【応用】区分求積法を使って極限を求める
ここでは、区分求積法を使って、極限を求める問題を考えていきます。パッと見た感じ、区分求積法を使うとは思えないものを扱います。
区分求積法を使って極限を求める
根号の中は、 $n+1$ から $n+n$ までの n 個あります。このように、 $n+k$ $(k=1,2,\cdots,n)$ が出てきて、しかも簡単に計算できない場合には、【基本】区分求積法を使って和の極限を求めるや【標準】区分求積法を使って和の極限を求めるで見たような、区分求積法が使えることがあります。\[ \int_0^1 f(x)dx=\lim_{n\to\infty} \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\frac{k}{n}\right) \]ただ、区分求積法は和の極限が出てきますが、今考えている問題は積なので、形が違います。そこで、 $\log$ を考えることにします。
まず、 $\dfrac{k}{n}$ が出てくるように、次のように変形しましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{n} \sqrt[n]{(n+1)(n+2)\cdots(n+n)} \\[5pt]
&=&
\sqrt[n]{\frac{1}{n^n} \cdot (n+1)(n+2)\cdots(n+n)} \\[5pt]
&=&
\sqrt[n]{\left(1+\frac{1}{n}\right)\left(1+\frac{2}{n}\right)\cdots\left(1+\frac{n}{n}\right)} \\[5pt]
\end{eqnarray} $\dfrac{k}{n}$ の形が出てきましたね。これを $a_n$ とおいて、 $a_n$ の対数を考えましょう。
\begin{eqnarray}
& &
\log a_n \\[5pt]
&=&
\log \sqrt[n]{\left(1+\frac{1}{n}\right)\left(1+\frac{2}{n}\right)\cdots\left(1+\frac{n}{n}\right)} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{n} \left\{\log \left(1+\frac{1}{n}\right)+\log \left(1+\frac{2}{n}\right)+\cdots\log \left(1+\frac{n}{n}\right)\right\} \\[5pt]
&=&
\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} \log \left(1+\frac{k}{n}\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}こう変形すると、区分求積法が使える形になっていますね。 $f(x)=\log (1+x)$ としたものになっています。これより、
\begin{eqnarray}
& &
\lim_{n\to\infty} \log a_n \\[5pt]
&=&
\lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} \log \left(1+\frac{k}{n}\right) \\[5pt]
&=&
\int_0^1 \log(1+x) \\[5pt]
&=&
\Big[ (1+x)\log(1+x) \Big]_0^1 -\int (1+x)\cdot \frac{1}{1+x} dx \\[5pt]
&=&
2\log 2 -\Big[ x \Big]_0^1 \\[5pt]
&=&
2\log 2 -1 \\[5pt]
&=&
\log \frac{4}{e} \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。これより、\[ \lim_{n\to\infty} a_n=\frac{4}{e} \]となるので、これが答えとなります。
同じ内容で別の表現の出題方法
上で見た例題は、 $n+k$ が比較的わかりやすい形になっていますが、次のような出題のされ方もありえます。\[ \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \sqrt[n]{\frac{(2n)!}{n!} } \]このように階乗で書かれると、さらに区分求積法が思いつきにくいですね。もっと言うと、次のような形もありえるでしょう。\[ \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \sqrt[n]{ {}_{2n} \mathrm{ P }_n } \]順列・組合せの言葉で書かれた場合も、なかなか区分求積法の利用は気づきにくいです。
階乗や組合せなどで出てくる記号がある場合は、まずは積の形で置き換えてみましょう(試行錯誤するには、それくらいしかできることはないですが)。また、積の数が増えていくような極限を考える場合は、ここで見たように対数を考えたほうがいいでしょう。そうすると、区分求積法が思いつきやすくなるかもしれません。
おわりに
ここでは、パッと見て区分求積法を使うとは思いつきにくい問題に対して、区分求積法を使って極限を求める問題を見てきました。特に、後半で見たような、さらに思いつきにくくする出題方法もあるので、具体的な積に書き換えてみたり、対数を使って積を和に変換することを考えてみましょう。