【応用】複素数平面と反転

ここでは、複素数平面上で、鏡映の反転によって図形がどのように移動するかを見ていきます。

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複素数平面と反転その1

例題1
複素数平面上で点 $\mathrm{ P }(z)$ が次の等式を満たしているとき、複素数 $w=\dfrac{1}{z}$ に対応する点 $\mathrm{ Q }(w)$ はどのような図形を描くか、答えなさい。

(1) $|z-2|=1$
(2) $|z-1|=1$

どちらも、点 P は円周上の点ですね。中心が違うだけです。これが、 $w=\dfrac{1}{z}$ によってどういう図形に移るか考えてみましょう。

この変換式を変形すると $z=\dfrac{1}{w}$ となります。なお、 $z,w\ne 0$ であることに注意します。これを(1)の式に代入すれば
\begin{eqnarray}
\left|\frac{1}{w}-2\right| &=& 1 \\[5pt] |1-2w| &=& |w| \\[5pt] 2\left|w-\frac{1}{2}\right| &=& |w| \\[5pt] \end{eqnarray}となります。この式は、原点を O とし、点 $\dfrac{1}{2}$ を点 A とすると、 $\mathrm{ AQ:QO }=1:2$ であることを表しています。これは、【基本】複素数平面と円で見た通り、アポロニウスの円を表すことになります。

このことから、先ほどの式は、線分 AO を $1:2$ に内分する点、外分する点を直径とする円を表します。つまり、点 $\dfrac{1}{3}$ と点 $1$ を結んだ線分を直径とする円なので、点 Q は、点 $\dfrac{1}{2}$ を中心とする半径 $\dfrac{1}{3}$ の円の上を動くことがわかります。除く点はありません。

試験では、上のリンク先でやっているように、計算によって求めるのが普通ですが。

同じように、 $z=\dfrac{1}{w}$ を(2)の式に代入すれば
\begin{eqnarray}
\left|\frac{1}{w}-1\right| &=& 1 \\[5pt] |1-w| &=& |w| \\[5pt] |w-1| &=& |w| \\[5pt] \end{eqnarray}となります。これは、原点 O からの距離と点 $1$ からの距離が等しいことを表すため、点 Q は、原点 O と点 $1$ を結ぶ線分の垂直二等分線となります。

$w=\dfrac{1}{z}$ という変換を「鏡映の反転」といいます。鏡映の反転によって、一般的に次のように変換されます。

  • 原点を通らない円 ⇒ 原点を通らない円
  • 原点を通る円 ⇒ 原点を通らない直線

1つ目の例が例題の(1)に、2つ目の例が例題の(2)に対応しています。

一般に、中心 O 、半径 $r$ の円と点 P があったときに、半直線 OP 上に、 $\mathrm{ OP\cdot OQ }=r^2$ となる点 Q をとって、点 P に点 Q を対応させることを、反転といいます。また、線対称になるよう、鏡のように移動することを鏡映と言います。\[ z=r(\cos\theta+i\sin\theta) \]に対して、 $w=\dfrac{1}{z}$ を対応させることは、\[ \dfrac{1}{r}\{\cos(-\theta)+i(-\sin\theta)\} \]を対応させることであり、鏡映と反転を同時に行った変換だと考えることができます。そのため、この変換は「鏡映の反転」と呼ばれているわけなんですね。

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複素数平面と反転その2

例題2
複素数平面上で点 $\mathrm{ P }(z)$ が次の等式を満たしているとき、複素数 $w=\dfrac{1}{z}$ に対応する点 $\mathrm{ Q }(w)$ はどのような図形を描くか、答えなさい。

(1) $|z-1|=|z+1|$
(2) $|z-1|=|z|$

今度は、どちらも直線です。(1)は、虚軸、(2)は原点と点 $1$ とを結んだ線分の垂直二等分線ですね。

先ほどと同じように、 $z=\dfrac{1}{w}$ を使いましょう。なお、 $z,w\ne 0$ であることに注意します。この式を(1)の式に代入すれば
\begin{eqnarray}
\left|\frac{1}{w}-1\right| &=& \left|\frac{1}{w}+1\right| \\[5pt] |1-w| &=& |1+w| \\[5pt] |w-1| &=& |w+1| \\[5pt] \end{eqnarray}となります。つまり、変換後も、虚軸であることがわかります。ただ、原点だけは除きます。

次に、(2)について見てみましょう。
\begin{eqnarray}
\left|\frac{1}{w}-1\right| &=& \left|\frac{1}{w}\right| \\[5pt] \left|1-w\right| &=& 1 \\[5pt] |w-1| &=& 1 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。よって、点 Q が描く図形は、「点 $1$ を中心とする半径 $1$ の円、ただし、原点を除く」となります。

一般に、鏡映の反転によって、直線は、次のように変換されます。

  • 原点を通る直線 ⇒ 原点を通る直線から原点を除いた図形
  • 原点を通らない直線 ⇒ 原点を通る円から原点を除いた図形

1つ目の例が例題の(1)に、2つ目の例が例題の(2)に対応しています。

さて、最後に少し小さな疑問について考えておきましょう。気にならない人は、以下の文は流し読みでも構いません。

例題1(2)で見たように、原点を通る円は、原点を通らない直線に移ります。しかし、例題2(2)で見たように、原点を通らない直線は、原点を通る円全体ではなく、円から原点を除きました。2回戻ると元に戻りそうな気がしますが、一番初めにあった「原点」に対応する点はどこにいっちゃったのでしょう。

よく考えてみると、もともと、円から直線へ移したときには、原点に対応する点は直線にはないんですね(直線のずっと遠くの点に対応していると考えることもできますが)。円周上にあった原点に対応する点が直線上にはないので、もう一度変換しても、やはり円周上にあった原点に対応する点はありません。原点に対応する点がどこかにいってしまったのではなく、そもそも対応していなかったんですね。

おわりに

ここでは、鏡映の反転によって、円や直線がどのような図形に変換されるかを見てきました。原点を通るか通らないかで、結果が大きく異なりました。反転によってどのように変換されるかはなかなか考えづらいですが、絶対値を使った式変形や極形式を使って計算できるようにしましょう。