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【応用】定積分を使って不等式を示す(和を含む)

ここでは、定積分を使って不等式を示す問題を見ていきます。また、その流れで、指数関数と階乗の発散スピードの比較も行います。

📘 目次

定積分を使って不等式を示す

例題
$n$ を2以上の整数とするとき、以下の問いに答えなさい。
(1) 次の不等式を示しなさい。\[ \int_1^n \log x dx \lt \log n! \]
(2) (1)を利用して、次の極限値を求めなさい。\[ \lim_{n\to\infty} \frac{e^n}{n!} \]

(1)の左辺は、 $y=\log x$ と $x=n$, $x$ 軸で囲まれた部分の面積、と考えることができます。一方、右辺は、 $\log 2$ から $\log n$ までの和なので、縦が $\log k$ $(k=2,3,\cdots ,n)$ で横が $1$ の長方形の面積の和、と考えることができます。これをもとに、【標準】定積分を使って不等式を示す(和を含む)でも見た手法で、区間を分けて、面積の比較から不等式を示してみましょう。

上の図から、4つの点 $(k-1,0)$, $(k,0)$, $(k,\log k)$, $(k-1,\log k)$ をつないでできる長方形の面積 $(k=2,3,\cdots, n)$ は、 $y=\log x$, $x=k$, $x=k-1$, $x$ 軸で囲まれた部分の面積よりも大きくなります。よって、\[ \int_{k-1}^k \log x dx \lt \log k \]が成り立ちます。

これを、 $k=2$ から $k=n$ について辺々をそれぞれ加えると、\[ \sum_{k=2}^n \int_{k-1}^k \log x dx \lt \sum_{k=2}^n \log k \]が成り立ちます。左辺の積分区間をつなぎ、右辺の $\log$ の和を計算すると\[ \int_1^n \log x dx \lt \log n! \]が成り立つことがわかります。これで(1)が示せました。

(2)は、 $n!$ がどのような値になるかがわかりにくいですが、(1)が使えそうですね。対数を考えてみましょう。ここで対数を持ち出すのは、(1)の式に対数があるから、という理由もあるのですが、積だとわかりにくいので和に変換したい、という理由もあります。【応用】区分求積法を使って極限を求めるの後半部分でも、積を和に変換して考えた例がありました。

さて、最終的に(1)を利用することを見越して、まずは(1)の左辺を計算しておきましょう。
\begin{eqnarray} & & \int_1^n \log x dx \\[5pt] &=& \Big[ x\log x \Big]_1^n -\int_1^n dx \\[5pt] &=& n\log n-\Big[ x \Big]_1^n \\[5pt] &=& n\log n -n+1 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。よって、(1)から、\[ n\log n -n+1 \lt \log n! \]となることがわかります。

さて、次に、 $\dfrac{e^n}{n!}$ の対数を考え、上の不等式を利用して考えてみましょう。
\begin{eqnarray} & & \log \dfrac{e^n}{n!} \\[5pt] &=& n-\log n! \\[5pt] &\lt& n-(n\log n -n+1) \\[5pt] &\lt& n(2-\log n)-1 \\[5pt] \end{eqnarray}となることがわかります。ここで、最後の式を $n\to\infty$ とすると負の無限大に発散することがわかります。よって、\[ \lim_{n\to\infty}\log \dfrac{e^n}{n!}=-\infty \]となることがわかるので、\[ \lim_{n\to\infty}\dfrac{e^n}{n!}=0 \]となることがわかります。これで示せました。

指数関数と階乗の発散スピードについて

先ほどの(2)で、答えが $0$ に収束することがわかりましたが、これは言いかえれば、指数関数より階乗の方が発散するスピードが速い、とも言えます。【応用】指数関数の発散速度でも見たように、指数関数は $n$ 乗や対数関数よりも速く発散しますが、階乗はさらに速く発散するんですね。

ちなみに、先ほど見た例題の(2)は、直接示すこともできます。というのも、 $e\lt 3$ であることから
\begin{eqnarray} & & \frac{e^n}{n!} \\[5pt] &=& \frac{e^n}{n\cdot (n-1)\cdots 4\cdot 3\cdot 2\cdot 1} \\[5pt] &\lt& \frac{e^n}{3\cdot 3\cdots 3\cdot 3\cdot 2\cdot 1} \\[5pt] &=& \frac{e^{n-2} }{3^{n-2} }\cdot \frac{e^2}{2} \\[5pt] \end{eqnarray}と変形すれば、最後の式は $n\to \infty$ のときに $0$ に収束することが示せます。

なお、(2)では $e$ で考えましたが、他の正の値 $a$ の場合でも\[ \lim_{n\to\infty}\dfrac{a^n}{n!}=0 \]となります。

おわりに

ここでは、定積分を使って不等式を示す問題を見てきました。階乗の発散スピードを評価する方法を見ました。階乗が指数関数より速く発散することは、定積分を使わなくても示すことができますが、定積分を使って示す方法も理解しておきましょう。

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