【標準】複素数の絶対値の性質(積や商)

ここでは、複素数の積や商の絶対値の性質について、見ていきます。

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複素数の積の絶対値

例題1
複素数 $\alpha$, $\beta$ に対して、次が成り立つことを示しなさい。\[|\alpha\beta|=|\alpha||\beta|\]

複素数 $a+bi$ の絶対値とは、 $\sqrt{a^2+b^2}$ のことを言うのでした。これは、複素数平面上での、原点からの距離を表しているのでしたね(参考:【基本】複素数平面と絶対値)。

この例題でも、複素数を実部と虚部に分けて計算することもできるのですが、ここではもう少し簡単に計算する方法を考えます。上のリンク先でも見ましたが、複素数の絶対値は、共役複素数を用いて、次のように計算することもできるのでした。\[ |\alpha|^2=\alpha\overline{\alpha} \]これを用いれば、文字が増えないのでシンプルな計算で示すことができます。

左辺の2乗を変形していくと、次のようになります。
\begin{eqnarray}
|\alpha\beta|^2
&=&
\alpha\beta\cdot\overline{\alpha\beta} \\[5pt] &=&
\alpha\overline{\alpha}\cdot\beta\overline{\beta} \\[5pt] &=&
|\alpha|^2|\beta|^2
\end{eqnarray}1行目から2行目の変形では、積の共役複素数が、共役複素数の積と等しいことを使っています(参考:【標準】共役複素数の性質(積や商))。

$|\alpha\beta|$, $|\alpha|$, $|\beta|$ は、どれも0以上の値なので、これから\[|\alpha\beta|=|\alpha||\beta|\]が成り立つことがわかります。

実部と虚部に分けて計算するよりも、だいぶ楽に示すことができましたね。

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複素数の商の絶対値

例題2
複素数 $\alpha$, $\beta$ に対して、次が成り立つことを示しなさい。ただし、 $\beta\ne 0$ とします。\[\left|\frac{\alpha}{\beta}\right|=\frac{|\alpha|}{|\beta|}\]

これも先ほどと同じように、2乗を考えましょう。
\begin{eqnarray}
\left|\frac{\alpha}{\beta}\right|^2
&=&
\frac{\alpha}{\beta}\cdot \overline{\left(\frac{\alpha}{\beta}\right)} \\[5pt] &=&
\frac{\alpha}{\beta}\cdot \frac{\overline{\alpha}}{\overline{\beta}} \\[5pt] &=&
\frac{|\alpha|^2}{|\beta|^2}
\end{eqnarray}1行目から2行目の変形では、商の共役複素数が、共役複素数の商と等しいことを使っています(参考:【標準】共役複素数の性質(積や商))。

$|\alpha\beta|$, $|\alpha|$, $|\beta|$ は、どれも0以上の値なので、これから\[\left|\frac{\alpha}{\beta}\right|=\frac{|\alpha|}{|\beta|}\]が成り立つことがわかります。

また、なかなか思いつきにくい変形ですが、先ほどの例題1を使って、次のように示すこともできます。
\begin{eqnarray}
|\alpha|
&=&
\left|\frac{\alpha}{\beta}\cdot\beta\right| \\[5pt] &=&
\left|\frac{\alpha}{\beta}\right||\beta| \\[5pt] \end{eqnarray}1行目から2行目で、例題1の内容を使っています。ここで、両辺を $|\beta|$ で割れば、\[\left|\frac{\alpha}{\beta}\right|=\frac{|\alpha|}{|\beta|}\]が成り立つことがわかります。

複素数の絶対値の性質(積や商)まとめ

以上の結果をまとめておきましょう。

複素数の絶対値の性質(積や商)
複素数 $\alpha$, $\beta$ に対して、次が成り立つ。ただし、2行目では、 $\beta\ne 0$ とする。
\begin{eqnarray}
|\alpha\beta| &=& |\alpha||\beta| \\[5pt] \left|\frac{\alpha}{\beta}\right| &=& \frac{|\alpha|}{|\beta|}
\end{eqnarray}

例えば、 $\left|\dfrac{1-i}{1+i}\right|$ を計算するとなった場合、分母・分子に $1-i$ を掛けて計算していくのは面倒ですが、分母・分子の絶対値をそれぞれ計算してから割れば、 $\dfrac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}}=1$ となって、あっさり計算できます。

なお、積の方の性質を繰り返し使えば、 $|\alpha^n| = |\alpha|^n$ が成り立つこともわかるでしょう(厳密には、数学的帰納法を使って示します)。

ちなみに、和や差の場合は、こうしたことはできません。 $|\alpha+\beta|$ と $|\alpha|+|\beta|$ は、等しいとは限りません。例えば、 $i,-i$ の場合などを考えればわかります。和や差の場合に、同じような変形をしてしまわないようにしましょう(そもそも、実数の場合でも成り立ちませんが)。

おわりに

ここでは、複素数の積・商の絶対値が、絶対値の積・商になることを見ました。複素数の積や商を先に計算するのは面倒なことが多いです。絶対値のほうが先に計算できると、かなり計算が楽になります。