?」と思うかもしれませんが、このように置くとうまくいくのがなぜかを見ていきましょう。この「半角の $\tan$ 」は、【応用】半角のtanを用いた三角関数の媒介変数表示でも出てきています。まず、2倍角の公式から\[ \tan x=\frac{2t}{1-t^2} \]が得られます。また、
\begin{eqnarray}
\cos x
&=&
2\cos^2 \frac{x}{2} -1 \\[5pt]
&=&
\frac{2}{1+\tan^2\frac{x}{2} } -1 \\[5pt]
&=&
\frac{1-t^2}{1+t^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}が得られ、\[ \sin x=\tan x\cdot \cos x=\frac{2t}{1+t^2} \]と書けます。つまり、 $\sin x$, $\cos x$, $\tan x$ を $t$ の有理関数で書くことができます。
あとは、 $dx$ の部分を考えないといけませんね。ここもうまくいきます。というのも、 $t=\tan\dfrac{x}{2}$ のとき、右辺を $x$ で微分すると
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{\cos^2 \frac{x}{2} }\times \frac{1}{2} \\[5pt]
&=&
(1+\tan^2\frac{x}{2}) \times \frac{1}{2} \\[5pt]
&=&
\frac{1+t^2}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}
\[ \frac{1}{\cos^2\frac{1}{2} }=1+\tan^2\frac{x}{2}=1+t^2 \]となるので、 $\dfrac{1+t^2}{2}dx$ を $dt$ に置き換える、つまり、 $dx$ を $\dfrac{2}{1+t^2}dt$ に置き換えればいいということですね。
ということで、すべて $t$ の有理関数に置き換えることができます。三角関数のままでは計算しづらかった積分が、有理関数の積分になることで、計算できるようになる場合があるんですね。
例題
それでは、先ほどの問題を考えてみましょう。
先ほども見たように、 $t=\tan\dfrac{x}{2}$ $(-\pi\lt x\lt\pi)$ としましょう。このとき、 $\sin x=\dfrac{2t}{1+t^2}$, $\cos x=\dfrac{1-t^2}{1+t^2}$ となるのでした。また、 $dx$ は $\dfrac{2}{1+t^2} dt$ に置き換えればいいので、
\begin{eqnarray}
& &
\int\frac{1}{\sin x+\cos x+1}dx \\[5pt]
&=&
\int\frac{1}{\frac{2t}{1+t^2}+\frac{1-t^2}{1+t^2}+1}\cdot\frac{2}{1+t^2}dt \\[5pt]
&=&
\int\frac{1}{2t+(1-t^2)+(1+t^2)}dt \\[5pt]
&=&
\int\frac{1}{t+1}dt \\[5pt]
&=&
\log|t+1|+C \\[5pt]
&=&
\log|\tan \frac{x}{2}+1|+C
\end{eqnarray}と計算できます。
実際に、 $\log|\tan \dfrac{x}{2}+1|+C$ を微分してみると
\begin{eqnarray}
& &
\frac{\frac{1}{\cos^2 \frac{x}{2} }\cdot\frac{1}{2} }{\tan \frac{x}{2}+1} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2\sin \frac{x}{2}\cos \frac{x}{2}+2\cos^2 \frac{x}{2} } \\[5pt]
&=&
\frac{1}{\sin x+\cos x +1} \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、もとの被積分関数に戻っています。
いつ使えばいいかというのを明確に言うのは難しいですが、 $\sin x$ や $\cos x$ を単純に置き換えてもダメなときに使ってみる技です。普通は、誘導付きで出題されると思います(「 $t=\tan \dfrac{x}{2}$ と置きましょう」など)。
おわりに
ここでは、半角の $\tan$ に置換して積分する、不定積分の計算を見ました。三角関数のままでは計算ができないor難しいものも、有理関数に置き換えることができます。難関大学では出題されることもあるので、練習しておきましょう。