共通テスト 数学II・数学B 2017年度プレテスト 第5問 解説
2017年11月に実施された、大学入試共通テスト導入に向けたプレテストの問題です。元の資料をできる限り再現していますが、一部でレイアウトが変わっています。画像は、大学入試センターのサイトから取得しています。
【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)
(正規分布表は省略しています)
問題編
問題
ある工場では、内容量が 100g と記載されたポップコーンを製造している。のり子さんが、この工場で製造されたポップコーン1袋を購入して調べたところ、内容量は 98g であった。のり子さんは「記載された内容量は誤っているのではないか」と考えた。そこで、のり子さんは、この工場で製造されたポップコーンを100袋購入して調べたところ、標本平均は 104g、標本の標準偏差は 2g であった。
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて25ページの正規分布表を用いてもよい。
(1) ポップコーン1袋の内容量を確率変数 $X$ で表すこととする。のり子さんの調査の結果をもとに、 $X$ は平均 104g、標準偏差 2g の正規分布に従うものとする。
このとき、 $X$ が 100g 以上 106g 以下となる確率は $0.\myBox{アイウ}$ であり、 $X$ が 98g 以下となる確率は $0.\myBox{エオカ}$ である。この 98g 以下となる確率は「コインを $\myBox{キ}$ 枚同時に投げたとき、すべて表が出る確率」に近い確率であり、起こる可能性が非常に低いことがわかる。 $\myBox{キ}$ については、最も適当なものを、次の 0 ~ 4 のうちから一つ選べ。
0: 6
1: 8
2: 10
3: 12
4: 14のり子さんがポップコーンを購入した店では、この工場で製造されたポップコーン2袋をテープでまとめて売っている。ポップコーンを入れる袋は1袋当たり 5g であることがわかっている。テープでまとめられたポップコーン2袋分の重さを確率変数 $Y$ で表すとき、 $Y$ の平均を $m_Y$ 、標準偏差を $\sigma$ とおけば、 $m_Y=\myBox{クケコ}$ である。ただし、テープの重さはないものとする。
また、標準偏差 $\sigma$ と確率変数 $X, Y$ について、正しいものを、次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。 $\myBox{サ}$
0: $\sigma=2$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\leqq Y\leqq m_Y+2$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。1: $\sigma=2\sqrt{2}$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\sqrt{2}\leqq Y\leqq m_Y+2\sqrt{2}$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。
2: $\sigma=2\sqrt{2}$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\sqrt{2}\leqq Y\leqq m_Y+2\sqrt{2}$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率の $\sqrt{2}$ 倍である。
3: $\sigma=4$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\leqq Y\leqq m_Y+2$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。
4: $\sigma=4$ であり、 $Y$ について $m_Y-4\leqq Y\leqq m_Y+4$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。
5: $\sigma=4$ であり、 $Y$ について $m_Y-4\leqq Y\leqq m_Y+4$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率の $4$ 倍である。
(2) 次にのり子さんは、内容量が 100g と記載されたポップコーンについて、内容量の母平均 $m$ の推定を行った。
のり子さんが調べた100袋の標本平均 104g、標本の標準偏差 2g をもとに考えるとき、小数第2位を四捨五入した信頼度(信頼係数)95% の信頼区間を次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。 $\myBox{シ}$
0: $100.1\leqq m \leqq 107.9$
1: $102.0\leqq m \leqq 106.0$
2: $103.0\leqq m \leqq 105.0$
3: $103.6\leqq m \leqq 104.4$
4: $103.8\leqq m \leqq 104.2$
5: $103.9\leqq m \leqq 104.1$同じ標本をもとにした信頼度 99% の信頼区間について、正しいものを、次の 0 ~ 2 のうちから一つ選べ。 $\myBox{ス}$
0: 信頼度 95% の信頼区間と同じ範囲である。
1: 信頼度 95% の信頼区間より狭い範囲になる。
2: 信頼度 95% の信頼区間より広い範囲になる。母平均 $m$ に対する信頼度 $D$ % の信頼区間を $A\leqq m \leqq B$ とするとき、この信頼区間の幅を $B-A$ と定める。
のり子さんは信頼区間の幅を $\mybox{シ}$ と比べて半分にしたいと考えた。そのための方法は2通りある。
一つは、信頼度を変えずに標本の大きさを $\myBox{セ}$ 倍にすることであり、もう一つは、標本の大きさを変えずに信頼度を $\myBox{ソタ}.\myBox{チ}$ % にすることである。
考え方
前半部分は、正規分布表を使うためにはどのような変換をしないといけないか、を考えながら解いていきます。
(2)は母平均の推定の問題で、よくあるものです。信頼区間をどのように求めるかがわかっていれば、(2)の後半部分も解けるはずです。
【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)
(正規分布表は省略しています)
解答編
問題
ある工場では、内容量が 100g と記載されたポップコーンを製造している。のり子さんが、この工場で製造されたポップコーン1袋を購入して調べたところ、内容量は 98g であった。のり子さんは「記載された内容量は誤っているのではないか」と考えた。そこで、のり子さんは、この工場で製造されたポップコーンを100袋購入して調べたところ、標本平均は 104g、標本の標準偏差は 2g であった。
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて25ページの正規分布表を用いてもよい。
(1) ポップコーン1袋の内容量を確率変数 $X$ で表すこととする。のり子さんの調査の結果をもとに、 $X$ は平均 104g、標準偏差 2g の正規分布に従うものとする。
このとき、 $X$ が 100g 以上 106g 以下となる確率は $0.\myBox{アイウ}$ であり、 $X$ が 98g 以下となる確率は $0.\myBox{エオカ}$ である。この 98g 以下となる確率は「コインを $\myBox{キ}$ 枚同時に投げたとき、すべて表が出る確率」に近い確率であり、起こる可能性が非常に低いことがわかる。 $\myBox{キ}$ については、最も適当なものを、次の 0 ~ 4 のうちから一つ選べ。
0: 6
1: 8
2: 10
3: 12
4: 14
解説
$Z=\dfrac{X-104}{2}$ とおくと、 $Z$ は標準正規分布に従います。これを変形すると $X=2Z+104$ なので、 $X$ が 100 以上 106 以下となることは
\begin{eqnarray}
& & 100 \leqq 2Z+104 \leqq 106 \\[5pt]
& & -2 \leqq Z \leqq 1 \\[5pt]
\end{eqnarray}となることと同値です。正規分布表を見ると、 $0\leqq Z\leqq 1$ となる確率は $0.3413$ です。また、 $-2\leqq Z \leqq 0$ となる確率は $0\leqq Z\leqq 2$ となる確率と等しく、 $0.4772$ です。この和は\[ 0.3413+0.4772=0.8185 \]なので、 $0.\myBox{アイウ}$ は、 $0.819$ となります。
$X=2Z+104$ が 98 以下となることは
\begin{eqnarray}
& & 2Z+104 \leqq 98 \\[5pt]
& & Z \leqq -3 \\[5pt]
\end{eqnarray}となることと同値です。 $-3 \leqq Z \leqq 0$ となる確率は $0\leqq Z\leqq 3$ となる確率と等しく、正規分布表を見ると、こうなる確率は $0.4987$ です。なので、 $Z\leqq -3$ となる確率は\[ 0.5-0.4987=0.0013 \]となります。 $0.\myBox{エオカ}$ は、 $0.001$ となります。
コイン $n$ 枚を同時に投げてすべて表が出る確率は $\dfrac{1}{2^n}$ なので、これが $0.001$ と近くなるのは、 $2^n$ が $1000$ に近いときであり、選択肢の中では $n=10$ だとわかります。
解答
アイウ:819エオカ:001
キ:2
解答編 つづき
問題
のり子さんがポップコーンを購入した店では、この工場で製造されたポップコーン2袋をテープでまとめて売っている。ポップコーンを入れる袋は1袋当たり 5g であることがわかっている。テープでまとめられたポップコーン2袋分の重さを確率変数 $Y$ で表すとき、 $Y$ の平均を $m_Y$ 、標準偏差を $\sigma$ とおけば、 $m_Y=\myBox{クケコ}$ である。ただし、テープの重さはないものとする。
解説
$Y$ は、ポップコーン2袋の内容量と袋の重さを足したものであり、ポップコーン1袋の内容量の重さの平均は 104 なのだから\[ m_Y=(104+5)\times 2=218 \]となります。
解答
クケコ:213
解答編 つづき
問題
また、標準偏差 $\sigma$ と確率変数 $X, Y$ について、正しいものを、次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。 $\myBox{サ}$
0: $\sigma=2$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\leqq Y\leqq m_Y+2$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。1: $\sigma=2\sqrt{2}$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\sqrt{2}\leqq Y\leqq m_Y+2\sqrt{2}$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。
2: $\sigma=2\sqrt{2}$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\sqrt{2}\leqq Y\leqq m_Y+2\sqrt{2}$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率の $\sqrt{2}$ 倍である。
3: $\sigma=4$ であり、 $Y$ について $m_Y-2\leqq Y\leqq m_Y+2$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。
4: $\sigma=4$ であり、 $Y$ について $m_Y-4\leqq Y\leqq m_Y+4$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率と同じである。
5: $\sigma=4$ であり、 $Y$ について $m_Y-4\leqq Y\leqq m_Y+4$ となる確率は、 $X$ について $102\leqq X\leqq 106$ となる確率の $4$ 倍である。
解説
まとめられた2袋のポップコーンの重さを、それぞれ、 $X_1,X_2$ とすると、 $X_1$, $X_2$ は互いに独立すす。 $Y=X_1+X_2+10$ と表すことができますが、定数を足しても分散は変わらないことと、独立な確率変数の和の分散は、それぞれの分散の和であることから、 $Y$ の分散は、 $X_1$, $X_2$ の分散の和となります。 $X_1$, $X_2$ の分布は $X$ の分布と等しく、標準偏差は $2$ だから分散は $4$ なので、 $Y$ の分散は $4+4=8$ となり、 $Y$ の標準偏差は $2\sqrt{2}$ となります。
選択肢を見ると、 $102\leqq X \leqq 106$ となる確率を考えています。これは $-1\leqq \dfrac{X-104}{2}\leqq 1$ と変形できます。 $\dfrac{X-104}{2}$ は標準正規分布に従うので、 $Y$ についても同じように変形すると、この確率は\[ -1\leqq \dfrac{Y-m_Y}{\sigma}\leqq 1 \]と等しくなります。この式は、 $\sigma=2\sqrt{2}$ であることを使うと\[ m_Y-2\sqrt{2} \leqq Y \leqq m_Y+2\sqrt{2} \]と同値なので、サには 1 が入ることがわかります。
解答
サ:1
解答編 つづき
問題
(2) 次にのり子さんは、内容量が 100g と記載されたポップコーンについて、内容量の母平均 $m$ の推定を行った。
のり子さんが調べた100袋の標本平均 104g、標本の標準偏差 2g をもとに考えるとき、小数第2位を四捨五入した信頼度(信頼係数)95% の信頼区間を次の 0 ~ 5 のうちから一つ選べ。 $\myBox{シ}$
0: $100.1\leqq m \leqq 107.9$
1: $102.0\leqq m \leqq 106.0$
2: $103.0\leqq m \leqq 105.0$
3: $103.6\leqq m \leqq 104.4$
4: $103.8\leqq m \leqq 104.2$
5: $103.9\leqq m \leqq 104.1$
解説
正規分布表を見ると、確率が 0.475 となるのは、 $z_0=1.96$ のときです。標本の大きさは $100$ なので、信頼区間は
\begin{eqnarray}
& & 104-1.96\cdot \dfrac{2}{\sqrt{100} } \leqq m \leqq 104+1.96\cdot \dfrac{2}{\sqrt{100} } \\[5pt]
& & 104-0.392 \leqq m \leqq 104+0.392 \\[5pt]
& & 103.608 \leqq m \leqq 104.392 \\[5pt]
\end{eqnarray}となるので、シには 3 が入ります。
解答
シ:3
解答編 つづき
問題
同じ標本をもとにした信頼度 99% の信頼区間について、正しいものを、次の 0 ~ 2 のうちから一つ選べ。 $\myBox{ス}$
0: 信頼度 95% の信頼区間と同じ範囲である。
1: 信頼度 95% の信頼区間より狭い範囲になる。
2: 信頼度 95% の信頼区間より広い範囲になる。
解説
信頼度 99% の信頼区間を求めるには、先ほど正規分布表で 0.475 を探していた部分を 0.495 に変えることになります。そのような $z_0$ は 2.58 (2.57も近いですが 2.58 のほうがよく使われます)なので、信頼区間は広くなることがわかります。
もっとざっくりいうと、信頼区間とは、「この区間には、〇% の確率で入っている」というものなので、区間が広くなることと信頼度が上がることが対応するのは、感覚的にもわかります。
解答
ス:2
解答編 つづき
問題
母平均 $m$ に対する信頼度 $D$ % の信頼区間を $A\leqq m \leqq B$ とするとき、この信頼区間の幅を $B-A$ と定める。
のり子さんは信頼区間の幅を $\mybox{シ}$ と比べて半分にしたいと考えた。そのための方法は2通りある。
一つは、信頼度を変えずに標本の大きさを $\myBox{セ}$ 倍にすることであり、もう一つは、標本の大きさを変えずに信頼度を $\myBox{ソタ}.\myBox{チ}$ % にすることである。
解説
シ の信頼区間の幅は、\[ 2\times 1.96\cdot \dfrac{2}{\sqrt{100} } \]と書けます。これを半分にするには、 $\sqrt{100}$ のところを $\sqrt{400}$ にする、つまり、標本の大きさを $4$ 倍にする方法が考えられます。
また、 $1.96$ を $0.98$ に変える方法もあります。正規分布表で 0.98 の部分を見ると 0.3365 とあるので、信頼度を $0.3365\times 2=0.673$ に変えることに対応します。
解答
セ:4
ソタチ:673