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【発展】自然対数の底eが無理数であることの証明

ここでは、過去に出題された入試問題の中で、「自然対数の底 $e$ が無理数であること」を示す問題を見ていきます。

📘 目次

大阪大学1997年後期

以下は、大阪大学1997年後期で出題された問題です。

自然数 $n$ に対して、関数 $f_n(x)=x^ne^{1-x}$ と、その定積分 $\displaystyle a_n=\int_0^1 f_n(x)dx$ を考える。ただし、 $e$ は自然対数の底である。次の問いに答えよ。

(1) 区間 $0\leqq x\leqq 1$ 上で $0\leqq f_n(x)\leqq 1$ であることを示し、さらに $0\lt a_n \lt 1$ が成り立つことを示せ。

(2) $a_1$ を求めよ。 $n\gt 1$ に対して $a_n$ と $a_{n-1}$ の間の漸化式を求めよ。

(3) 自然数 $n$ に対して、等式\[ \frac{a_n}{n!}=e-\left(1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{n!}\right) \]が成り立つことを証明せよ。

(4) いかなる自然数 $n$ に対しても、 $n!e$ は整数とならないことを示せ。

(4)が示せたら、 $e$ が有理数でないことがわかるので、無理数だとわかります。以下では、この問題を解いていきます。

(1)は、まず $f_n(x)$ を微分します。
\begin{eqnarray} f_n'(x) &=& nx^{n-1} e^{1-x}-x^n e^{1-x} \\[5pt] &=& (n-x)x^{n-1} e^{1-x} \\[5pt] \end{eqnarray}なので、 $0\lt x\lt 1$ で $f_n'(x)$ は正だから、$0\leqq x\leqq 1$で $f_n(x)$ は単調増加です。なので、この区間で \begin{eqnarray} f(0) & \leqq & f(x) & \leqq & f(1) \\[5pt] 0 & \leqq & f(x) & \leqq & 1 \\[5pt] \end{eqnarray}となることがわかります。

また、 $f_n(x)$ は定数ではないので\[ 0\lt a_n \lt 1 \]が成り立ちます。

(2)は、式の形から、部分積分を計算すればいいとわかります。まず、
\begin{eqnarray} a_1 &=& \int_0^1 x e^{1-x} dx \\[5pt] &=& [-x e^{1-x}]_0^1 +\int_0^1 e^{1-x} dx \\[5pt] &=& -1 +[-e^{1-x}]_0^1 \\[5pt] &=& e-2 \end{eqnarray}と計算できます。また、 $a_n$ は \begin{eqnarray} a_n &=& \int_0^1 x^n e^{1-x} dx \\[5pt] &=& [-x^n e^{1-x}]_0^1 +\int_0^1 nx^{n-1} e^{1-x} dx \\[5pt] &=& -1 +n a_{n-1} \\[5pt] \end{eqnarray}なので、\[ a_n=n a_{n-1}-1 \]という漸化式が得られます。

(3)は、 $n=1$ のときは、$n=1$ を代入して(2)の結果を使えば、両辺ともに $e-2$ になるので、成り立つことがわかります。

$n\geqq 2$ のときを考えます。(2)で得られた漸化式の両辺を $n!$ で割ってみましょう。そうすると、\[ \frac{a_n}{n!}-\frac{a_{n-1}}{(n-1)!}=-\frac{1}{n!} \]となることがわかります。これを足し合わせていくと
\begin{eqnarray} & & \sum_{k=2}^n \left( \frac{a_k}{k!}-\frac{a_{k-1}}{(k-1)!} \right) = \sum_{k=2}^n \left(-\frac{1}{k!}\right) \\[5pt] & & \frac{a_n}{n!}-\frac{a_1}{1!} = -\sum_{k=2}^n \frac{1}{k!} \\[5pt] & & \frac{a_n}{n!} = e-2 -\sum_{k=2}^n \frac{1}{k!} \\[5pt] \end{eqnarray}となるので、\[ \frac{a_n}{n!}=e-\left(1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{n!}\right) \]が成り立つことがわかります。

最後の(4)です。 $n!e$ が整数だとすると、(3)の式の右辺に $n!$ を掛けたものは整数となります(各項が整数となるので)。よって、左辺に $n!$ を掛けたもの、つまり、 $a_n$ も整数となります。しかし、(1)より $0\lt a_n \lt 1$ なので、矛盾します。よって、 $n!e$ が整数とならないことが示せました。

これで解答はおしまいですが、(3)の内容\[ \frac{a_n}{n!}=e-\left(1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{n!}\right) \]と(1)の内容 $0\lt a_n\lt 1$ から、 $n\to\infty$ のときに左辺は $0$ に収束することがわかるので、\[ 1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{n!} \to e \]となることもわかります。これも重要な式です。大学以降では、この式を $e$ の定義として使うこともあります。

気象大学校2023年度

$e$ を自然対数の底、$n$ を $2$ 以上の自然数とする。 $a_n$ を等式\[ e=1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{n!}+\frac{a_n}{(n+1)!} \]を満たす数とし、関数 $f(x)$ を\[ f(x)=e^x\left\{1+\frac{1-x}{1!}+\frac{(1-x)^2}{2!}+\cdots+\frac{(1-x)^n}{n!}\right\}+\frac{a_n}{(n+1)!}(1-x)^{n+1} \]で定める。以下の設問に答えよ。なお、必要ならば、 $2\lt e\lt 3$ であることは用いてよい。

(1) $f(0)$ 及び $f(1)$ の値を求めよ。
(2) $f(x)$ の導関数 $f'(x)$ を $a_n,n,x$ を用いて表せ。
(3) 関係式 $a_n=e^c$, $0\lt c \lt 1$ を満たす実数 $c$ が存在することを示せ。さらに、不等式 $0\lt\dfrac{a_n}{n+1}\lt 1$ が成り立つことを示せ。
(4) $e$ が無理数であることを示せ。

この問題は、最後に「 $e$ が無理数であることを示せ」となっています。

(1) は、そのまま計算するだけです。
\begin{eqnarray} & & f(0) \\[5pt] &=& e^0 \left\{1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{n!}\right\}+\frac{a_n}{(n+1)!} \\[5pt] &=& e \end{eqnarray}となります。$a_n$ の定義式そのままです。 $x=1$ のときは \begin{eqnarray} f(1) &=& e \end{eqnarray}となります。 $1-x$ のところが全部消えるので、 $e$ だけが残ります。

(2)は言われた通りに微分します。
\begin{eqnarray} f'(x) &=& e^x\left\{1+\frac{1-x}{1!}+\frac{(1-x)^2}{2!}+\cdots+\frac{(1-x)^n}{n!}\right\} \\[5pt] & & +e^x\left\{-\frac{1}{1!}-\frac{2(1-x)^1}{2!}-\cdots-\frac{n(1-x)^{n-1}}{n!}\right\} \\[5pt] & & -\frac{(n+1)a_n}{(n+1)!}(1-x)^n \\[5pt] &=& e^x\left\{1+\frac{1-x}{1!}+\frac{(1-x)^2}{2!}+\cdots+\frac{(1-x)^n}{n!}\right\} \\[5pt] & & -e^x\left\{1+\frac{1-x}{1!}+\frac{(1-x)^2}{2!}+\cdots+\frac{(1-x)^{n-1}}{(n-1)!}\right\} \\[5pt] & & -\frac{a_n}{n!}(1-x)^n \\[5pt] &=& e^x \frac{(1-x)^n}{n!} -\frac{a_n}{n!}(1-x)^n \\[5pt] &=& \frac{(e^x-a_n)(1-x)^n}{n!} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

(3)は少し難しいですが、問題文にあるような $c$ の存在を示すときには、平均値の定理が使えそうです(参考:【基本】平均値の定理)。平均値の定理より、$0\lt c\lt 1$ で、
\begin{eqnarray} \frac{f(1)-f(0)}{1-0} &=& f'(c) \end{eqnarray}を満たす $c$ が存在します。(1)より、 $f(1)-f(0)=e-e=0$ だから、\[ f'(c)=\frac{(e^c-a_n)(1-c)^n}{n!}=0 \]です。また、 $1-c\ne 0$ なので、\[ a_n=e^c \]だとわかります。よって、問題文にあるような $c$ が存在することが示せました。

$0\lt c\lt 1$ より、 $e^0\lt e^c\lt e^1$ が成り立ちます。よって、 $e^0\lt a_n$ より、 $0\lt \dfrac{a_n}{n+1}$ がまずわかります。また、
\begin{eqnarray} \frac{a_n}{n+1} &=& \frac{e^c}{n+1} \\[5pt] &\lt& \frac{e^1}{2+1} \\[5pt] &\lt& 1 \end{eqnarray}より、 $\dfrac{a_n}{n+1}\lt 1$ が成り立ちます。

最後の(4)です。もし $e$ が有理数であるとすると、 $e=\dfrac{q}{p}$ を満たす、互いに素な自然数 $p,q$ が存在します。 $e$ は整数ではないので、 $p$ は $2$ 以上の自然数です。

$a_n$ の定義式で、 $n=p$ とすると
\begin{eqnarray} e-\left(1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{n!}\right) &=& \frac{a_p}{(p+1)!} \\[5pt] p!\cdot \frac{q}{p}-p!\left(1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots+\frac{1}{p!}\right) &=& p!\cdot \frac{a_p}{(p+1)!} \\[5pt] q(p-1)!-\left({}_p\mathrm{P}_p+{}_p\mathrm{P}_{p-1}+{}_p\mathrm{P}_{p-2}+\cdots+{}_p\mathrm{P}_0\right) &=& \frac{a_p}{p+1} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。ここで、左辺は整数ですが、右辺は(3)より整数ではないので、矛盾します。よって、 $e$ は有理数ではなく、無理数だとわかります。

おわりに

ここでは、自然対数の底 $e$ が無理数であることを示しました。大学数学ではもっと楽に示すことができますが、高校数学でも、上で見た方法で示すことができます。

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