【基本】積の微分

ここでは、関数の積を微分するとどうなるかを見ていきます。また、この結果を用いて、 $x^n$ の微分を計算してみます。

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積の微分

【基本】和や定数倍の微分では、微分可能な関数同士の和や定数倍をしたものを微分するとどうなるか、を見ました。これらの結果は、「和の微分は、微分の和」「定数倍の微分は、微分の定数倍」となるのでした。

ここでは、微分可能な関数同士の積を微分するとどうなるか、を見ていきます。残念ながら、「微分したもの同士の積」にはなりません。もう少し複雑な結果になります。

関数 $f(x),g(x)$ が微分可能であるとします。このとき、 $f(x)g(x)$ の微分について考えてみましょう。定義通りに考えると\[ \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h} \]を計算すればいいことになります。これを計算する上で使えるものは、 $f(x),g(x)$ が微分できることだけです。そのままだと計算できませんが、次のように分解して考えてみます。
\begin{array}{ccccccccc}
f(x+h)g(x+h) & \leftrightarrow & f(x)g(x+h) \\
& \require{HTML} \style{display: inline-block; transform: rotate(45deg)}{\leftrightarrow} & \updownarrow \\
& & f(x)g(x)
\end{array}本当は、左上と右下の差を考えたいのですが、「左上と右上の差」と「右上と右下の差」という2段階に分けて考えます。「左上と右上の差」では、 $g(x+h)$ が共通なので、 $f(x+h)-f(x)$ を考えることになりますが、ここで $f(x)$ の微分が使えます。また、「右上と右下の差」では、 $g(x+h)-g(x)$ を考えることになり、ここで $g(x)$ の微分が使えます。

このことを踏まえると、先ほどの極限の式は以下のように変形できます。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x)}{h} \\[5pt] &=&
\lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)g(x+h)-f(x)g(x+h)+f(x)g(x+h)-f(x)g(x)}{h} \\[5pt] &=&
\lim_{h\to 0}\left\{\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\times g(x+h)+f(x)\times\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\right\} \\[5pt] \end{eqnarray}ここで、\[ \lim_{h\to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}=f'(x) \]であり、\[ \lim_{h\to 0}\frac{g(x+h)-g(x)}{h}=g'(x) \]が成り立ちます。また、【基本】微分可能性と連続性で見た通り、微分可能なら連続なので、\[ \lim_{h\to0}g(x+h)=g(x) \]が成り立ちます。

以上から、先ほどの極限は、\[ f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \]となります。これが $f(x)g(x)$ という積を微分したものになります。

積の微分
関数 $f(x),g(x)$ が微分可能であるとき、次が成り立つ。\[ \{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \]

例えば、 $y=(x^3+1)(x^4-1)$ の微分を計算してみましょう。今までなら、まずは展開しないと微分できませんでした。展開すると
\begin{eqnarray}
y
&=&
x^7+x^4-x^3-1
\end{eqnarray}となります。これを微分して\[ y’=7x^6+4x^3-3x^2 \]となります。

これを、積の微分を使って計算しなおしてみましょう。 $y=(x^3+1)(x^4-1)$ を微分すると
\begin{eqnarray}
y’
&=&
(x^3+1)'(x^4-1)+(x^3+1)(x^4-1)’ \\[5pt] &=&
3x^2(x^4-1)+(x^3+1)\cdot 4x^3 \\[5pt] &=&
7x^6+4x^3-3x^2 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。微分した後に展開することになりますが、共通する項が多いと、こちらのほうが簡単に計算できることもあります。

xのn乗の微分

積の微分を繰り返し使えば、 $x^n$ の微分を計算することもできます。【標準】xのn乗の微分と二項定理でも見た通り、 $n$ が自然数なら、\[ (x^n)’=nx^{n-1} \]となります。これを積の部分と数学的帰納法を使って示してみます。(なお、 $n=1$, $x=0$ のときには、右辺は $0^0$ が出てきますが、ここではこの値は $1$ と考えることにします。)

まず、 $n=1$ のときは、 $x’=1$ なので、成り立ちます。

また、 $n=k$ のときに、 $(x^k)’=kx^{k-1}$ が成り立つとすると
\begin{eqnarray}
(x^{k+1})’
&=&
(x^k \cdot x)’ \\[5pt] &=&
(x^k)’ \cdot x +x^k \cdot x’ \\[5pt] &=&
k x^{k-1} \cdot x +x^k \cdot 1 \\[5pt] &=&
(k+1) x^k \\[5pt] \end{eqnarray}なので、 $(x^{k+1})’=(k+1)x^{(k+1)-1}$ となるから、 $n=k+1$ のときにも成り立つことがわかります。

以上から、すべての自然数 $n$ について、 $(x^n)’=nx^{n-1}$ が成り立つことがわかります。

xのn乗の微分
n が自然数のとき、次が成り立つ。\[ x^n=nx^{n-1} \]

二項定理を使って示すこともできますが、こちらのほうが式がごちゃごちゃしないですね。

おわりに

ここでは、積の微分について見てきました。和や定数倍のときと違って複雑な式になりましたが、微分の定義の式の変形を見れば、なぜこのような複雑な形になるかが理解できると思います。