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京都大学 理系 2019年度 第4問 解説

問題編

問題

 1つのさいころを n 回続けて投げ、出た目を順に $X_1,X_2,\cdots,X_n$ とする。このとき次の条件をみたす確率を n を用いて表せ。ただし $X_0=0$ としておく。

 条件: $1\leqq k\leqq n$ をみたす k のうち、 $X_{k-1}\leqq 4$ かつ $X_k\geqq 5$ が成立するような k の値はただ1つである。

考え方

こういう問題では、よく、 $n-1$ と $n$ との状況を比較して考えることが多いです。しかし、この問題では出る目の条件がわかりやすいので、漸化式を使わずに解いていきます。

いつ $4$ 以下の値に戻るか、に着目する方法と、何回続けて $5$ 以上が出るか、に着目する方法とがありますが、どちらにしても、正確に計算するのはなかなか難しいです。


解答編

問題

 1つのさいころを n 回続けて投げ、出た目を順に $X_1,X_2,\cdots,X_n$ とする。このとき次の条件をみたす確率を n を用いて表せ。ただし $X_0=0$ としておく。

 条件: $1\leqq k\leqq n$ をみたす k のうち、 $X_{k-1}\leqq 4$ かつ $X_k\geqq 5$ が成立するような k の値はただ1つである。

解答

問題文にある条件を、条件(*) と書き、条件(*) を満たす場合を考える。 $k$ を、 $1\leqq k\leqq n$ で、 $X_{k-1}\leqq 4$ かつ $X_k\geqq 5$ を満たす、ただ1つの値とする。

このとき、 $X_0=0$ であることから、条件(*) より、 $i\leqq k-1$ のとき、 $X_i\leqq 4$ が成り立つ。以下では、 $i\geqq k$ のときに、 $X_i\leqq 4$ となることがあるかどうかで場合分けをして考える。

(i) $i\geqq k$ のときに、 $X_i\leqq 4$ とはならない場合

このとき、 $X_1$ から $X_{k-1}$ までの $k-1$ 個はどれも $4$ 以下で、 $X_k$ から $X_n$ までの $n-(k-1)$ 個はどれも $5$ 以上だから、こうなる確率は
\begin{eqnarray} & & \sum_{k=1}^n \left(\frac{2}{3}\right)^{k-1} \left(\frac{1}{3}\right)^{n-(k-1)} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n}\sum_{k=1}^n 2^{k-1} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n}\cdot\frac{1(2^n-1)}{2-1} \\[5pt] &=& \frac{2^n-1}{3^n} \end{eqnarray}となる。

(ii) $i\geqq k$ のときに、 $X_i\leqq 4$ となることがある場合

$i\geqq k$ で、はじめて $X_i\leqq 4$ となる $i$ を $m$ とおく。このとき、条件(*) より、 $i\geqq m$ では、つねに $X_i\leqq 4$ となる。

つまり、 $X_1$ から $X_{k-1}$ までの $k-1$ 個はどれも $4$ 以下で、 $X_k$ から $X_{m-1}$ までの $(m-1)-(k-1)$ 個はどれも $5$ 以上で、 $X_m$ から $X_n$ までの $n-(m-1)$ 個はどれも $4$ 以下である。また、こうなるのは $n\geqq 2$ のときで、 $k$ は $1\leqq k\leqq n-1$ の範囲を動き、 $m$ は $k+1\leqq m\leqq n$ の範囲を動くので、こうなる確率は
\begin{eqnarray} & & \sum_{k=1}^{n-1} \sum_{m=k+1}^{n} \left(\frac{2}{3}\right)^{k-1} \left(\frac{1}{3}\right)^{m-k} \left(\frac{2}{3}\right)^{n-(m-1)} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \sum_{k=1}^{n-1} \sum_{m=k+1}^n 2^{k-1}\cdot 2^{n-m+1} \\[5pt] &=& \frac{2^n}{3^n} \sum_{k=1}^{n-1} 2^k \sum_{m=k+1}^n 2^{-m} \\[5pt] &=& \frac{2^n}{3^n} \sum_{k=1}^{n-1} 2^k \cdot \frac{\frac{1}{2^{k+1} } \left(1-\frac{1}{2^{n-k} }\right)}{1-\frac{1}{2} } \\[5pt] &=& \frac{2^n}{3^n} \sum_{k=1}^{n-1} \left(1-\frac{1}{2^{n-k} }\right) \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \sum_{k=1}^{n-1} \left(2^n-2^k\right) \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \left\{ 2^n(n-1)-\frac{2(2^{n-1}-1)}{2-1} \right\} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \left\{ 2^n(n-1)-(2^n-2) \right\} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \left\{ 2^n(n-2)+2 \right\} \\[5pt] \end{eqnarray}となる。 $n=1$ とするとこの値は $0$ になるので、 $n=1$ のときもこの式は成り立つ。

よって、(i)(ii)を合わせて、
\begin{eqnarray} & & \frac{2^n-1}{3^n}+\frac{1}{3^n} \left\{ 2^n(n-2)+2 \right\} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \left\{ 2^n(n-1)+1 \right\} \\[5pt] \end{eqnarray}が求める確率である。

(終)

解説

ここでは、一度 $5$ 以上の値をとったあとに、再び $4$ 以下の値をとるときに着目して計算しています。他の方法として、 $5$ 以上の値をとる回数が何回か、に着目する方法もあります。

上の解答でも見た通り、あるところからあるところまではずっと $5$ 以上の値で、それ以外は $4$ 以下の値をとります。 $5$ 以上の値をとる回数が $s$ 回だとしましょう。このとき、 $s$ 回が $5$ 以上で、残りが $4$ 以下となる確率は $\dfrac{2^{n-s} }{3^n}$ です。また、 $5$ 以上の値をとるのはいつかを考えると、 $n-s+1$ パターンあるので、求める確率は
\begin{eqnarray} & & \sum_{s=1}^n \frac{2^{n-s}(n-s+1)}{3^n} \\[5pt] &=& \frac{2^n}{3^n}\sum_{s=1}^n \left\{2^{-s}(n+1)-s2^{-s}\right\} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。前半は等比数列の和、後半は等比数列と等差数列の積の和なので、それぞれ計算すれば、 \begin{eqnarray} & & \frac{2^n}{3^n} \left\{\frac{2^n-1}{2^n}(n+1) +2-\frac{1}{2^{n-1} }-\frac{n}{2^n}\right\} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \left\{(2^n-1)(n+1) -2^{n+1}+2+n\right\} \\[5pt] &=& \frac{1}{3^n} \left\{2^n(n-1) +1\right\} \\[5pt] \end{eqnarray}が得られます。

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