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【基本】合成関数の微分

ここでは、合成関数の微分について見ていきます。

📘 目次

合成関数の微分

【基本】積の微分でも見たように、2つの関数 $f(x),g(x)$ が微分可能だとすると、積 $f(x)g(x)$ の微分は\[ f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \]となります。

これを利用すれば、例えば $y=(2x+1)^2$ の微分を簡単に計算することができます。先ほどの式で、 $f(x),g(x)$ がともに $(2x+1)$ だと考えれば\[ y'=2\cdot(2x+1)+(2x+1)\cdot 2=4(2x+1) \]となり、展開しなくても微分を計算することができます。

ただ、これが $y=(2x+1)^3$ や $y=(2x+1)^4$ となると、積の微分を使って計算するのは大変です。積の微分の公式を繰り返し使ってもいいのですが、それなら結局展開してしまったほうがはやく答えが出せるでしょう。

しかし、このような場合でも、展開することなく計算する方法があります。それが、「合成関数の微分」を使う方法です。

合成関数が何だったかは、【基本】合成関数でも見ましたが、簡単にいうと、2つの関数 $f(x),g(x)$ を組み合わせて作った、 $g(f(x))$ という関数のことです。 $x$ に $u=f(x)$ を対応させ、その $u$ に $y=g(u)$ を対応させると、\[ y=g(f(x)) \]となります。これを、 $f(x)$ と $g(x)$ の合成関数といいます。

例えば $y=(2x+1)^3$ であれば、 $f(x)=2x+1$ という関数と $g(x)=x^3$ という関数を合成している、と考えることができます。 $f(x)$ の式を、 $g(x)$ の $x$ に代入すれば、確かめられますね。

このように合成関数と考えると何がいいかというと、すごくざっくりいえば、 $x$ を動かしたときの $y$ の変動を見る(微分する)ために、「 $x$ と $u=f(x)$ の関係」と「 $u$ と $y=g(u)$ の関係」の2つにうまく分解できる、という点なんですね。

これを確かめるために、微分の定義に基づいて考えてみましょう。 $y=(2x+1)^3$ の例でいえば、 $f(x)=2x+1$, $g(x)=x^3$ として考えていることになります。

本来、合成関数を $x$ で微分するなら\[ \lim_{h\to 0}\frac{g(f(x+h))-g(f(x))}{h} \]を計算する必要があります。これは、次のように分解できます。\[ \lim_{h\to 0}\frac{g(f(x+h))-g(f(x))}{f(x+h)-f(x)}\cdot \frac{f(x+h)-f(x)}{h} \]こう分解すると、後半部分は、 $f'(x)$ に収束することがわかります。前半部分は少しやっかいなので、取り出して考えてみましょう。

\[ \lim_{h\to 0}\frac{g(f(x+h))-g(f(x))}{f(x+h)-f(x)} \]$f(x)$ が微分可能であることから、 $h\to 0$ とすると $f(x+h)\to f(x)$ となります。つまり、 $f(x+h)-f(x)=k$ とおくと、 $h\to 0$ のとき $k\to 0$ となります。また、 $u=f(x)$ とすると、この極限は\[ \lim_{k\to 0}\frac{g(u+k)-g(u)}{k} \]となり、微分の定義から $g'(u)=g'(f(x))$ となることがわかります。

以上より、 $g(f(x))$ の微分は、\[ g'(f(x))f'(x) \]となることがわかります。これが合成関数の微分です。

この式だけを見ても、どのように計算するかはわかりにくいので、先ほどの例 $y=(2x+1)^3$ で考えてみましょう。 $f(x)=2x+1$, $g(x)=x^3$ と考えればいいのでしたね。まず、 $g'(x)=3x^2$ です。よって、\[
g'(f(x))=3(2x+1)^2 \]となることがわかります。 $g'(x)=3x^2$ の $x$ の部分に $2x+1$ を代入したんですね。さらに、 $f'(x)=2$ なので、結局、微分した結果は\[ y'=3(2x+1)^2\cdot 2=6(2x+1)^2 \]となります。

冒頭の例 $y=(2x+1)^2$ の場合は、\[ y'=2(2x+1)\cdot 2=4(2x+1) \]となり、積の微分を使った結果とあっていますね。

この合成関数の微分は、慣れるまでは難しいですが、慣れてくるとすごく計算が楽になります。特に、何かの関数の $n$ 乗で表されている場合には、展開して微分するよりもかなり早く計算できます。

$y=g(f(x))$ の微分が $y'=g'(f(x))f'(x)$ となることを見ましたが、少し見づらいですね。 $u=f(x)$ とおき、「 $y$ を $x$ で微分すること」を $\dfrac{dy}{dx}$ で書くスタイルに書き直してみましょう(参考:【標準】導関数のいろいろな表し方)。すると、 $g'(f(x))=g'(u)$ は「 $y$ を $u$ で微分したもの」であり、 $f'(x)$ は「 $u$ を $x$ で微分したもの」なので、\[ \dfrac{dy}{dx}=\dfrac{dy}{du}\cdot \dfrac{du}{dx} \]となります。

合成関数の微分
関数 $f(x),g(x)$ が微分可能であるとき、次が成り立つ。\[ \{g(f(x))\}'=g'(f(x))f'(x) \]
また、 $u=f(x)$, $y=g(x)$ とすると、次が成り立つ。\[ \dfrac{dy}{dx}=\dfrac{dy}{du}\cdot \dfrac{du}{dx} \]

合成関数の微分がなぜ成り立つかは、上のように、定義の式から出発し、2つの積に分解して考える、という方法で示すのが一般的で、教科書にも上のような説明が書かれています。ただ、細かな話をすると、途中の式の分母に出てくる「 $f(x+h)-f(x)$ 」は $0$ になってしまう可能性があり、上の説明は、厳密には正しくありません。もう少し厳密な証明は、【発展】合成関数の微分と逆関数の微分の導出(少し厳密ver)で取り上げています。

おわりに

ここでは、合成関数の微分について見てきました。すごく複雑な式に見えますが、慣れるとかなり使い勝手がいいことがわかります。

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