【基本】偶数乗と奇数乗の定積分
ここでは、偶数乗と奇数乗の定積分について見ていきます。
自然数乗の定積分をよく見てみよう
次の定積分を計算してみましょう。\[ \int_{-1}^1 (x^4+x^3+x^2+x) dx \]なんのひねりもない定積分です。そのまま計算して
\begin{eqnarray}
& &
\int_{-1}^1 (x^4+x^3+x^2+x) dx \\[5pt]
&=&
\left[ \frac{x^5}{5}+\frac{x^4}{4}+\frac{x^3}{3}+\frac{x^2}{2} \right]_{-1}^1 \\[5pt]
&=&
\left(\frac{1}{5}+\frac{1}{4}+\frac{1}{3}+\frac{1}{2}\right) \\
& &
-\left(-\frac{1}{5}+\frac{1}{4}-\frac{1}{3}+\frac{1}{2}\right)
\end{eqnarray}となり、最後の分数の計算をすれば答えが得られます。
ここで、最後の式をよく見てみましょう。カッコの中を先に計算するよりも、分母が同じものをまず計算したほうが楽になりそうですね。しかも、よく見ると、 $\dfrac{1}{4}$ と $\dfrac{1}{2}$ は消えることがわかります。残りの $\dfrac{1}{5}$ と $\dfrac{1}{3}$ はそれぞれ2倍になりますね。その結果\[ \frac{2}{5}+\frac{2}{3}=\frac{16}{15} \]となることがわかります。
ところで、 $\dfrac{1}{4}$ や $\dfrac{1}{2}$ がどこから出てきたかをさかのぼって確認すると、 $x^3$, $x$ の積分から出てきたものであることがわかります。一方、 $\dfrac{1}{5}$, $\dfrac{1}{3}$ は $x^4$, $x^2$ の積分から出てきています。
こうして見ると、奇数乗は消え、偶数乗は2倍になっていることがわかりますね。
偶数乗と奇数乗の定積分
先ほど見たように、偶数乗と奇数乗の定積分には、よさそうな性質がありそうだ、と予想できます。もう少し一般的な状況で見てみましょう。
$n$ を自然数として、まずは、偶数乗について考えましょう。\[ \int_{-a}^a x^{2n}dx \]積分区間が $-a$ から $a$ までというように、符号だけが変わっている場合を考えます。
これは次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
& &
\int_{-a}^a x^{2n}dx \\[5pt]
&=&
\left[ \frac{x^{2n+1} }{2n+1} \right]_{-a}^a \\[5pt]
&=&
\frac{a^{2n+1} }{2n+1}-\frac{(-a)^{2n+1} }{2n+1} \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで、 $-1$ の奇数乗は $-1$ なので、最後の式は\[ 2\times \frac{a^{2n+1} }{2n+1} \]となりますね。ということは、 $x=a$ と $x=-a$ をそれぞれ代入して引くよりも、 $x=a$ を代入して2倍するほうが簡単です。
次に、奇数乗を考えましょう。\[ \int_{-a}^a x^{2n-1}dx \]今回も、積分区間が $-a$ から $a$ までというように、符号だけが変わっている場合を考えます。
\begin{eqnarray}
& &
\int_{-a}^a x^{2n-1}dx \\[5pt]
&=&
\left[ \frac{x^{2n} }{2n} \right]_{-a}^a \\[5pt]
&=&
\frac{a^{2n} }{2n}-\frac{(-a)^{2n} }{2n} \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで、 $-1$ の偶数乗は $1$ なので、最後の式は $0$ です。ということで、計算する必要はないんですね。
つまり、冒頭の定積分\[ \int_{-1}^1 (x^4+x^3+x^2+x) dx \]を見て、「積分区間の両端は、符号が変わっているだけだ」ということに気づけば、奇数乗は無視して、偶数乗は $x=1$ を代入するした結果を2倍すればいいので\[ 2\int_0^1 (x^4+x^2) dx \]を計算すればいいだけ、となります。だいぶスッキリしますね。
置換積分を使った考え方
先ほどは、偶数乗、奇数乗の定積分のうち、積分区間の両端の符号が違うだけ、の場合を直接計算しましたが、置換積分を使った計算も確認しておきましょう。
$n$ を自然数として\[ \int_{-a}^a x^n dx \]を考えてみましょう。今回は、偶数乗と奇数乗を一度に考えてみます。これは、次のように分解できます。\[ \int_{-a}^0 x^n dx+\int_0^a x^n dx \]この1つ目の定積分について、置換積分を考えてみましょう。
$x=-t$ とすると、 $dx=-dt$ と置き換えればいいですね。また、積分区間は、
\begin{array}{c|ccc}
x & -a & \cdots & 0 \\
\hline
t & a & \cdots & 0 \\
\end{array}となるので、
\begin{eqnarray}
& &
\int_{-a}^0 x^n dx \\[5pt]
&=&
\int_a^0 (-t)^n \cdot(-1) dt \\[5pt]
&=&
(-1)^n \int_0^a t^n dt \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
以上から、元の定積分は、もし $n$ が偶数なら、 $(-1)^n=1$ なので、 $\int_0^a x^n dx$ が2つ出てくることになります。一方、 $n$ が奇数なら、 $(-1)^n=-1$ なので、打ち消うため、もとの定積分は $0$ となることがわかります。
まとめておきましょう。
\begin{eqnarray} \int_{-a}^a x^{2n} dx &=& 2\int_0^a x^{2n} dx \\[5pt] \int_{-a}^a x^{2n-1} dx &=& 0 \\[5pt] \end{eqnarray}
積分区間が $-a$ から $a$ まで、という形のときしか使えないことに注意しましょう。数の部分が対応していない場合は、適用できません。
ここでは、偶数乗と奇数乗について考えましたが、もう少し一般的な関数(偶関数と奇関数)でも成り立ちます。それについては、また別の機会に見ていきましょう。
おわりに
ここでは、偶数乗と奇数乗の定積分について見てきました。積分区間が $-a$ から $a$ まで、という場合には、計算が簡略化できることを見ました。特に、奇数乗が消えるのは助かりますね。使える場面は少ないですが、積分区間が $-a$ から $a$ までという形になっていたら、計算が簡略化できないか考えるようにしましょう。