【基本】無理関数の極限
ここでは、無理関数の極限について見ていきます。無理関数とは、【基本】無理関数で見たように、根号の中に文字が含まれている関数のことです。
無理関数の極限(そのまま代入)
$x\to 1$ とすると、ルートの中は $2$ に近づいていきます。よって、全体としては $\sqrt{2}$ に近づいていくことがわかります。\[ \lim_{x\to 1} \sqrt{x^2+x}=\sqrt{2} \]となります。
$x\to a$ としたときに、ルートの中が $\alpha$ に近づくなら、全体は $\sqrt{\alpha}$ に近づきます。なので、 $x=a$ とできる場合は、代入するだけです。
以下では、そのまま代入することができない例を見ていきましょう。
無理関数の極限(有理化)
この問題では、「∞ - ∞」の形になっており、代入して値を求める、ということはできません。収束しないもの同士を引いた極限なので、この式を変形したりして極限値を求める必要があります(参考:【基本】関数の極限の性質)。
といっても、似たような話は数列のところでもやっています。【標準】数列の極限#有理化で見たように、有理化をして上手く変形していきます。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to \infty} (\sqrt{x^2+x}-x) \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to \infty} \frac{(\sqrt{x^2+x}-x)(\sqrt{x^2+x}+x)}{\sqrt{x^2+x}+x} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to \infty} \frac{x}{\sqrt{x^2+x}+x} \\[5pt]
\end{eqnarray}こうすると、分母も分子も正の無限大に発散するようになりますが、【基本】分数関数の極限で見たように、分母と分子を同じもので割ってみましょう。両方とも $x$ で割ると
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to \infty} \frac{x}{\sqrt{x^2+x}+x} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to \infty} \frac{1}{\frac{1}{x}\sqrt{x^2+x}+1} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to \infty} \frac{1}{\sqrt{1+\frac{1}{x} }+1} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。分母では、 $\dfrac{1}{x}$ をルートの中に入れると、ルートの中が $1$ に収束することがわかりますね。
このように、無理関数の極限では、有理化を用いて極限を求めることもあります。
無理関数の極限(マイナスとルート)
数列の極限は $n\to\infty$ の場合しかありません。しかし、関数の場合は $x\to -\infty$ の場合もあります。関数の極限が数列の極限と違っている点の1つです。
ただ、ほとんど先ほどと同じ感じがしますね。これも、「∞ - ∞」の形になっていますが、先ほどと同じように有理化をして計算しましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to -\infty} (\sqrt{x^2+x}+x) \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to -\infty} \frac{(\sqrt{x^2+x}+x)(\sqrt{x^2+x}-x)}{\sqrt{x^2+x}-x} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to -\infty} \frac{x}{\sqrt{x^2+x}-x} \\[5pt]
\end{eqnarray}こうして、分母・分子を $x$ で割ればいいんだな、と思うかもしれませんが、1つ注意があります。分母にあるルートのところです。\[ \dfrac{1}{x}\sqrt{x^2+x} \]のところですが、今、 $x\to -\infty$ としたときを考えているので、 $x$ は負と考えなくてはいけません。 $x\lt 0$ のときは、 $x=-\sqrt{x^2}$ となるので、 $\dfrac{1}{x}$ をルートの中に入れた後は、\[ -\sqrt{1+\frac{1}{x} } \]となります。これにより、極限は
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to -\infty} \frac{x}{\sqrt{x^2+x}-x} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to -\infty} \frac{1}{-\sqrt{1+\frac{1}{x} }-1} \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
このように、ルートの計算では常に符号を意識する必要があります。
もし「この計算だと間違いやすそうだ」と感じる場合は、 $t=-x$ と置いて考えるのもいいでしょう。こうすると、符号が変わって $t\to\infty$ を考えることになります。関数の部分は
\begin{eqnarray}
\sqrt{x^2+x}+x
&=&
\sqrt{(-t)^2+(-t)}+(-t) \\[5pt]
&=&
\sqrt{t^2-t}-t \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。このように変形してから、極限を考えれば、「変数が負だから、ルートの中に入れるときには符号を変えて…」といったことは気にせずに済みます。
おわりに
ここでは、無理関数の極限について考えました。有理化をする手法は、数列のときと共通でしたが、負の無限大としたときの極限は数列のときにはない問題が出てきました。変数を正の数だと思い込みやすいので注意しましょう。