共通テスト 数学I・数学A 2021年度 第3問 解説
【第3問~第5問から2問選択】
問題編
問題
中にくじが入っている箱が複数あり、各箱の外見は同じであるが、当たりくじを引く確率は異なっている。くじ引きの結果から、どの箱からくじを引いた可能性が高いかを、条件付き確率を用いて考えよう。
(1) 当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{2}$ である箱Aと、当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{3}$ である箱Bの二つの箱の場合を考える。
(i) 各箱で、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したとき
箱Aにおいて、3回中ちょうど1回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ア} }{\myBox{イ} }$ …①
箱Bにおいて、3回中ちょうど1回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ウ} }{\myBox{エ} }$ …②
である。
(ii) まず、AとBのどちらか一方の箱をでたらめに選ぶ。次にその選んだ箱において、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したところ、3回中ちょうど1回当たった。このとき、箱Aが選ばれる事象を $A$、箱Bが選ばれる事象を $B$ 、3回中ちょうど1回当たる事象を $W$ とすると
\begin{eqnarray} P(A\cap W)=\frac{1}{2}\times\frac{\mybox{ア} }{\mybox{イ} } P(B\cap W)=\frac{1}{2}\times\frac{\mybox{ウ} }{\mybox{エ} } \end{eqnarray}である。 $P(W)=P(A\cap W)+P(B\cap W)$ であるから、3回中ちょうど1回当たったとき、選んだ箱がAである条件付き確率 $P_W(A)$ は $\dfrac{\myBox{オカ} }{\myBox{キク} }$ となる。また、条件付き確率 $P_W(B)$ は $\dfrac{\myBox{ケコ} }{\myBox{サシ} }$ となる。(2) (1)の $P_W(A)$ と $P_W(B)$ について、次の事実(*)が成り立つ。
事実(*)
$P_W(A)$ と $P_W(B)$ の $\myBox{ス}$ は、①の確率と②の確率の $\mybox{ス}$ に等しい。$\mybox{ス}$ の解答群
0: 和
1: 2乗の和
2: 3乗の和
3: 比
4: 積(3) 花子さんと太郎さんは事実(*)について話している。
- 事実(*)はなぜ成り立つのかな?
- $P_W(A)$ と $P_W(B)$ を求めるのに必要な $P(A\cap W)$ と $P(B\cap W)$ の計算で、①, ②の確率に同じ数 $\dfrac{1}{2}$ をかけているからだよ。
- なるほどね。外見が同じ三つの箱の場合は、同じ数 $\dfrac{1}{3}$ をかけることになるので、同様のことが成り立ちそうだね。
当たりくじを引く確率が、 $\dfrac{1}{2}$ である箱A、 $\dfrac{1}{3}$ である箱B、 $\dfrac{1}{4}$ である箱Cの三つの箱の場合を考える。まず、A、B、C のうちどれか一つの箱をでたらめに選ぶ。次にその選んだ箱において、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したところ、3回中ちょうど1回当たった。このとき、選んだ箱が $A$ である条件付き確率は $\dfrac{\myBox{セソタ} }{\myBox{チツテ} }$ となる。
(4)
- どうやら箱が三つの場合でも、条件付き確率の $\mybox{ス}$ は各箱で3回中ちょうど1回当たりくじを引く確率の $\mybox{ス}$ になっているみたいだね。
- そうだね。それを利用すると、条件付き確率の値は計算しなくても、その大きさを比較することができるね。
当たりくじを引く確率が、 $\dfrac{1}{2}$ である箱A、 $\dfrac{1}{3}$ である箱B、 $\dfrac{1}{4}$ である箱C、 $\dfrac{1}{5}$ である箱Dの四つの箱の場合を考える。まず、A、B、C、D のうちどれか一つの箱をでたらめに選ぶ。次にその選んだ箱において、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したところ、3回中ちょうど1回当たった。このとき、条件付き確率を用いて、どの箱からくじを引いた可能性が高いかを考える。可能性が高い方から順に並べると $\myBox{ト}$ となる。
$\mybox{ト}$ の解答群
0: A, B, C, D
1: A, B, D, C
2: A, C, B, D3: A, C, D, B
4: A, D, B, C
5: B, A, C, D6: B, A, D, C
7: B, C, A, D
8: B, C, D, A
考え方
(3)で、直接、条件付き確率の計算をしなくてもよい、ということにどうつなげていくかがポイントです。それがわからないと、計算がめんどくさそうです。(4)も、計算しなくても答えを出す方法を考えましょう。
解答編
問題
中にくじが入っている箱が複数あり、各箱の外見は同じであるが、当たりくじを引く確率は異なっている。くじ引きの結果から、どの箱からくじを引いた可能性が高いかを、条件付き確率を用いて考えよう。
(1) 当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{2}$ である箱Aと、当たりくじを引く確率が $\dfrac{1}{3}$ である箱Bの二つの箱の場合を考える。
(i) 各箱で、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したとき
箱Aにおいて、3回中ちょうど1回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ア} }{\myBox{イ} }$ …①
箱Bにおいて、3回中ちょうど1回当たる確率は $\dfrac{\myBox{ウ} }{\myBox{エ} }$ …②
である。
解説
箱Aについて考えます。3回中1回当たる確率は、まず、何回目で当たるかが3通りあり、当たる確率もはずれの確率も $\dfrac{1}{2}$ だから\[ 3\times\frac{1}{2}\cdot\left(\frac{1}{2}\right)^2=\frac{3}{8} \]となります。
箱Bは、当たる確率は $\dfrac{1}{3}$ で、はずれの確率は $\dfrac{2}{3}$ なので\[ 3\times \frac{1}{3}\times \left(\frac{2}{3}\right)^2=\frac{4}{9} \]と求められます。
解答
アイ:38
ウエ:49
解答編 つづき
(ii) まず、AとBのどちらか一方の箱をでたらめに選ぶ。次にその選んだ箱において、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したところ、3回中ちょうど1回当たった。このとき、箱Aが選ばれる事象を $A$、箱Bが選ばれる事象を $B$ 、3回中ちょうど1回当たる事象を $W$ とすると
\begin{eqnarray} P(A\cap W)=\frac{1}{2}\times\frac{\mybox{ア} }{\mybox{イ} } P(B\cap W)=\frac{1}{2}\times\frac{\mybox{ウ} }{\mybox{エ} } \end{eqnarray}である。 $P(W)=P(A\cap W)+P(B\cap W)$ であるから、3回中ちょうど1回当たったとき、選んだ箱がAである条件付き確率 $P_W(A)$ は $\dfrac{\myBox{オカ} }{\myBox{キク} }$ となる。また、条件付き確率 $P_W(B)$ は $\dfrac{\myBox{ケコ} }{\myBox{サシ} }$ となる。
解説
3回中ちょうど1回当たる確率は、問題文にある通りに計算できて
\begin{eqnarray}
& &
\frac{1}{2}\times\frac{3}{8}+\frac{1}{2}\times\frac{4}{9} \\[5pt]
&=&
\frac{27+32}{144}=\frac{59}{144}
\end{eqnarray}となります。
よって、条件付き確率 $P_W(A)$ は
\begin{eqnarray}
\frac{\frac{1}{2}\times\frac{3}{8} }{\frac{59}{144} }=\frac{27}{59}
\end{eqnarray}となり、 $P_W(B)$ は
\begin{eqnarray}
\frac{\frac{1}{2}\times\frac{4}{9} }{\frac{59}{144} }=\frac{32}{59}
\end{eqnarray}と求められます。
解答
オカキク:2759
ケコサシ:3259
解答編 つづき
(2) (1)の $P_W(A)$ と $P_W(B)$ について、次の事実(*)が成り立つ。
事実(*)
$P_W(A)$ と $P_W(B)$ の $\myBox{ス}$ は、①の確率と②の確率の $\mybox{ス}$ に等しい。$\mybox{ス}$ の解答群
0: 和
1: 2乗の和
2: 3乗の和
3: 比
4: 積
解説
$P_W(A):P_W(B)=\dfrac{27}{59}:\dfrac{32}{59}=27:32$ であり、①の確率と②の確率の比は $\dfrac{3}{8}:\dfrac{4}{9}=27:32$ なので、比が一致します。
これは、この後の問題にもあるように
\begin{eqnarray}
P_W(A):P_W(B)
&=&
\frac{P(A\cap W)}{P(W)}:\frac{P(B\cap W)}{P(W)} \\[5pt]
&=&
P(A\cap W):P(B\cap W) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{2}\times①:\frac{1}{2}\times② \\[5pt]
&=&
①:② \\[5pt]
\end{eqnarray}と変形できることからも確かめられます。
解答
ス:3
解答編 つづき
(3) 花子さんと太郎さんは事実(*)について話している。
- 事実(*)はなぜ成り立つのかな?
- $P_W(A)$ と $P_W(B)$ を求めるのに必要な $P(A\cap W)$ と $P(B\cap W)$ の計算で、①, ②の確率に同じ数 $\dfrac{1}{2}$ をかけているからだよ。
- なるほどね。外見が同じ三つの箱の場合は、同じ数 $\dfrac{1}{3}$ をかけることになるので、同様のことが成り立ちそうだね。
当たりくじを引く確率が、 $\dfrac{1}{2}$ である箱A、 $\dfrac{1}{3}$ である箱B、 $\dfrac{1}{4}$ である箱Cの三つの箱の場合を考える。まず、A、B、C のうちどれか一つの箱をでたらめに選ぶ。次にその選んだ箱において、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したところ、3回中ちょうど1回当たった。このとき、選んだ箱が $A$ である条件付き確率は $\dfrac{\myBox{セソタ} }{\myBox{チツテ} }$ となる。
解説
箱Cについても、①や②と同じように、3回中ちょうど1回当たる確率を計算すると
\begin{eqnarray}
3\times \frac{1}{4}\times\left(\frac{3}{4}\right)^2
&=&
\frac{27}{64}
\end{eqnarray}となることがわかります。これを③とおきましょう。
こうすると、先ほどと同じように比を考えれば、
\begin{eqnarray}
& &
P_W(A):P_W(B):P_W(C) \\[5pt]
&=&
P(A\cap W):P(B\cap W):P(C\cap W) \\[5pt]
&=&
\frac{1}{3}\times①:\frac{1}{3}\times②:\frac{1}{3}\times③ \\[5pt]
&=&
①:②:③ \\[5pt]
\end{eqnarray}となるので、条件付き確率の比は、①,②,③の比を考えればいいことがわかります。
この比は
\begin{eqnarray}
\frac{3}{8}:\frac{4}{9}:\frac{27}{64}
&=&
24:\frac{256}{9}:27 \\[5pt]
&=&
216:256:243
\end{eqnarray}となります。(64を掛けた後に9を掛けています)
また、三つの箱の中のどれかを必ず選んでいるはずなので、 $P_W(A)+P_W(B)+P_W(C)=1$ が成り立ちます。よって\[ P_W(A)=\frac{216}{216+256+243}=\frac{216}{715} \]と求められます。
解答
セソタチツテ:216715
解答編 つづき
(4)
- どうやら箱が三つの場合でも、条件付き確率の $\mybox{ス}$ は各箱で3回中ちょうど1回当たりくじを引く確率の $\mybox{ス}$ になっているみたいだね。
- そうだね。それを利用すると、条件付き確率の値は計算しなくても、その大きさを比較することができるね。
当たりくじを引く確率が、 $\dfrac{1}{2}$ である箱A、 $\dfrac{1}{3}$ である箱B、 $\dfrac{1}{4}$ である箱C、 $\dfrac{1}{5}$ である箱Dの四つの箱の場合を考える。まず、A、B、C、D のうちどれか一つの箱をでたらめに選ぶ。次にその選んだ箱において、くじを1本引いてはもとに戻す試行を3回繰り返したところ、3回中ちょうど1回当たった。このとき、条件付き確率を用いて、どの箱からくじを引いた可能性が高いかを考える。可能性が高い方から順に並べると $\myBox{ト}$ となる。
$\mybox{ト}$ の解答群
0: A, B, C, D
1: A, B, D, C
2: A, C, B, D3: A, C, D, B
4: A, D, B, C
5: B, A, C, D6: B, A, D, C
7: B, C, A, D
8: B, C, D, A
解答
箱が2個や3個の場合からわかる通り、条件付き確率の比は、「それぞれの箱を選んだときの、3回中ちょうど1回当たる確率の比」と一致することがわかります。
箱Dについて、3回中ちょうど1回当たる確率は
\begin{eqnarray}
3\times\frac{1}{5}\times\left(\frac{4}{5}\right)^2=\frac{48}{125}
\end{eqnarray}となることから、条件付き確率の比は
\begin{eqnarray}
& &
\frac{3}{8}:\frac{4}{9}:\frac{27}{64}:\frac{48}{125} \\[5pt]
\end{eqnarray}の比と一致します。なので、この大きさの順が条件付き確率の大きさの順と一致します。
$\dfrac{3}{8}=0.375$, $\dfrac{4}{9}=0.444\cdots$, $\dfrac{27}{64}=0.421875$, $\dfrac{48}{125}=0.384$ だから、B, C, D, A の順番となります。選択肢の中では、8となります。
解答
ト:8