【基本】逆関数の微分
ここでは、合成関数の微分を利用して、逆関数の微分について考えていきます。
3分の1乗の微分
定義通りに計算するなら、分母分子に $(x+h)^{\frac{2}{3} }+(x+h)^{\frac{1}{3} }x^{\frac{1}{3} }+x^{\frac{2}{3} }$ をかけて
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{h\to 0} \frac{(x+h)^{\frac{1}{3} }-x^{\frac{1}{3} }}{h} \\[5pt]
&=&
\lim_{h\to 0} \frac{(x+h)-x}{h\{ (x+h)^{\frac{2}{3} }+(x+h)^{\frac{1}{3} }x^{\frac{1}{3} }+x^{\frac{2}{3} } \} } \\[5pt]
&=&
\lim_{h\to 0} \frac{1}{(x+h)^{\frac{2}{3} }+(x+h)^{\frac{1}{3} }x^{\frac{1}{3} }+x^{\frac{2}{3} }} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3x^{\frac{2}{3} }}
\end{eqnarray}となります。「3乗引く3乗」の展開の公式を使っているわけですね。なお、 $x=0$ では微分できません。
もちろん、このように解いてもいいのですが、【基本】合成関数の微分の内容を使って解くこともできます。「関数とその逆関数との合成は、恒等関数である」という内容と合わせて考えます(参考:【標準】逆関数と合成関数)。
関数 $y=x^{\frac{1}{3} }$ を変形すると $x=y^3$ となります。これを $x$ の関数だと思って微分すると、左辺は $1$ になります。また、右辺を微分したものは、合成関数の微分から\[ 3y^2\cdot\dfrac{dy}{dx} \]となります。この2つは等しいので
\begin{eqnarray}
1 &=& 3y^2\cdot \frac{dy}{dx} \\[5pt]
\frac{dy}{dx} &=& \frac{1}{3y^2} \\[5pt]
&=& \frac{1}{3x^{\frac{2}{3} }} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
定義通りに計算した場合は、式変形を毎回思いつく必要があります。それに比べると、逆関数を利用する方法は、考え方は少し難しいですが、ずいぶん簡単に計算できます。
逆関数の微分
先ほどの内容を、一般化して考えてみましょう。
関数 $f(x)$ に対して、逆関数 $g(x)$ が存在し、 $g(x)$ は微分可能であるとします(上の例題でいうと、 $f(x)=x^{\frac{1}{3} }$, $g(x)=x^3$ ということです)。ここで、 $y=f(x)$ なら、逆関数の定義から $x=g(y)$ です。この両辺を $x$ で微分してみましょう。合成関数の微分を用いて計算すると
\begin{eqnarray}
1
&=&
\frac{d}{dx}g(y) \\[5pt]
&=&
\frac{d}{dy}g(y) \cdot \frac{dy}{dx} \\[5pt]
&=&
\frac{dx}{dy} \cdot \frac{dy}{dx} \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、次が成り立ちます。\[ \frac{dy}{dx}=\frac{1}{\dfrac{dx}{dy} } \]つまり、逆関数が分かっている場合は、「もとの関数の微分は、逆関数の微分の逆数になる」ということです。
上で書いた説明は、一般的な高校の教科書でも用いられている証明ですが、厳密にいうと正しくありません。合成関数の微分を使うには、それぞれの関数が微分可能でないといけないからです。逆関数が微分可能でも、もとの関数が微分可能かどうかはわかりません。上で書いた説明は、「もとの関数が微分できること」を使ってしまっているんですね。
高校の範囲で出てくる関数は、ほとんどが微分可能なので、上のような証明でもいいのかもしれません。もう少し厳密な証明は、【発展】合成関数の微分と逆関数の微分の導出(少し厳密ver)で取り上げています。
おわりに
ここでは、合成関数の微分を用いて、逆関数の微分を計算する方法を見ました。逆関数の微分を使う例として、 $y=x^{\frac{1}{3} }$ の微分を計算しましたが、同様にして、 $x$ の有理数乗の微分を計算することができます。この計算は、別の機会で取り上げます。