京都大学 理系 2018年度 第4問 解説
問題編
問題
コインを n 回投げて複素数 $z_1,z_2,\cdots,z_n$ を次のように定める。
(i) 1回目に表が出れば $z_1=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$ とし、裏が出れば $z_1=1$ とする。
(ii) $k=2,3,\cdots,n$ のとき、k 回目に表が出れば $z_k=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}z_{k-1}$ とし、裏が出れば $z_k=\overline{z_{k-1} }$ とする。ただし、 $\overline{z_{k-1} }$ は $z_{k-1}$ の共役複素数である。このとき、 $z_n=1$ となる確率を求めよ。
考え方
$z_k$ のとりうる値は限られています。まずはそこに気づくのがポイントです。それぞれのとる値の確率を求める、という方針で考え始めましょう。
確率漸化式を作る問題はよく出ています。少し変わった表現の仕方ですが、式さえできればあとは同じです。
解答編
問題
コインを n 回投げて複素数 $z_1,z_2,\cdots,z_n$ を次のように定める。
(i) 1回目に表が出れば $z_1=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$ とし、裏が出れば $z_1=1$ とする。
(ii) $k=2,3,\cdots,n$ のとき、k 回目に表が出れば $z_k=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}z_{k-1}$ とし、裏が出れば $z_k=\overline{z_{k-1} }$ とする。ただし、 $\overline{z_{k-1} }$ は $z_{k-1}$ の共役複素数である。このとき、 $z_n=1$ となる確率を求めよ。
解答
$\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$ とおく。
まず、 $z_1,z_2,\cdots,z_n$ は、 $1,\omega,\omega^2$ のどれかであることを数学的帰納法で示す。
$z_1$ は、 $1,\omega$ のどちらかなので正しい。
次に、 $z_k$ が $1,\omega,\omega^2$ のどれかであるとする。このとき、 k 回目に表が出れば、 $z_{k+1}=\omega z_k$ であり、 $\omega^3=1$ なので、 $z_{k+1}$ も $1,\omega,\omega^2$ のどれかである。また、 $\overline{\omega}=\omega^2$ なので、裏が出ても、 $z_{k+1}$ は $1,\omega,\omega^2$ のどれかである。よって、いずれにしても、 $z_{k+1}$ は $1,\omega,\omega^2$ のどれかである。
以上から、 $z_1,z_2,\cdots,z_n$ は、 $1,\omega,\omega^2$ のどれかとなる。
k を n 以下の自然数とするとき、 $z_k=1,\omega,\omega^2$ となる確率を、それぞれ、 $p_k,q_k,r_k$ とおく。 $1,\omega,\omega^2$ は、表が出れば、 $\omega,\omega^2,1$ となり、裏が出れば $1,\omega^2,\omega$ となることから、 n 未満の自然数 k について、次が成り立つ。
\begin{eqnarray}
p_{k+1} &=& \frac{1}{2}p_k+\frac{1}{2}r_k \\[5pt]
q_{k+1} &=& \frac{1}{2}p_k+\frac{1}{2}r_k \\[5pt]
r_{k+1} &=& q_k \\[5pt]
\end{eqnarray}これより、n 以下のすべての自然数 k について、 $p_k=q_k$ が成り立つことがわかる。また、 $p_k+q_k+r_k=1$ なので、
\begin{eqnarray}
p_{k+1} &=& \frac{1}{2}p_k+\frac{1}{2}(1-2p_k) \\[5pt]
\end{eqnarray}が n 未満の自然数 k について成り立つ。これを変形すると
\begin{eqnarray}
p_{k+1} &=& \frac{1}{2}p_k+\frac{1}{2}-p_k \\[5pt]
p_{k+1} &=& -\frac{1}{2}p_k+\frac{1}{2} \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで、 $x=-\dfrac{1}{2}x+\dfrac{1}{2}$ の解は $x=\dfrac{1}{3}$ なので
\begin{eqnarray}
p_{k+1}-\frac{1}{3} &=& -\frac{1}{2} \left(p_k-\frac{1}{3}\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}が成り立つ。これより、 n 以下のすべての自然数 k について、次が成り立つ。
\begin{eqnarray}
p_k-\frac{1}{3} &=& \left(-\frac{1}{2}\right)^{k-1} \left(p_1-\frac{1}{3}\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}ここで、 $p_1=\dfrac{1}{2}$ なので
\begin{eqnarray}
p_k-\frac{1}{3} &=& \left(-\frac{1}{2}\right)^{k-1} \left(\frac{1}{2}-\frac{1}{3}\right) \\[5pt]
p_k &=& \frac{1}{6}\cdot \left(-\frac{1}{2}\right)^{k-1} +\frac{1}{3} \\[5pt]
\end{eqnarray}
以上から、求める確率は\[ \frac{1}{6}\cdot \left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1} +\frac{1}{3} \]となる。
(終)