【標準】共役複素数と絶対値が1の複素数
ここでは、絶対値が1の複素数でよく使う変形を見ていきます。
絶対値が1の複素数
【基本】複素数平面と絶対値でも見たように、複素数 $\alpha$ の絶対値について、次の式が成り立ちます。\[ |\alpha|^2=\alpha\overline{\alpha} \]
もし、 $\alpha$ の絶対値が $1$ であれば、上の式の左辺が $1$ であることから、\[ \overline{\alpha} = \frac{1}{\alpha} \]が成り立ちます。これはシンプルですが、よく使う変形でもあります。
絶対値が1の複素数を使った問題その1
$\alpha=a+bi$ と置くと、絶対値の条件は $a^2+b^2=1$ で、与えられた等式は\[ (a+bi)+(a-bi)+1=0 \]となります。これから、 $a=-\dfrac{1}{2}$ が得られ、絶対値に関する条件から $b=\pm\dfrac{\sqrt{3} }{2}$ と求められます。よって、\[ \alpha=\dfrac{-1\pm\sqrt{3} }{2} \]となります。
一方、先ほど見たように、 $|\alpha|=1$ という条件から、 $\overline{\alpha}=\dfrac{1}{\alpha}$ が成り立つことを使うこともできます。与えられた等式は
\begin{eqnarray}
\alpha+\frac{1}{\alpha}+1 &=& 0 \\[5pt]
\alpha^2+1+\alpha &=& 0 \\[5pt]
\alpha &=& \frac{-1\pm\sqrt{3} }{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、同じ結果になることがわかります。最後は二次方程式の解の公式を使っています。
この例題では、あまり計算が楽になっていませんが、次の例題は、だいぶ楽になる例です。
絶対値が1の複素数を使った問題その2
実数であることを示すには、【標準】共役複素数と複素数の実数条件で見たように、共役複素数がもとの複素数と同じことを表せばいいのでした。ただ、それを直接計算するのは厳しそうです。
しかし、 $|\alpha|=|\beta|=1$ であることから、冒頭で見たように、 $\overline{\alpha}=\dfrac{1}{\alpha}$, $\overline{\beta}=\dfrac{1}{\beta}$ が成り立つことを使えば、計算はだいぶ楽になります。
それでは、 $\overline{z}=z$ を示すために、左辺を変形していきましょう。
\begin{eqnarray}
\overline{ \left(\frac{(1+\alpha)(1+\beta)}{1+\alpha\beta}\right) }
&=&
\frac{(1+\overline{\alpha})(1+\overline{\beta})}{1+\overline{\alpha}\overline{\beta} }
\end{eqnarray}商の共役複素数は、共役複素数の商と等しいこと、そして、積の共役複素数は、共役複素数の積に等しいことを使って、変形しています(参考:【標準】共役複素数の性質(積や商))。ここで、絶対値が1のときに成り立つ式を用いて、さらに変形していきましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\frac{(1+\overline{\alpha})(1+\overline{\beta})}{1+\overline{\alpha}\overline{\beta} } \\[5pt]
&=&
\frac{\left(1+\dfrac{1}{\alpha}\right)\left(1+\dfrac{1}{\beta}\right)}{1+\dfrac{1}{\alpha}\cdot \dfrac{1}{\beta} } \\[5pt]
&=&
\frac{(\alpha+1)(\beta+1)}{\alpha\beta+1} \\[5pt]
\end{eqnarray}最後の等式は、分母・分子に $\alpha\beta$ を掛けたのですね。
こうして見てみると、最後の式は、 $z$ そのものです。つまり、 $\overline{z}=z$ が示せたので、 $z$ は実数だ、ということがわかります。
この計算を、実部と虚部に分けて行うと、文字が増えすぎてかなり大変になります。
おわりに
ここでは、複素数 $\alpha$ の絶対値が $1$ のときに、 $\overline{\alpha} = \dfrac{1}{\alpha}$ を使う問題を見てきました。シンプルですが、計算量がかなり減るので便利な式です。