【基本】ド・モアブルの定理

ここでは、極形式で表した複素数の積を使って、複素数の $n$ 乗を簡単に計算できる、ド・モアブルの定理について見ていきます。

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ド・モアブルの定理

【基本】複素数の極形式と積で見たように、 $0$ でない2つの複素数 $z_1$, $z_2$ の極形式が
\begin{eqnarray}
z_1 &=& r_1(\cos\theta_1+i\sin\theta_1) \\[5pt] z_2 &=& r_2(\cos\theta_2+i\sin\theta_2) \\[5pt] \end{eqnarray}のとき、積は\[ z_1z_2=r_1r_2\{ \cos(\theta_1+\theta_2)+i\sin(\theta_1+\theta_2) \} \]となります。結果を見ると、絶対値同士の積、偏角同士の和、となっています。

このことを用いて、絶対値が $1$ の複素数 $z$ の $n$ 乗について考えてみましょう。 $z$ の極形式を\[ z=\cos\theta+i\sin\theta \]とすると、 $z^2$ は、偏角 $\theta$ を2つ足したものなので、\[ z^2=\cos2\theta+i\sin2\theta \]となります。 $z^3$ は、さらに偏角 $\theta$ を足したものになるので、\[ z^3=\cos3\theta+i\sin3\theta \]となります。以下、繰り返していくと、正の整数 $n$ に対して、\[ z^n=\cos n\theta+i\sin n\theta \]となることがわかります(厳密には、数学的帰納法を使って示すべきです)。これがあれば、 $n$ 乗が簡単に計算できます。

この $n$ は、正の整数に限らず、もっと広い範囲で成り立ちます。以下では、整数全体に対して成り立つことを見ていきましょう。

まず、 $n=0$ のときです。実数の場合、 $0$ でない数 $a$ に対して、 $a^0=1$ と定めていました(参考:【基本】整数の指数)。複素数の場合も、 $z^0=1$ と定めます。そうすると、\[ z^0=\cos 0\cdot \theta+i\sin 0\cdot \theta \]となることがわかります。上で見た式は $n=0$ でも成り立つことがわかります。

次に、負の整数について考えましょう。実数の場合は、 $0$ でない数 $a$ と正の整数 $n$ に対して、 $a^{-n}=\dfrac{1}{a^n}$ と定めていました(参考:【基本】整数の指数)。複素数の場合も、 $z^{-n}=\dfrac{1}{z^n}$ と定めます。よって、この場合は、\[ z^{-n}=\frac{1}{\cos n\theta+i\sin n\theta} \]と書くことができます。ここで、【基本】複素数の極形式と商でも見たように、割り算は時計回りの回転に対応しているため、この式はさらに変形して\[ z^{-n}=\cos (-n)\theta+i\sin (-n)\theta \]となることがわかります。上で見た式は $n$ が負の整数でも成り立つことがわかります。

これらの結果から、複素数の整数乗が簡単に計算できるようになります。この内容を、ド・モアブルの定理(de Moivre’s theorem) といいます。

ド・モアブルの定理
$n$ が整数のとき、次が成り立つ。\[ (\cos\theta+i\sin\theta)^n=\cos n\theta+i\sin n\theta \]

絶対値が $1$ 出ない場合は、例えば、 $z=r(\cos\theta+i\sin\theta)$ であれば、 $z^n=r^n(\cos n\theta+i\sin n\theta)$ となります。特に、 $|z^n|=|z|^n$ が成り立つこともわかります。

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ド・モアブルの定理を使った計算

例題
次の計算をしなさい。
(1) $\left(\cos\dfrac{\pi}{4}+i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)^3$
(2) $\left(\cos\dfrac{\pi}{15}+i\sin\dfrac{\pi}{15}\right)^{-15}$
(3) $(\sqrt{3}+i)^6$

3乗を普通に展開して計算するのは面倒ですが、ド・モアブルの定理を使えば、かなり簡単に計算できることがわかります。偏角を $3$ 倍すればいいので、(1)は\[ \cos\dfrac{3\pi}{4}+i\sin\dfrac{3\pi}{4}=\frac{\sqrt{2}}{2}(-1+i) \]となります。

(2)は、 $\cos\dfrac{\pi}{15}$ の値などを求めるのが難しいので、直接計算することは無理だといっても過言ではないでしょう。ただ、これもド・モアブルの定理を使えばすぐに計算できます。偏角を $-15$ 倍して\[ \cos(-\pi)+i\sin(-\pi)=-1 \]となります。あっさりですね。

(3)は、今までと少し形が違います。カッコの中が極形式の形で表されていません。この場合は、偏角を知る必要があるので、まず極形式の形で表します。【基本】複素数の極形式で見たようにすると、\[ \sqrt{3}+i=2 \left(\cos\frac{\pi}{6}+i\sin\frac{\pi}{6}\right) \]となることがわかります。こうすると、カッコの部分を $6$ 乗したものは、ド・モアブルの定理を使って計算できます。絶対値の部分は、そのまま $6$ 乗するだけなので、(3)の計算結果は\[ 2^6(\cos\pi +i\sin\pi)=-64 \]となります。

おわりに

ここでは、複素数の $n$ 乗を簡単に計算できる、ド・モアブルの定理を見てきました。極形式で表したときに、複素数の積の偏角が、もとの複素数の偏角の和になることを使って、「 $n$ 乗は偏角を $n$ 倍したもの」と計算できるのでした。 $n$ 乗の計算を展開せずにできる、というのは便利ですね。複素数平面や極形式を導入したメリットの1つです。