東京大学 理系 2006年度 第6問 解説
問題編
【問題】
$x\gt 0$を定義域とする関数$\displaystyle f(x)=\frac{12(e^{3x}-3e^x)}{e^{2x}-1}$について、以下の問いに答えよ。(1) 関数$y=f(x) \ (x\gt 0)$は、実数全体を定義域とする逆関数を持つことを示せ。すなわち、任意の実数aに対して、$f(x)=a$となる$x\gt 0$がただ1つ存在することを示せ。
(2) 前問(1)で定められた逆関数を$y=g(x) \ (-\infty \lt x \lt \infty)$とする。このとき、定積分$\displaystyle \int_8^{27} g(x)dx$を求めよ。
【考え方】
(1)は、狭義単調増加か狭義単調減少であり、区間の左右で発散していることが言えればOKです。つまり、「任意の実数aに対し、$f(x)=a$となる$x\gt 0$がただ1つ存在する」を「$f(x)$はすべての値を1回だけとる」と言い換えて考えるということです。
(2)は、少しわかりにくいですが、置換積分で計算します。
解答編
【問題】
$x\gt 0$を定義域とする関数$\displaystyle f(x)=\frac{12(e^{3x}-3e^x)}{e^{2x}-1}$について、以下の問いに答えよ。(1) 関数$y=f(x) \ (x\gt 0)$は、実数全体を定義域とする逆関数を持つことを示せ。すなわち、任意の実数aに対して、$f(x)=a$となる$x\gt 0$がただ1つ存在することを示せ。
【解答】
$e^x=t$とすると、$x\gt 0$なので、$t\gt 1$である。
このとき、$f(x)$をtを用いて書き直すと、\[ \frac{12(t^3-3t)}{t^2-1} \]となる。これをtの関数として微分すると、
\begin{eqnarray}
& &
12\cdot\frac{(3t^2-3)(t^2-1) -(t^3-3t)\cdot 2t}{(t^2-1)^2} \\
&=&
12\cdot\frac{3t^4 -6t^2+3 -2t^4+6t^2}{(t^2-1)^2} \\
&=&
12\cdot\frac{t^4+3}{(t^2-1)^2} \\
&\gt&
0
\end{eqnarray}となる。よって、tの関数としてみたときに、$f(x)$は狭義単調増加である。$t=e^x$なので、このことから、$f(x)$はxに関して狭義単調増加な関数となることがわかる。
また、
\begin{eqnarray}
\lim_{x\to \infty} \frac{12(e^{3x}-3e^x)}{e^{2x}-1}=\infty \\[5pt]
\lim_{x\to +0} \frac{12(e^{3x}-3e^x)}{e^{2x}-1}=-\infty \\[5pt]
\end{eqnarray}なので、xが$+0$から$\infty$まで動くとき、$f(x)$は任意の実数の値を一度だけとる。よって、$y=f(x)$は、実数全体を定義域とする逆関数を持つ。
【解答終】
【問題】
(2) 前問(1)で定められた逆関数を$y=g(x) \ (-\infty \lt x \lt \infty)$とする。このとき、定積分$\displaystyle \int_8^{27} g(x)dx$を求めよ。
【解答】
$y=g(x)$の値域は、正の数全体である。よって、$g(x)=z$とすると、$z\gt 0$である。
このとき、$f(g(x))=x$であり、$f(g(x))=f(z)$なので、$x=f(z)$となる。よって、$\frac{dx}{dz}=f'(z)$となる。このことから、\[ \int g(x)dx = \int zf'(z)dz \]となることがわかる。
$x=8$のときのzの値を求める。$x=f(z)$なので、$e^z=t$とすると、
\begin{eqnarray}
\frac{12(t^3-3t)}{t^2-1} &=& 8 \\[5pt]
12(t^3-3t) &=& 8(t^2-1) \\[5pt]
3(t^3-3t) -2(t^2-1)&=&0 \\
3t^3 -2t^2 -9t +2&=&0 \\
(t-2)(3t^2+4t-1)&=&0 \\
t=2, \frac{-2 \pm \sqrt{7} }{3} \\
\end{eqnarray}となる。$t=e^z\gt 1$なので、$t=2$、つまり、このときのzは$\log 2$となる。
同様に、$x=27$のときのzを求めると
\begin{eqnarray}
\frac{12(t^3-3t)}{t^2-1} &=& 27 \\[5pt]
12(t^3-3t) &=& 27(t^2-1) \\[5pt]
4(t^3-3t) -9(t^2-1)&=&0 \\
4t^3 -9t^2 -12t +9&=&0 \\
(t-3)(4t^2+3t-3)&=&0 \\
t=3, \frac{-3 \pm \sqrt{57} }{8} \\
\end{eqnarray}となる。$t=e^z\gt 1$なので、$t=3$、つまり、このときのzは$\log 3$となる。
簡単のため、$\alpha=\log 2$、$\beta=\log 3$とおくと、以上のことから
\begin{eqnarray}
\int_8^{27} g(x)dx
&=&
\int_{\alpha}^{\beta} zf'(z)dz \\
&=&
\left[ zf(z) \right]_{\alpha}^{\beta} -\int_{\alpha}^{\beta} f(z)dz \\
\end{eqnarray}となる。
ここで、$f(\log2)=8$、$f(\log3)=27$だったから、
\begin{eqnarray}
\left[ zf(z) \right]_{\alpha}^{\beta}
&=&
27\log 3 -8\log 2 \\
\end{eqnarray}となる。また、$e^z=t$とおくと、$e^z\frac{dz}{dt}=1$なので、
\begin{eqnarray}
-\int_{\alpha}^{\beta} \frac{12(e^{3z}-3e^z)}{e^{2z}-1}dz
&=&
-\int_{2}^{3} \frac{12(t^2-3)}{t^2-1}dt \\
&=&
-12\int_{2}^{3} \frac{(t^2-1)-2}{(t+1)(t-1)}dt \\
&=&
-12\int_{2}^{3} \left(1+\frac{1}{t+1}-\frac{1}{t-1}\right)dt \\
&=&
-12\left[ t+\log(t+1)-\log(t-1) \right]_{2}^{3} \\
&=&
-12(3+\log 4-\log 2)+12(2+\log 3 -\log1) \\
&=&
-36 -12\log 2 +24 +12\log 3 \\
&=&
-12 -12\log 2 +12\log 3
\end{eqnarray}であるから、合わせると
\begin{eqnarray}
\int_8^{27} g(x)dx
&=&
(27\log 3 -8\log 2) +(-12 -12\log 2 +12\log 3) \\
&=&
39\log 3 -20\log 2 -12
\end{eqnarray}となる。
【解答終】
【解説】
(2)は置換積分にもっていくのも難しく、積分区間を計算するのも面倒です。そのうえ、部分積分のあとの計算も煩雑で、なかなか答えにたどり着けません。答えもきれいな形ではないので、すっきり感はありません。