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整数の簡約法則

ここでは、整数の加法や乗法において、簡約法則が成り立つことを示していきます。

📘 目次

整数の加法と簡約法則

自然数の加法では簡約法則が成り立ちますが、整数の加法でも成り立ちます。

整数の加法の簡約法則
任意の $x,y,z\in \mathbb{Z}$ に対し、 $x+z=y+z$ ならば $x=y$ が成り立つ。

整数の世界では、加法の逆元が存在するので、両辺に $-z$ を足すだけで示せます。

これは「等しい」場合ですが、「より小さい」や「以上」の場合でも成り立ちます。

整数の加法と順序
任意の $x,y,z\in \mathbb{Z}$ に対し、 $x+z\lt y+z$ ならば $x\lt y$ が成り立つ。

$x+z\lt y+z$ ならば、ある $0$ でない自然数 $n$ があって\[ x+z+n = y+z \]と書けます。この両辺に $-z$ を足せば\[ x+n=y \]であり、 $n$ は $0$ でない自然数なので\[ x\lt y \]となります。

自然数のときとは異なり、整数の世界では加法の逆元が存在するので、簡単に確かめられます。

他も、 $x,y,z$ が整数の場合、

  • $x\lt y$ と $x+z\lt y+z$ は同値
  • $x= y$ と $x+z= y+z$ は同値
  • $x\gt y$ と $x+z\gt y+z$ は同値
などは、同じようにして示せます。

整数の乗法と簡約法則

乗法でも簡約法則が成り立つので示しておきましょう。少しだけ準備してから本題に入ります。

定理 (積が0ならどちらかは0)
$x,y\in\mathbb{Z}$ が $xy=0$ を満たすとき、 $x,y$ の少なくとも一方は $0$ である。

背理法で示します。

$x$ も $y$ も $0$ でないとしましょう。 $(-x)\cdot y=-0=0$ となるので、 $x$ が負の整数のときは $-x$ を考えることにより、 $x$ は正の整数としても構いません。同様に $y$ も正の整数として構いません。

しかし、自然数と簡約法則 で示した通り、 $0$ でない自然数同士の積は $0$ にならないので矛盾します。

なので、 $x,y$ の少なくとも一方は $0$ となります。


これより、整数の世界でも簡約法則が成り立つことがわかります。

整数の乗法の簡約法則
$x,y,z\in\mathbb{Z}$ で、 $z\ne 0$ のとき、 $xz=yz$ ならば $x=y$ が成り立つ。

$xz=yz$ の両辺に $-yz$ を加えて、分配法則を逆に使うと\[ (x-y)z=0 \]となります。先ほど示したことから、 $x-y=0$ または $z=0$ ですが、仮定から $z\ne 0$ なので、 $x-y=0$ つまり、\[ x=y \]が成り立ちます。

こうして、簡約法則が成り立つことがわかります。

これは、整数の世界で $z\ne 0$ かつ $xz=yz$ なら $z$ で割ってもいい、ということではありません。まだ本シリーズでは、割り算を定義していないからです。割り算を定義した後は、整数の加法の簡約法則のように、(乗法の)逆元を使ってもっと簡単に示すことができます。

整数の乗法と順序

整数の乗法の場合、 $x,y$ の大小関係と $xz,yz$ の大小関係は、 $z$ が正の整数か負の整数かによって変わります。高校までの数学でも習う内容ですね。新しい定義でも同じようなことが成り立つので、確認しておきましょう。

整数の乗法と順序
$x,y,z\in\mathbb{Z}$ とする。
  • $z\gt 0$ のとき、 $x\lt y$ と $xz\lt yz$ は同値
  • $z\lt 0$ のとき、 $x\lt y$ と $xz\gt yz$ は同値

4つのことを示します。

(1) $z\gt 0$, $x\lt y$ ならば $xz\lt yz$

$x\lt y$ とすると、 $x+n=y$ を満たす $0$ でない自然数 $n$ が存在します。このとき
\begin{eqnarray} yz=(x+n)z=xz+nz \end{eqnarray}であり、 $z\gt 0$ であれば、 $nz$ は $0$ でない自然数同士の積なので、 $0$ でない自然数です。なので、\[ xz\lt yz \]が成り立ちます。

(2) $z\gt 0$, $x\geqq y$ ならば $xz\geqq yz$

$x\geqq y$ とすると、 $x=y+n$ を満たす自然数 $n$ が存在します。このとき
\begin{eqnarray} xz=(y+n)z=yz+nz \end{eqnarray}であり、 $z\gt 0$ であれば、 $nz$ は自然数同士の積なので、自然数です。なので、\[ xz\leqq yz \]が成り立ちます。

(3) $z\lt 0$, $x\lt y$ ならば $xz\gt yz$

$z\lt 0$ のとき、 $-z\gt 0$ です(参考:整数の順序#逆元と順序)。(1)より $-xz\lt -yz$ が成り立つから、 $xz\gt yz$ が成り立ちます。

(4) $z\lt 0$, $x\geqq y$ ならば $xz\leqq yz$

$z\lt 0$ のとき、 $-z\gt 0$ です。(2)より $-xz\leqq -yz$ が成り立つから、 $xz\geqq yz$ が成り立ちます。


$z\gt 0$ のとき、(1) より、「 $x\lt y$ ならば $xz\lt yz$ 」が成り立ちます。また、(2)の対偶より、「 $xz\lt yz$ ならば $x\lt y$ 」が成り立ちます。よって、

 $z\gt 0$ のとき、 $x\lt y$ と $xz\lt yz$ は同値

であることがわかります。

同様に、(3)と(4)から、

 $z\lt 0$ のとき、 $x\lt y$ と $xz\gt yz$ は同値

となることもわかります。

このことから、例えば $x=0$ とすると

  • $z\gt 0$ のとき、 $0\lt y$ と $0\lt yz$ は同値
  • $z\lt 0$ のとき、 $0\lt y$ と $0\gt yz$ は同値
となることがわかり、 $y=0$ とすると
  • $z\gt 0$ のとき、 $x\lt 0$ と $xz\lt 0$ は同値
  • $z\lt 0$ のとき、 $x\lt 0$ と $xz\gt 0$ は同値
となることがわかります。つまり、 $x,y$ がともに正の整数、または、ともに負の整数である場合は、 $xy$ は正の整数です。片方が正の整数でもう片方が負の整数の場合、 $xy$ は負の整数となります。

おわりに

ここまで、整数の加法や乗法に関する簡約法則を見てきました。また、加法や乗法によって、大小関係がどのように変わるかも見てきました。乗法の場合は、符号によって大小関係が変わる点に注意しましょう。

次は、整数の絶対値について見ていきます。

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