共通テスト 数学II・数学B 2017年度プレテスト 第1問 [4] 解説
2017年11月に実施された、大学入試共通テスト導入に向けたプレテストの問題です。元の資料をできる限り再現していますが、一部でレイアウトが変わっています。画像は、大学入試センターのサイトから取得しています。
【必答問題】
問題編
問題
先生と太郎と花子さんは、次の問題とその解答について話している。三人の会話を読んで、下の問いに答えよ。
【問題】
$x,y$ を正の実数とするとき、 $\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)$ の最小値を求めよ。【解答A】
$x\gt 0$, $\dfrac{1}{y}\gt 0$ であるから、相加平均と相乗平均の関係により\[ x+\dfrac{1}{y} \geqq 2\sqrt{x\cdot\dfrac{1}{y} } = 2\sqrt{\dfrac{x}{y} } \ \cdots ① \]$y\gt 0$, $\dfrac{4}{x}\gt 0$ であるから、相加平均と相乗平均の関係により\[ y+\dfrac{4}{x} \geqq 2\sqrt{y\cdot\dfrac{4}{x} } = 4\sqrt{\dfrac{y}{x} } \ \cdots ② \]である。①、②の両辺は正であるから、\[ \left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right) \geqq 2\sqrt{\dfrac{x}{y} } \cdot 4\sqrt{\dfrac{y}{x} }=8 \]よって、求める最小値は $8$ である。
【解答B】
\[ \left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)=xy+\dfrac{4}{xy}+5 \]であり、 $xy\gt 0$ であるから、相加平均と相乗平均の関係により\[ xy+\dfrac{4}{xy}\geqq 2\sqrt{xy\cdot\dfrac{4}{xy} }=4 \]である。すなわち、\[ xy+\dfrac{4}{xy}+5\geqq 4+5=9 \]よって、求める最小値は $9$ である。
先生 「同じ問題なのに、解答Aと解答Bで答えが違っていますね。」
太郎 「計算が間違っているのかな。」
花子 「いや、どちらも計算は間違えていないみたい。」
太郎 「答えが違うということは、どちらかは正しくないということだよね。」
先生 「なぜ解答Aと解答Bで違う答えが出てしまったのか、考えてみましょう。」花子 「実際に $x$ と $y$ に値を代入して調べてみよう。」
太郎 「例えば $x=1,y=1$ を代入してみると、 $\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)$ の値は $2\times 5$ だから $10$ だ。」
花子 「 $x=2,y=2$ のときの値は $\dfrac{5}{2}\times 4=10$ になった。」
太郎 「 $x=2,y=1$ のときの値は $3\times 3=9$ になる。」(太郎と花子、いろいろな値を代入して計算する)
花子 「先生、ひょっとして $\myBox{シ}$ ということですか。」
先生 「そのとおりです。よく気づきましたね。」
花子 「正しい最小値は $\myBox{ス}$ ですね。」
考え方
これは、相加平均と相乗平均の関係を間違って使ってしまう、よくある例です。いつ最小値をとるかを考えればわかりやすいかもしれません。
ただ、この会話で花子が答えにたどりつける気はしません。相当、勘がよくないと、「ひょっとして…」とはなりません。
【必答問題】
解答編
問題
先生と太郎と花子さんは、次の問題とその解答について話している。三人の会話を読んで、下の問いに答えよ。
【問題】
$x,y$ を正の実数とするとき、 $\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)$ の最小値を求めよ。【解答A】
$x\gt 0$, $\dfrac{1}{y}\gt 0$ であるから、相加平均と相乗平均の関係により\[ x+\dfrac{1}{y} \geqq 2\sqrt{x\cdot\dfrac{1}{y} } = 2\sqrt{\dfrac{x}{y} } \ \cdots ① \]$y\gt 0$, $\dfrac{4}{x}\gt 0$ であるから、相加平均と相乗平均の関係により\[ y+\dfrac{4}{x} \geqq 2\sqrt{y\cdot\dfrac{4}{x} } = 4\sqrt{\dfrac{y}{x} } \ \cdots ② \]である。①、②の両辺は正であるから、\[ \left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right) \geqq 2\sqrt{\dfrac{x}{y} } \cdot 4\sqrt{\dfrac{y}{x} }=8 \]よって、求める最小値は $8$ である。
【解答B】
\[ \left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)=xy+\dfrac{4}{xy}+5 \]であり、 $xy\gt 0$ であるから、相加平均と相乗平均の関係により\[ xy+\dfrac{4}{xy}\geqq 2\sqrt{xy\cdot\dfrac{4}{xy} }=4 \]である。すなわち、\[ xy+\dfrac{4}{xy}+5\geqq 4+5=9 \]よって、求める最小値は $9$ である。
先生 「同じ問題なのに、解答Aと解答Bで答えが違っていますね。」
太郎 「計算が間違っているのかな。」
花子 「いや、どちらも計算は間違えていないみたい。」
太郎 「答えが違うということは、どちらかは正しくないということだよね。」
先生 「なぜ解答Aと解答Bで違う答えが出てしまったのか、考えてみましょう。」花子 「実際に $x$ と $y$ に値を代入して調べてみよう。」
太郎 「例えば $x=1,y=1$ を代入してみると、 $\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right)$ の値は $2\times 5$ だから $10$ だ。」
花子 「 $x=2,y=2$ のときの値は $\dfrac{5}{2}\times 4=10$ になった。」
太郎 「 $x=2,y=1$ のときの値は $3\times 3=9$ になる。」(太郎と花子、いろいろな値を代入して計算する)
花子 「先生、ひょっとして $\myBox{シ}$ ということですか。」
先生 「そのとおりです。よく気づきましたね。」
花子 「正しい最小値は $\myBox{ス}$ ですね。」
解説
解答Aをよく見てみましょう。相加平均と相乗平均の関係を使えば、確かに、次の2つの不等式
\begin{eqnarray}
& & x+\dfrac{1}{y} \geqq 2\sqrt{\dfrac{x}{y} } \\[5pt]
& & y+\dfrac{4}{x} \geqq 4\sqrt{\dfrac{y}{x} } \\[5pt]
\end{eqnarray}は成り立ちます。また、これらを辺々掛けて得られる、次の不等式
\begin{eqnarray}
\left(x+\dfrac{1}{y}\right)\left(y+\dfrac{4}{x}\right) \geqq 8
\end{eqnarray}も成り立ちます。ただ、これは、「左辺が $8$ 以上の値とる」と言っているだけで、本当に $8$ の値をとるかどうかはわかりません。なので、最小値が $8$ と言えるかどうかは、この時点ではわかりません。
式をたどっていくと、最小値 $8$ をとるとすれば、先ほどの2つの不等式
\begin{eqnarray}
& & x+\dfrac{1}{y} \geqq 2\sqrt{\dfrac{x}{y} } \\[5pt]
& & y+\dfrac{4}{x} \geqq 4\sqrt{\dfrac{y}{x} } \\[5pt]
\end{eqnarray}で、両方とも等号が成り立っていないといけません。上側の不等式の等号は $x=\dfrac{1}{y}$ のときに成り立ち、下側の不等式の等号は $y=\dfrac{4}{x}$ のときに成り立ちます。合わせると、「両方の不等式の等号が成り立つとすると、 $xy=1$ かつ $xy=4$ が成り立つ」となりますが、こんなことは起こりません。
2つの不等式で、2つとも等号が成り立つことはありえないのだから、解答Aで「 $8$ の値をとる」と結論付けていたところが間違いだとわかります。シに入るのは、2 です。
解答Bを見ると、\[ xy+\dfrac{4}{xy}+5\geqq 9 \]となっていますが、この等号は $xy=\dfrac{4}{xy}$ のとき、つまり、 $xy=2$ のときに成り立ちます。これは実際に起こりえます( $x=2,y=1$ とか)。つまり、解答Bからは、「9以上の値をとり、実際に9になることもある」ことがわかります。なので、最小値は $9$ です。
解答
シス:29