【基本】一次方程式の文章題で「これは問題にあっている」は必要か
一次方程式の文章題で、解が求められた後に「これは問題にあっている」と書くように指導されることがあります。ここでは、この「これは問題にあっている」について見ていきます。
「これは問題にあっている」について
【基本】一次方程式の利用(買い物)以降で、一次方程式を利用する文章題の解き方を見てきました。解答の最後の方で「これは問題にあっている」と書いていました。教科書によっては、「これは問題に適している」などの別の表現になっているかもしれません。これは何なのでしょうか。
これは、非現実的な解が含まれていないかをチェックしたことを表すものです。方程式を利用する場合、わからないものを $x$ で置いて方程式を作り、その方程式を解いて答えを求めます。この過程で出てくる答えは、数学的には正しいのですが、現実とマッチした答えになるとは限りません。
例えば、【基本】一次方程式の利用(ものを配る)で見た例をみましょう。「折り紙1人に3枚ずつ配ると16枚余り、1人に4枚ずつ配ると2枚足りない」という問題で、2つ目の解き方では、折り紙を $x$ 枚として次のような方程式を作りました。\[\dfrac{x-16}{3} = \dfrac{x+2}{4}\]この方程式は子どもの人数を2通りで表したものです。ただ、子どもの人数を分数の形で表しているので、「本当に自然数になるのかな?」と心配になる人もいるかもしれません。
現実には、子どもの数や折り紙の数は、自然数だと考えられます。しかし、方程式の解としては、分数になることや負の数になる可能性もあります。そのため、出てきた解が、問題文にあう値となっているか、気にしておく必要があります。「これは問題にあっている」は、「問題文の求める状況にあった答えかどうか、チェックしましたよ」と主張するためのものです。検算したということではなく、形式のチェックをしたというような意味合いです。
「これは問題にあっていない」なんてことはあるのか
問題文から方程式を作って、それを解いて得られた解が、問題文にあう値となっているかを確かめる、と書きましたが、そもそもそんなことをする必要はあるのでしょうか。問題にあっていない値が出てくることなんてあるのでしょうか。
正直にいうと、当面はそんな機会はほとんどありません。ただ、将来はそういう機会が出てきます。
例えば、「面積が $4\mathrm{cm}^2$ の正方形がある。この正方形の1辺の長さを求めなさい」という問題があったとしましょう。当面はこのような問題は出ないのですが、説明のために考えてみます。1辺の長さを $x$ cmとすると、面積について方程式を作れば\[ x^2=4 \]となります。2乗して $4$ になるのだから、 $x=2$ だな、と思うかもしれませんが、この方程式にはもうひとつ、 $x=-2$ という解もあります。将来、このように、複数の答えが出てくるような問題を扱うようになります。
数学の世界では、 $x=2$ も $x=-2$ も、どちらも $x^2=4$ を満たしますので、どちらも正しい答えです。しかし、正方形の1辺の長さが負になることはありえません。そのため、 $x=-2$ は問題にあっていません。現実的な解ではありません。 $x=2$ は問題にあっているので、 $2$ cm だけが答えとなります。
当面、問題にあっていない解が出ることはほとんどないのですが、将来は出てきます。今のうちから、方程式で求められた解が問題にあっているかどうかを確認するようにしておいた方がいいでしょう。
「これは問題にあっている」は書くべきか
教科書や参考書によっては、「これは問題にあっている」という文言を書いていたり書いていなかったりします。教える人の中にも、書かないとダメという人と書かなくても問題ない・減点しないという人、問題にあっていないときだけ書けばいいという人などがいて、対応がわかれていることがあります。
こういう状況なので、入試などでは、安全のために「これは問題にあっている」と書いておいた方がいい、と言わざるを得ないです。学校の先生が「書かないとダメ」と指導しているなら、定期テストでは従った方がいいでしょう。
ただ、意味も分からず書くのではなく、先ほど書いたように、問題文にあっているかどうかを確認して書くようにしましょう。例えば、個数を答える場合は、自然数でないとおかしいです。量を答える場合は、正の数でないとおかしいです。このような非現実的な答えになっていないか確かめましょう。
また、とり得る値が問題文で指定されていることもあります。例えば、高さ10cmの水槽に水を入れたときの高さを求めなさいと言われて、10cmより大きな値が出てきたら、おかしいですね。このようなチェックもするようにしましょう。
何が非現実的か、わかりにくいものもあります。年齢を求める問題で120歳と出てきたら非現実と言えるのか。木の高さを求めなさいと言われて200mと出てきたら非現実と言えるのか。微妙なものもありますが、基本的には、自然数かどうか、正の数かどうか、指定された範囲内かどうかをチェックして、問題なければ「これは問題にあっている」と書いてしまってもいいと思います。
おわりに
ここでは、「これは問題にあっている」について見てきました。方程式を使って数学の世界で考えることにより、非現実的な解が出てくる可能性があります。この文言は、そのような可能性に対して、「得られた解が問題の状況にマッチしてるか吟味しましたよ」と示していることになります。