【基本】定積分の置換積分
ここでは、置換積分を使って定積分の計算を行う方法を見ていきます。
定積分の置換積分を考えてみよう
定積分の計算では、不定積分で使った計算手法を利用することが多いです。不定積分では、変数を変換して計算する「置換積分」という方法がありましたが、定積分にも置換積分はあります。ただ、注意しないといけない点があります。具体的な計算を通して見ていきましょう。
まず、次のような定積分を考えてみます。\[ \int_0^{\frac{\pi}{4} } \cos 2x dx \]これは、置換積分を使わなくても、そのまま定積分を計算することができます。微分して $\cos 2x$ となる関数を考えると、 $\dfrac{\sin 2x}{2}$ ですね。これより
\begin{eqnarray}
& &
\int_0^{\frac{\pi}{4} } \cos 2x dx \\[5pt]
&=&
\Big[ \frac{\sin 2x}{2} \Big]_0^{\frac{\pi}{4} } \\[5pt]
&=&
\frac{\sin \left(2\cdot\frac{\pi}{4}\right)}{2} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}と計算できます。
答えがわかった状態で、置換積分で計算するとどうなるかを考えてみましょう。 $2x=t$ とおくと $x=\dfrac{t}{2}$ であり、右辺を微分すると $\dfrac{1}{2}$ なので、不定積分のときと同じようにすれば(参考:【基本】不定積分の置換積分(dxを置き換え))、 $dx$ を $\dfrac{dt}{2}$ を置き換えればいいですね。ということで、上の積分は、次のようになるんじゃないか、と予想する人もいるでしょう。\[ \int_0^{\frac{\pi}{4} } \frac{\cos t}{2} dt \]しかし、これを計算すると
\begin{eqnarray}
& &
\Big[ \frac{\sin t}{2} \Big]_0^{\frac{\pi}{4} } \\[5pt]
&=&
\frac{\sin \frac{\pi}{4} }{2} \\[5pt]
&=&
\frac{\sqrt{2} }{4} \\[5pt]
\end{eqnarray}となってしまいます。さきほどと答えが違っていますね。この計算はどこかが間違っています。どこが違うでしょうか。
最後に代入した $t=\dfrac{\pi}{4}$ がダメそうですね。先ほどと同じ答えになるには、 $t=\dfrac{\pi}{2}$ を入れないといけないんじゃないか、つまり、積分区間も置き換えないといけないんじゃないか、と予想できます。
定積分の置換積分を正しく計算してみよう
さて、定積分の置換積分をどのように計算するか、を考えていきましょう。その前に、そもそも不定積分の置換積分について振り返っておきましょう。なお、ここでは、積分定数は $0$ として考えていきます。
まず、関数 $f(x)$ の不定積分を $F(x)$ と置きましょう。これは、\[ F(x)=\int f(x)dx \]ということですね。
このとき、 $x=g(t)$ という関係式が成り立ってたとしましょう。 $x$ の部分を $t$ の式で置き換えよう、ということです。このとき、 $F(x)=F(g(t))$ は、右辺を見ると $t$ の関数だと考えられます。これを $t$ で微分すれば、合成関数の微分から\[ F'(g(t))g'(t)=f(g(t))g'(t) \]となります。 $F'(x)=f(x)$ を利用して変形しています。このことから、 $F(x)$ を $x$ で微分すれば $f(x)$ になり、 $t$ で微分すれば $f(g(t))g'(t)$ になることがわかります。微分した後の関数から微分する前の関数を対応させるのが不定積分だったので、\[ \int f(x)dx=\int f(g(t))g'(t)dt \]が成り立つことがわかります。これが、不定積分の置換積分です。
$f(x)$ の $a$ から $b$ までの定積分は\[ \int_a^b f(x)dx=F(b)-F(a) \]です。一方、 $f(g(t))g'(t)$ の $\alpha$ から $\beta$ までの定積分を考えてみましょう。この関数は先ほど見た通り、 $F(g(t))$ を微分したものなので、
\begin{eqnarray}
& &
\int_{\alpha}^{\beta} f(g(t))g'(t) dt \\[5pt]
&=&
\Big[ F(g(t)) \Big]_{\alpha}^{\beta} \\[5pt]
&=&
F(g(\beta))-F(g(\alpha)) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。この両者が等しくなるとすると、\[ a=g(\alpha),\ b=g(\beta) \]が成り立っていないといけませんし、逆に、これが成り立っていれば、定積分の計算もうまくいくことがわかります。
つまり、 $x=g(t)$ と置いたときは、 $dx$ を $g'(t)dt$ に置き換えるだけでなく、積分区間 $[a,b]$ も $[\alpha,\beta]$ に置き換えないといけない、ということです。
冒頭の例をもう一度考えましょう。\[ \int_0^{\frac{\pi}{4} } \cos 2x dx \]に対して、 $2x=t$ 、つまり、 $x=\dfrac{t}{2}$ と置くのでしたね。こうすると、 $dx=\dfrac{dt}{2}$ であり、積分区間は、
\begin{array}{c|ccc}
x & 0 & \cdots & \frac{\pi}{4} \\
\hline
t & 0 & \cdots & \frac{\pi}{2} \\
\end{array}と変換されます。これより、
\begin{eqnarray}
& &
\int_0^{\frac{\pi}{4} } \cos 2x dx \\[5pt]
&=&
\int_0^{\frac{\pi}{2} } \frac{\cos t}{2} dt \\[5pt]
&=&
\Big[ \frac{\sin t}{2} \Big]_0^{\frac{\pi}{2} } \\[5pt]
&=&
\frac{\sin \frac{\pi}{2} }{2} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}となり、同じ結果になることがわかります。これが、定積分の置換積分です。
おわりに
ここでは、定積分の置換積分について見てきました。特に、積分区間も変換する必要があることを見てきました。具体的な計算例は今後どんどん見ていくことにしましょう。