【標準】微分係数を使って極限値を表す
ここでは、ある極限値を求めるときに、微分係数を用いて答えるような問題を見ていきます。微分係数の定義に帰着させる問題です。
微分係数を使って極限値を表す1
微分係数の定義とよく似ていますが、少しだけ異なっています。微分係数の定義は、【基本】微分係数と導関数(の復習)でも見た通り、\[ f'(a)=\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h} \]です。 $f(a+h)$ の部分が、この例題では $f(a+2h)$ に変わっています。
$h\to 0$ とするんだから、 $f(a+h)$ も $f(a+2h)$ も大して変わらない気がしますが、そんなことはありません。微分係数は、 $x$ の変動幅と $f(x)$ の変動幅の比を使った極限なので、この対応がズレていてはいけません。つまり、この例題のように、 $f(a+2h)$ と $f(a)$ との差を考えるのであれば、 $x$ の方も、 $a+2h$ と $a$ との差を考える、つまり、分母は $2h$ である必要があります。
そのため、次のように変形して求めます。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{h\to 0}\frac{f(a+2h)-f(a)}{h} \\[5pt]
&=&
\lim_{h\to 0}\frac{f(a+2h)-f(a)}{2h}\times 2 \\[5pt]
&=&
f'(a)\times 2 =2f'(a) \\[5pt]
\end{eqnarray}これが答えです。正しく分母と分子を対応させないと、微分係数の定義は使えません。つまり、\[ \lim_{\bigcirc\to 0}\frac{f(a+\bigcirc)-f(a)}{\bigcirc} \]というように、 $\bigcirc$ の部分は全部同じでないと、 $f'(a)$ にはなりません。 $h\to 0$ と $2h\to 0$ は同じことですが、分数の分母と分子は、同じように対応している必要があります。
微分係数を使って極限値を表す2
今度は先ほどと違って、 $f(a)$ の部分がないですね。このままでは微分係数の定義が使いづらいので、無理やり $f(a)$ が出てくるように変形しましょう。その後は、先ほどの例題と同じ流れです。
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{h\to 0}\frac{f(a+3h)-f(a-h)}{h} \\[5pt]
&=&
\lim_{h\to 0}\frac{\{f(a+3h)-f(a)\}-\{f(a-h)-f(a)\} }{h} \\[5pt]
&=&
\lim_{h\to 0}\left\{\frac{f(a+3h)-f(a)}{3h}\times 3 -\frac{f(a-h)-f(a)}{-h}\times (-1)\right\} \\[5pt]
&=&
3f'(a)-\{-f'(a)\} \\[5pt]
&=&
4f'(a) \\[5pt]
\end{eqnarray}これが答えです。
微分係数を使って極限値を表す3
【基本】微分係数と導関数(の復習)でも見た通り、 $f'(a)$ は\[ f'(a)=\lim_{x\to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a} \]とも書けます。 $x=a+h$ と置き換えただけです。これを利用するには、どう変形すればいいかを考えましょう。
例題2のときと同じように、無理やり何かを足し引きすることを考えてみると、 $x^2 f(a)$ を間に入れればいいことがわかります。こうすれば、 $x^2f(x)$ との差から、微分係数の定義が使えます。後半の $a^2f(a)$ との差からは、 $x^2$ の微分が出てきます。これらを踏まえると
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{x\to a}\frac{x^2f(x)-a^2f(a)}{x-a} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to a}\frac{\{x^2f(x)-x^2f(a)\}+\{x^2f(a)-a^2f(a)\} }{x-a} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to a}\frac{x^2\{f(x)-f(a)\}+(x+a)(x-a)f(a)}{x-a} \\[5pt]
&=&
\lim_{x\to a}\left\{x^2\cdot \frac{f(x)-f(a)}{x-a}+(x+a)f(a)\right\} \\[5pt]
&=&
a^2f'(a)+2af(a) \\[5pt]
\end{eqnarray}と計算できます。これが答えとなります。
おわりに
ここでは、微分係数を使って極限値を表す問題を見ました。式を見れば、微分係数の定義と似ているので、「微分係数の定義を使うんだろうな」ということはひらめきやすいでしょう。抽象的な問題なので、使える道具もほとんどありませんしね。
ただ、微分係数の定義を使う場合には、対応を合わせておく必要があります。 $x+\bigcirc$ と $x$ との差、 $f(x+\bigcirc)$ と $f(x)$ との差を使わないと、微分係数の定義が使えない点に注意しましょう。