京都大学 理系 2018年度 第5問 解説
問題編
問題
曲線 $y=\log x$ 上の点 $\mathrm{ A }(t,\log t)$ における法線上に、点 B を $\mathrm{ AB }=1$ となるようにとる。ただし B の x 座標は t より大きいとする。
(1) 点 B の座標 $(u(t),v(t))$ を求めよ。また $\left(\dfrac{du}{dt},\dfrac{dv}{dt}\right)$ を求めよ。
(2) 実数 r は $0\lt r \lt 1$ を満たすとし、 t が r から $1$ まで動くときに点 A と点 B が描く曲線の長さをそれぞれ $L_1(r)$, $L_2(r)$ とする。このとき、極限 $\displaystyle \lim_{r\to+0} \left(L_1(r)-L_2(r)\right)$ を求めよ。
考え方
(1)は条件をもとに計算していくだけですが、(2)はそうはいきません。(1)の答えを見てあることにピンとこなければ、その後の計算はなかなか進みません。 $u',v'$ の形をよく見て考えましょう。
解答編
問題
曲線 $y=\log x$ 上の点 $\mathrm{ A }(t,\log t)$ における法線上に、点 B を $\mathrm{ AB }=1$ となるようにとる。ただし B の x 座標は t より大きいとする。
(1) 点 B の座標 $(u(t),v(t))$ を求めよ。また $\left(\dfrac{du}{dt},\dfrac{dv}{dt}\right)$ を求めよ。
(2) 実数 r は $0\lt r \lt 1$ を満たすとし、 t が r から $1$ まで動くときに点 A と点 B が描く曲線の長さをそれぞれ $L_1(r)$, $L_2(r)$ とする。このとき、極限 $\displaystyle \lim_{r\to+0} \left(L_1(r)-L_2(r)\right)$ を求めよ。
解答
(1)
$\log x$ を微分すると $\dfrac{1}{x}$ なので、 $y=\log x$ の点 A における法線の傾きは $-t$ である。よって、法線の方程式は
\begin{eqnarray}
y-\log t &=& -t(x-t) \\[5pt]
y &=& -tx+t^2+\log t \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
ここで、 $\mathrm{ AB }=1$ なので
\begin{eqnarray}
1&=& (u-t)^2+\{(-tu+t^2+\log t)-\log t\}^2 \\[5pt]
1&=& (u-t)^2+(-tu+t^2)^2 \\[5pt]
1&=& (1+t^2)(u-t)^2 \\[5pt]
(u-t)^2 &=& \frac{1}{1+t^2}
\end{eqnarray}となる。ここで、条件より $u\gt t$ なので
\begin{eqnarray}
(u-t)^2 &=& \frac{1}{1+t^2}\\[5pt]
u-t &=& \frac{1}{(1+t^2)^{1/2} }\\[5pt]
u &=& \frac{1}{(1+t^2)^{1/2} }+t\\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
これを法線の方程式に代入して、
\begin{eqnarray}
v
&=&
-t \left(\frac{1}{(1+t^2)^{1/2} }+t\right) +t^2+\log t \\[5pt]
&=&
-\frac{t}{(1+t^2)^{1/2} }+\log t \\[5pt]
\end{eqnarray}と求められる。
また、
\begin{eqnarray}
\frac{du}{dt}
&=&
-\frac{1}{2} \times \frac{2t}{(1+t^2)^{3/2} } +1 \\[5pt]
&=&
-\frac{t}{(1+t^2)^{3/2} } +1 \\[5pt]
\end{eqnarray}であり、
\begin{eqnarray}
\frac{dv}{dt}
&=&
-1\times\frac{1}{(1+t^2)^{1/2} }+t\times\frac{t}{(1+t^2)^{3/2} }+\frac{1}{t} \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{(1+t^2)^{1/2} }+\frac{t^2}{(1+t^2)^{3/2} }+\frac{1}{t} \\[5pt]
&=&
\frac{-(1+t^2)+t^2}{(1+t^2)^{3/2} }+\frac{1}{t} \\[5pt]
&=&
-\frac{1}{(1+t^2)^{3/2} }+\frac{1}{t} \\[5pt]
\end{eqnarray}となる。
よって、
\begin{eqnarray}
u(t) &=& \frac{1}{(1+t^2)^{1/2} }+t \\[5pt]
v(t) &=& -\frac{t}{(1+t^2)^{1/2} }+\log t \\[5pt]
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
& &
\left(\dfrac{du}{dt},\dfrac{dv}{dt}\right) \\[5pt]
&=&
\left(-\frac{t}{(1+t^2)^{3/2} } +1, -\frac{1}{(1+t^2)^{3/2} }+\frac{1}{t}\right)
\end{eqnarray}となる。
(2)
\begin{eqnarray}
L_1(r)
&=&
\int_r^1 \sqrt{ 1+\frac{1}{t^2} } dt
\end{eqnarray}である。また、(1)より\[ \dfrac{dv}{dt} = \frac{1}{t} \times \dfrac{dv}{dt} \]なので
\begin{eqnarray}
L_2(r)
&=&
\int_r^1 \sqrt{ \left(\frac{du}{dt}\right)^2 +\left(\frac{dv}{dt}\right)^2 } dt \\[5pt]
&=&
\int_r^1 \sqrt{ \left(\frac{du}{dt}\right)^2 +\frac{1}{t^2}\left(\frac{du}{dt}\right)^2 } dt \\[5pt]
&=&
\int_r^1 \sqrt{ 1+\frac{1}{t^2} } \sqrt{ \left(\frac{du}{dt}\right)^2 } dt \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つ。ここで、 $0\lt t \leqq 1$ のとき、 $t\leqq 1 \lt 1+t^2$ なので、\[ \frac{t}{(1+t^2)^{3/2} }\lt 1 \]が成り立つので、 $\dfrac{du}{dt}\geqq 0$ である。よって、 $L_2(r)$ はさらに
\begin{eqnarray}
L_2(r)
&=&
\int_r^1 \sqrt{ 1+\frac{1}{t^2} } \times\frac{du}{dt} dt \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できる。
よって、
\begin{eqnarray}
& &
L_1(r)-L_2(r) \\[5pt]
&=&
\int_r^1 \sqrt{ 1+\frac{1}{t^2} } dt -\int_r^1 \sqrt{ 1+\frac{1}{t^2} } \times\frac{du}{dt} dt \\[5pt]
&=&
\int_r^1 \sqrt{ 1+\frac{1}{t^2} } \left(1-\frac{du}{dt}\right) dt \\[5pt]
&=&
\int_r^1 \sqrt{ \frac{1+t^2}{t^2} } \times \frac{t}{(1+t^2)^{3/2} } dt \\[5pt]
&=&
\int_r^1 \frac{1}{1+t^2} dt \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できる。
ここで、 $t=\tan\theta$ とし、 $r=\tan\theta_1$ を満たす $0\lt \theta_1\lt\dfrac{\pi}{4}$ をとる。このとき、 t が r から $1$ まで増かするとき、 $\theta$ は $\theta_1$ から $\dfrac{\pi}{4}$ まで増加する。また、
\begin{eqnarray}
dt
&=&
\frac{1}{\cos^2\theta} d\theta
\end{eqnarray}なので、
\begin{eqnarray}
& &
L_1(r)-L_2(r) \\[5pt]
&=&
\int_r^1 \frac{1}{1+t^2} dt \\[5pt]
&=&
\int_{\theta_1}^{\pi/4} \frac{1}{1+\tan^2 \theta }\times \frac{1}{\cos^2\theta} d\theta \\[5pt]
&=&
\int_{\theta_1}^{\pi/4} d\theta \\[5pt]
&=&
\frac{\pi}{4}-\theta_1
\end{eqnarray}と変形できる。 $r\to+0$ のとき、 $\theta_1\to0$ なので、
\begin{eqnarray}
\lim_{r\to+0} \left(L_1(r)-L_2(r)\right)=\frac{\pi}{4}
\end{eqnarray}となる。
(終)