🏠 Home / 数学III / 積分 / 区分求積法

【標準】区分求積法を使って和の極限を求める

ここでは、区分求積法を使って和の極限を求める問題を見ていきます。区分求積法が使えるように、少し変形が必要なものを見ていきます。

📘 目次

区分求積法を使って和の極限を求めるその1

例題1
$n$ を正の整数とし、\[ a_n=\dfrac{1}{n+1}+\dfrac{1}{n+2}+\cdots+\dfrac{1}{n+n} \]とします。このとき、次の極限値を求めなさい。 \[ \lim_{n\to\infty} a_n \]

数列の分野でいろいろな和の公式を学びましたが、分数の和に関するものは見ませんでした。これを簡単に表すことは難しいです。

$n$ を大きくしていくと、各項は $0$ に小さくなっていきますが、項の数はどんどん多くなっていきます。とても小さいものをとてもたくさん足す、という式なので、 $0$ に収束することもあれば、正の無限大に発散することもあるし、ある正の値に収束することもありえます。

和を簡単に表す公式はないけれども、和をなんとか変形しないと極限が計算できない、という問題になっています。

このような「小さいものをたくさん足す」和の極限を求める場合に、区分求積法が使えることがあります。【基本】区分求積法を使って和の極限を求めるでも見ましたが、区間 $[0,1]$ で連続な関数 $f(x)$ に対して、次が成り立つのでした。\[ \int_0^1 f(x)dx=\lim_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\frac{k}{n}\right) \]これと今の問題を見比べて、どう対応するのか考えてみましょう。

まず、この問題の式を、 $\sum$ を使って書きなおしてみましょう。\[ \lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k} \]となります。これと上の式を見比べると、 $\dfrac{1}{n}$ がないのと、 $\dfrac{k}{n}$ の式になっていない点が違いますね。次のように変形すれば、両方とも解決します。
\begin{eqnarray} & & \lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^n \frac{1}{n+k} \\[5pt] &=& \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n \frac{1}{1+\frac{k}{n} } \\[5pt] \end{eqnarray}こう変形すれば、区分求積法の式で、 $f(x)=\dfrac{1}{1+x}$ として適用することで、この極限は、\[ \int_0^1 \frac{1}{1+x}dx \]と変形できます。

ここまでくれば、あとは積分を計算するだけで、
\begin{eqnarray} & & \int_0^1 \frac{1}{1+x}dx \\[5pt] &=& \Big[ \log(1+x) \Big]_0^1 \\[5pt] &=& \log 2 \end{eqnarray}となることがわかります。

和の極限を求める問題で、和が直接計算できない場合には、こうして $\dfrac{1}{n}$ と $\dfrac{k}{n}$ を作り出して、区分求積法を使って求められることがあります。

区分求積法を使って和の極限を求めるその2

例題2
$n$ を正の整数とし、\[ a_n=\dfrac{1}{n^2+1^2}+\dfrac{2}{n^2+2^2}+\dfrac{3}{n^2+3^2}+\cdots+\dfrac{n}{n^2+n^2} \]とします。このとき、次の極限値を求めなさい。 \[ \lim_{n\to\infty} a_n \]

これも、直接和を求めることはできませんね。しかも、各項は $0$ に収束するので、小さいものをたくさん足す、不定形のパターンです。ここでも、区分求積法が使える形に変形していきましょう。

$\sum$ を使って書き直すと\[ \lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^n \frac{k}{n^2+k^2} \]となります。ここでも、無理やり $\dfrac{1}{n}$ や $\dfrac{k}{n}$ が出てくるように変形すると
\begin{eqnarray} & & \lim_{n\to\infty} \sum_{k=1}^n \frac{k}{n^2+k^2} \\[5pt] &=& \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n \frac{\frac{k}{n} }{1+\left(\frac{k}{n}\right)^2} \\[5pt] \end{eqnarray}ここで、区分求積法を用います。 $f(x)=\dfrac{x}{1+x^2}$ とすればいいですね。 \begin{eqnarray} & & \int_0^1 \frac{x}{1+x^2} dx \\[5pt] &=& \Big[ \frac{1}{2}\log|1+x^2| \Big]_0^1 \\[5pt] &=& \frac{1}{2}\log2 \\[5pt] \end{eqnarray}が答えとなります。

おわりに

ここでは、和の極限を求めるときに、少し変形をして区分求積法を使う問題を見ました。0に収束するとても小さいものととてもたくさん足すような場合には、区分求積法を使って解くことがあります。区分求積法が使えるように変形するのは、慣れるまでは少し時間がかかると思います。

関連するページ

YouTubeもやってます

チャンネル登録はコチラから (以下は、動画のサンプルです)
東北大学2024年度後期数学文理共通第4問 横浜国立大学文系2024年度後期数学第1問 奈良女子大学理学部2024年度数学第1問 成城大学経済学部2024年度A方式1日目数学第3問 一橋大学2024年度後期数学第5問1 近畿大学医学部2024年度後期数学第3問