【基本】分数関数の極限
ここでは、分数関数の極限の求め方を見ていきます。分数関数とは、【基本】一次分数関数で見たように、分子が整式、分母が一次以上の整式で表された、分数の形をした関数のことです。
分数関数の極限(そのまま代入)
$x\to 1$ とすると、分母も分子も収束します。分母は $1+3+2=6$ に、分子は $1+1=2$ に収束します。よって、全体としては、 $\dfrac{6}{2}=3$ に近づいていくことがわかります。\[ \lim_{x\to 1} \frac{x^3+3x^2+2x}{x^3+1}=3 \]となります。
そのまま代入できる場合は、そのまま代入して極限値を求めます。【基本】関数の極限の性質の後半で見た通り、分母・分子の極限値を使って計算ができます。では、そのまま代入できない場合はどういう場合で、そのときはどうするか。それは、この次以降で見ていきます。
分数関数の極限(分母分子を同じもので割る)
$x\to \infty$ とすると、分子も分母も正の無限大に発散します。このように、分母や分子が収束しない場合には、そのまま代入して極限を求めることはできません。
ただ、このような極限は、【標準】数列の極限#(分母分子を割る)でも見たように、「収束するように、分母・分子を同じもので割る」という手法が使えます。
今の場合であれば、分母にも分子にも $x^3$ があります。正の無限大に発散する一番大きな要因はこれです。なので、 $x^3$ で分母・分子を割れば、分母・分子は収束するようになり、
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to \infty} \frac{x^3+3x^2+2x}{x^3+1} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to \infty} \frac{1+\frac{3}{x}+\frac{2}{x^2} }{1+\frac{1}{x^3} } \\[5pt]
&=&
1
\end{eqnarray}と求められます。最後の式変形は、収束する部分が分かるように書くと\[ \lim_{x\to \infty} \frac{1+\frac{3}{x}+\frac{2}{x^2} }{1+\frac{1}{x^3} }=\frac{1+0+0}{1+0} \]となります。
このように、分母・分子を同じもので割って極限値を求める方法があります。
分数関数の極限(因数分解の利用)
$x\to -1$ とすると、分母も分子も収束することは収束するのですが、どちらも $0$ に収束してしまいます。 $0$ で割ることはできないので、そのまま代入することはできません。
ただ、分母も分子も整式で、 $x=-1$ としたときに $0$ になるのだから、両方とも因数分解できて、 $(x+1)$ が出てくることがわかります(参考:【基本】因数定理)。 $(x+1)$ で割れば、次のように、分母も分子も $0$ でない値に収束することがわかり、極限値が求められます。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to -1} \frac{x^3+3x^2+2x}{x^3+1} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to -1} \frac{x(x+1)(x+2)}{(x+1)(x^2-x+1)} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to -1} \frac{x(x+2)}{x^2-x+1} \\[5pt]
&=&
\frac{-(-1+2)}{1-(-1)+1} \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}これが答えです。
分母・分子が整式の場合で、 $x\to a$ としたときに、どちらも0に収束してしまう場合は、両方とも因数分解できて、 $(x-a)$ が出てくることがわかります。よって、分母・分子を $(x-a)$ で割って、さらに極限値を考えていく、という流れになります。
おわりに
ここでは、分数関数の極限について考えました。「∞ ÷ ∞」や「0 ÷ 0」の形になってしまうときの、典型的な対処方法などを見てきました。どれもよく使う内容です。