【標準】積の微分と商の微分
ここでは、3つの関数の積の微分や、分子の次数を下げてから計算する商の微分について見ていきます。
3つの関数の積の微分
2つの関数の積の微分は、【基本】積の微分で見ました。 $f(x)g(x)$ の微分は、\[ f'(x)g(x)+f(x)g'(x) \]となるのでした。ただ、今回は3つの関数の積になっています。
この場合は、「2つの関数の積の微分」を繰り返せばいいんですね。 $f(x)=(x-1)$, $g(x)=(x-2)(x-3)$ とすれば、微分した結果は $f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$ となります。ここで、 $g'(x)$ が出てきますが、ここでまた「2つの関数の積の微分」の公式を使えばいいわけですね。
結局、3つの関数の積になっている場合、つまり、微分可能な3つの関数 $f(x),g(x),h(x)$ があって $y=f(x)g(x)h(x)$ となっている場合、微分した結果は
\begin{eqnarray}
y'
&=& f'(x)\{g(x)h(x)\} \\
& & +f(x)\{g(x)h(x)\}' \\[5pt]
&=& f'(x)g(x)h(x) \\
& & +f(x)g'(x)h(x) \\
& & +f(x)g(x)h'(x) \\
\end{eqnarray}となることがわかります。今の例題の場合であれば
\begin{eqnarray}
y'
&=& (x-1)'(x-2)(x-3) \\
& & +(x-1)(x-2)'(x-3) \\
& & +(x-1)(x-2)(x-3)' \\[5pt]
&=& (x-2)(x-3)+(x-1)(x-3)+(x-1)(x-2) \\[5pt]
&=& (2x-3)(x-3)+(x-1)(x-2) \\[5pt]
&=& 3x^2-12x+11
\end{eqnarray}と計算できます。
もちろん、 $y=(x-1)(x-2)(x-3)$ の右辺をすべて展開してから微分しても構いません。どちらが簡単に計算できるかは問題によるので、どちらも試してみるといいでしょう。
工夫して商の微分を使う
これは、商の微分と考えて計算することもできます。【基本】商の微分で見た通り、 $\dfrac{f(x)}{g(x)}$ の微分は\[ \frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2} \]となります。よって、今の場合は
\begin{eqnarray}
y'
&=&
\frac{(x^2-x+1)'(x^2+x+1)-(x^2-x+1)(x^2+x+1)'}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{(2x-1)(x^2+x+1)-(x^2-x+1)(2x+1)}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{(2x^3+x^2+x-1)-(2x^3-x^2+x+1)}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{2x^2-2}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{2(x-1)(x+1)}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
\end{eqnarray}と計算できます。
ただ、今の場合は、少しだけ計算を簡略化することができます。【基本】分数式の帯分数化で見たように、もとの関数の分数式で、分子の次数を分母の次数より低くするように変形して、それから微分する方法です。
もとの関数をよく見ると、分子と分母の次数は同じなので、次のように変形することができます。
\begin{eqnarray}
y
&=&
\frac{x^2-x+1}{x^2+x+1} \\[5pt]
&=&
1-\frac{2x}{x^2+x+1} \\[5pt]
\end{eqnarray}この変形は、難しく言えば、【基本】整式の割り算で見たように、分子を分母で割っているわけですが、もっとシンプルに、分子の次数を下げつつ、変形前と変形後で同じ結果になるように係数を計算した、と考えてもいいでしょう。
このように変形すると、定数の $1$ の部分は、微分すると $0$ になります。よって、後半部分だけを微分すればよく、
\begin{eqnarray}
y'
&=&
-\frac{(2x)'(x^2+x+1)-2x(x^2+x+1)'}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
&=&
-\frac{2(x^2+x+1)-2x(2x+1)}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
&=&
-\frac{-2x^2+2}{(x^2+x+1)^2} \\[5pt]
&=&
\frac{2(x-1)(x+1)}{(x^2+x+1)^2}
\end{eqnarray}となり、同じ結果が得られます。
$\dfrac{f(x)}{g(x)}$ を微分すると、\[ \frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2} \]となります。この式からもわかる通り、もとの分数式の分子 $f(x)$ の次数を下げられれば、微分した後の分子の計算が楽になることもあります。
商の微分は、ただでさえ式が複雑です。そのため、商の微分を行う時には、このような計算の工夫ができないか、検討してから計算してみましょう。
おわりに
ここでは、積の微分と商の微分について、計算で使える内容を紹介しました。特に、商の微分で見た、「分子の次数を下げてから微分する」という手法は、計算が楽になることが多いので、使えるようになっておいた方がいいでしょう。