【応用】不定積分の置換積分(√(x^2+1) を含むものその2)
ここでは、 $\sqrt{x^2+1}$ の入った不定積分を、置換積分を用いて計算する方法について見ていきます。「その1」と似ているようで難易度が上がっています。なお、このページでは、 $C$ は積分定数を表します。
tanを使った置換積分
「その1」と似ていますが、分母が $x\sqrt{x^2+1}$ から $\sqrt{x^2+1}$ に変わっています。小さな違いですが、計算はまた大きく変わってきます。
ここでは、「その1」の後半で見た、 $\tan$ に置き換える方法から見ていきましょう。 $x=\tan t$ $\left(-\frac{\pi}{2}\lt t \lt \frac{\pi}{2}\right)$ と置きます。 $\tan t$ の微分を考えれば、 $dx$ を $\dfrac{1}{\cos^2 t} dt$ に変えればいいのでしたね。被積分関数も、三角関数の相互関係から $\cos t$ だとわかるので、
\begin{eqnarray}
& &
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
&=&
\int \cos t \cdot\dfrac{1}{\cos^2 t}dt \\[5pt]
&=&
\int \cos t\cdot \dfrac{1}{1-\sin^2 t}dt \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。【応用】不定積分の置換積分(分母に三角関数)で見たように、分母に $\cos t$ だけがある場合は、このようにして無理やり $\cos t dt$ を作りだせばいいのでしたね。ここで、 $u=\sin t$ とおけば、 $\cos t dt$ を $du$ に置き換えればよく
\begin{eqnarray}
& &
\int \cos t\cdot \dfrac{1}{1-\sin^2 t}dt \\[5pt]
&=&
\int \dfrac{1}{1-u^2}du \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}\int \dfrac{1}{1+u}du+\frac{1}{2}\int \dfrac{1}{1-u}du \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}\log|1+u| -\frac{1}{2}\log|1-u| +C \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}\log\frac{|1+u|}{|1-u|} +C \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}\log\left| \frac{1+\sin t}{1-\sin t} \right| +C \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}\log\left| \frac{(1+\sin t)^2}{(1-\sin t)(1+\sin t)} \right| +C \\[5pt]
&=&
\log\left| \frac{1+\sin t}{\cos t} \right| +C \\[5pt]
&=&
\log\left| \frac{1}{\cos t}+\tan t \right| +C \\[5pt]
&=&
\log\left| \sqrt{1+x^2}+x \right| +C \\[5pt]
&=&
\log (x+\sqrt{x^2+1}) +C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。 $u$ の式から $t$ の式に変換した後は、 $\tan t$ の式で表すための変形が続いています。最後は、 $x^2\leqq x^2+1$ なので、絶対値を外しています。
最後の式を微分してみると
\begin{eqnarray}
& &
(\log (x+\sqrt{x^2+1}))' \\[5pt]
&=&
\frac{1+\frac{2x}{2\sqrt{x^2+1} }}{ x+\sqrt{x^2+1} } \\[5pt]
&=&
\frac{\frac{\sqrt{x^2+1}+x}{\sqrt{x^2+1} }}{ x+\sqrt{x^2+1} } \\[5pt]
&=&
\dfrac{1}{\sqrt{x^2+1} } \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、被積分関数になることがわかります。分母と分子に $x+\sqrt{x^2+1}$ が出てきて、うまく消えるところがポイントになっています。この「 $x+\sqrt{x^2+1}$ が出てきてうまく消えること」が、次の計算方法で利用できます。
ルートの部分を置換する方法
先ほどの例題を、ルートの部分を置き換える方法で計算してみましょう。
これを見れば、 $u=\sqrt{x^2+1}$ と置くのが自然でしょう。右辺の微分は、\[ \frac{x}{\sqrt{x^2+1} } \]なので、被積分関数と比べると、分子の $x$ がたりません。 $x^2=u^2-1$ という関係式を使っても、これ以上積分を計算するのは難しくなってしまいます。
$\sqrt{x^2+1}$ を含む積分の場合、これをそのまま $u$ と置いてうまくいく場合もありますが、うまくいかない場合もあります。このときに使われる方法が、\[ u=x+\sqrt{x^2+1} \]と置くやり方です。先ほどの $\tan$ で置き換えたときの最後の方で見たものを利用する方法です。ノーヒントでこんな形を思いつく人はいないはずなので、相当の難関大学の入試でもなければ、ノーヒントで出題されることはないはずです。
$u=x+\sqrt{x^2+1}$ とおくと、右辺の微分は
\begin{eqnarray}
& &
1+\frac{x}{\sqrt{x^2+1} } \\[5pt]
&=&
\frac{x+\sqrt{x^2+1} }{\sqrt{x^2+1} } \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、分子は $u$ と一致します。よって、
\begin{eqnarray}
& &
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
&=&
\int\frac{1}{x+\sqrt{x^2+1} } \cdot \frac{x+\sqrt{x^2+1} }{\sqrt{x^2+1} }dx \\[5pt]
&=&
\int \frac{1}{u} du \\[5pt]
&=&
\log |u|+C \\[5pt]
&=&
\log(x+\sqrt{x^2+1})+C \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
置換した後の計算は簡単になるにはなるのですが、 $u=x+\sqrt{x^2+1}$ と置換すればいいとひらめくのは、厳しいでしょう。
おわりに
ここでは、 $\sqrt{x^2+1}$ を含んだ不定積分について見てきました。 $x=\tan t$ と置く方法と $u=x+\sqrt{x^2+1}$ と置く方法、2通り紹介しましたが、どちらも難易度が高いです。