東京大学 理系 2020年度 第6問 解説
問題編
問題
以下の問いに答えよ。
(1) $A,\alpha$ を実数とする。 $\theta$ の方程式\[ A\sin2\theta-\sin(\theta+\alpha)=0 \]を考える。 $A\gt 1$ のとき、この方程式は $0\leqq \theta\lt 2\pi$ の範囲に少なくとも4個の解を持つことを示せ。
(2) 座標平面上の楕円\[ C:\ \dfrac{x^2}{2}+y^2=1 \]を考える。また、 $0\lt r \lt 1$ を満たす実数 $r$ に対して、不等式\[ 2x^2+y^2\lt r^2 \]を表す領域を $D$ とする。 $D$ 内のすべての点 $\mathrm{P}$ が以下の条件を満たすような実数 $r(0\lt r \lt 1)$ が存在することを示せ。また、そのような $r$ の最大値を求めよ。
条件: $C$ 上の点 $\mathrm{Q}$ で、 $\mathrm{Q}$ における $C$ の接線と直線 $\mathrm{PQ}$ が直交するようなものが少なくとも4個ある。
考え方
(1)は、 $A, \alpha$ の値は何かがはっきりしないため、具体的に解を求めることができません。しかし、解の存在であれば、言うことができます。使える道具は限定されます。
(2)は、「少なくとも4個」というキーワードが出てきていることから考えても、(1)がヒントだと予想できるのですが、なかなかすぐにはわかりづらいですね。ただ、(1)で三角関数が出てきているので、与えられた楕円を三角関数で考えていくのがいいでしょう。
お告げ通りに考えていくと、(1)に似た式が出てきます。最大値を言うためには、条件文に出てくる Q が3個しかないことをいえばいいです。楕円の式を見るよりも、(1)の式を見て考えたほうがいいでしょう。
解答編
問題
以下の問いに答えよ。
(1) $A,\alpha$ を実数とする。 $\theta$ の方程式\[ A\sin2\theta-\sin(\theta+\alpha)=0 \]を考える。 $A\gt 1$ のとき、この方程式は $0\leqq \theta\lt 2\pi$ の範囲に少なくとも4個の解を持つことを示せ。
解答
(1)
$f(\theta)=A\sin2\theta-\sin(\theta+\alpha)$ とおく。 $A\gt 1$ なので、
\begin{eqnarray}
& & f \left( \dfrac{1}{4}\pi \right) = A-\sin\left( \dfrac{1}{4}\pi+\alpha \right) \gt 0 \\[5pt]
& & f \left( \dfrac{3}{4}\pi \right) = -A-\sin\left( \dfrac{3}{4}\pi+\alpha \right) \lt 0 \\[5pt]
& & f \left( \dfrac{5}{4}\pi \right) = A-\sin\left( \dfrac{5}{2}\pi+\alpha \right) \gt 0 \\[5pt]
& & f \left( \dfrac{7}{4}\pi \right) = -A-\sin\left( \dfrac{7}{2}\pi+\alpha \right) \lt 0 \\[5pt]
& & f \left( \dfrac{9}{4}\pi \right) = A-\sin\left( \dfrac{9}{2}\pi+\alpha \right) \gt 0 \\[5pt]
\end{eqnarray}である。 $f(\theta)$ は連続関数なので、中間値の定理より、 $\dfrac{1}{4}\pi \lt \theta_1 \lt \dfrac{3}{4}\pi$, $\dfrac{3}{4}\pi \lt \theta_2 \lt \dfrac{5}{4}\pi$, $\dfrac{5}{4}\pi \lt \theta_3 \lt \dfrac{7}{4}\pi$, $\dfrac{7}{4}\pi \lt \theta_4 \lt \dfrac{9}{4}\pi$ で、 $f(\theta_1)=f(\theta_2)=f(\theta_3)=f(\theta_4)=0$ を満たす $\theta_1,\theta_2,\theta_3,\theta_4$ が存在する。
$\theta_4\geqq 2\pi$ のときに $\theta_0=\theta_4-2\pi$ とすると、 $0\leqq \theta_0\lt\dfrac{1}{4}\pi$ かつ $f(\theta_0)=0$ を満たす。よって、 $f(\theta)=0$ は、 $0\leqq \theta\lt 2\pi$ の範囲に、少なくとも、 $\theta=\theta_0,\theta_1,\theta_2,\theta_3$ か $\theta=\theta_1,\theta_2,\theta_3,\theta_4$ という異なる4つの解をもつことがわかる。
(終)
解答編 つづき
問題
(2) 座標平面上の楕円\[ C:\ \dfrac{x^2}{2}+y^2=1 \]を考える。また、 $0\lt r \lt 1$ を満たす実数 $r$ に対して、不等式\[ 2x^2+y^2\lt r^2 \]を表す領域を $D$ とする。 $D$ 内のすべての点 $\mathrm{P}$ が以下の条件を満たすような実数 $r(0\lt r \lt 1)$ が存在することを示せ。また、そのような $r$ の最大値を求めよ。
条件: $C$ 上の点 $\mathrm{Q}$ で、 $\mathrm{Q}$ における $C$ の接線と直線 $\mathrm{PQ}$ が直交するようなものが少なくとも4個ある。
解答
(2)
$C$ 上の点 A の座標は、 $(\sqrt{2}\cos\theta,\sin\theta)$ と書ける( $0\leqq \theta\lt 2\pi$ )。 $\sin\theta,\cos\theta \ne 0$ のときは、点 A での接線の傾きは
\begin{eqnarray}
x+2yy' &=& 0 \\[5pt]
y' &=& -\frac{x}{2y} \\[5pt]
&=& -\frac{\sqrt{2}\cos\theta}{2\sin\theta} \\[5pt]
\end{eqnarray}である。この接線と直交する直線の傾きは $\dfrac{\sqrt{2}\sin\theta}{\cos\theta}$ だから、点 A での法線(接線に垂直な直線)の方程式は
\begin{eqnarray}
y-\sin\theta &=& \frac{\sqrt{2}\sin\theta}{\cos\theta} (x-\sqrt{2}\cos\theta) \\[5pt]
y-\sin\theta &=& \frac{\sqrt{2}\sin\theta}{\cos\theta}x -2\sin\theta \\[5pt]
y &=& \frac{\sqrt{2}\sin\theta}{\cos\theta}x -\sin\theta \\[5pt]
y\cos\theta &=& \sqrt{2}x\sin\theta -\sin\theta\cos\theta \quad \cdots(*) \\[5pt]
\end{eqnarray}と書ける。
$\sin\theta=0$ のときは、点 A での $C$ の法線の方程式は $y=0$ で、 $\cos\theta=0$ のときは $x=0$ なので、このときも $(*)$ の式で表すことができる。
以上から、 $D$ 内の各点 P に対して、$(*)$ を満たす直線が点 P を通る場合を考えればよい。なお、問題文にある条件は、このような $\theta$ が少なくとも4個あることに対応する。
$(\pm\sqrt{2},0)$, $(0,\pm1)$ の4点について、各点での法線は $(0,0)$ を通る。よって、以下では、 $D$ 内の原点以外の点について考える。
$D$ 内の点 P の座標は $\left(\dfrac{s\cos\alpha}{\sqrt{2} },s\sin\alpha\right)$ と書ける( $0\lt s\lt r$, $0\leqq \alpha \lt 2\pi$ )。 $(*)$ を満たす直線がこの点 P を通るとすると
\begin{eqnarray}
s\sin\alpha\cos\theta &=& \sqrt{2}\cdot \frac{s\cos\alpha}{\sqrt{2} }\sin\theta -\sin\theta\cos\theta \\[5pt]
0 &=& s\cos\alpha\sin\theta-s\sin\alpha\cos\theta -\frac{\sin2\theta}{2} \\[5pt]
0 &=& s\sin(\theta-\alpha) -\frac{\sin2\theta}{2} \\[5pt]
0 &=& \frac{1}{2s}\sin2\theta -\sin(\theta-\alpha) \quad \cdots (**) \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つ。(1)の $\alpha$ は任意の実数なので、(1)から、 $\dfrac{1}{2s}\gt 1$ 、つまり、 $s\lt\dfrac{1}{2}$ なら、 $0\leqq \theta\lt 2\pi$ の範囲で少なくとも4個の解を持つことがわかる。よって、 $r=\dfrac{1}{2}$ とすれば、 $D$ 内のすべての点 P が条件を満たすことがわかる。
次に、 $r\gt\dfrac{1}{2}$ なら条件を満たさないことを示す。これを示すには、ある点 P に対して、 $C$ 上の点で、その点での法線が点 P を通るものが3個以下となることを示せばよい。
$(**)$ で、 $s=\dfrac{1}{2}$, $\alpha=\dfrac{7\pi}{4}$ とすると、
\begin{eqnarray}
\sin 2\theta -\sin\left(\theta-\dfrac{7\pi}{4}\right) &=& 0 \\[5pt]
2\cos \left(\frac{3}{2}\theta-\dfrac{7\pi}{8}\right) \sin \left(\frac{1}{2}\theta+\dfrac{7\pi}{8}\right) &=& 0 \\[5pt]
\end{eqnarray}だから、これを満たす $\theta$ は、 $0\leqq \theta\lt 2\pi$ の範囲では $\theta=\dfrac{1}{4}\pi,\dfrac{11}{12}\pi,\dfrac{19}{12}\pi$ の3つしかない。よって、 $r\gt\dfrac{1}{2}$ とすると、 $D$ 内に条件を満たさない点 P が必ず存在するので、 $r$ の最大値は $\dfrac{1}{2}$ である。
(終)
解説
問題文にある条件通り考えると、次のようなステップになるでしょう。まず、 $D$ 内に点 P をとります。次に、 $C$ 上で点 Q をとり、接線と直線 PQ が直交するか考えます。 Q を動かして、直交するようなものを数えて、それが4個以上かどうかを確かめます。書かれている通りやるなら、この手順です。
ただ、直線 PQ は少し考えづらいんですね。 P, Q の座標はどちらも具体的には決まっていないので、これらを使って直線の方程式をかくのは面倒です。しかし、接線は状況を限定的にしてくれます。 Q の座標を決めれば、接線の傾きは決まるし、それに直交する直線の方程式も決まります。そこで、接線を中心として、問題文にある条件を言い換えてみます。
具体的には、条件を次のようなステップで考える方がいいです。まず、 $D$ 内に点 P をとります。次に、 $C$ 上で点 Q をとり、法線の方程式を考えます。これが点 P を通る場合を考えます。このような Q が4個以上かどうかを確かめます。上の解答では、この手順で考えています。点 Q の座標を使って法線の方程式を表すことができるので、考えやすくなります。
後半は、 $r\gt\dfrac{1}{2}$ なら、 $2x^2+y^2=r^2$ 上の点で条件を満たさないものがあることを言えばいいです。そのためには、(1)で、 $A=1$ としたときに解が3つしかない場合を考えればいいです。 $\sin 2\theta$ と $\sin(\theta+\alpha)$ が、最大値か最小値で重なってしまうを抜き出せばいいです。