センター試験 数学II・数学B 2020年度 第5問 解説
【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)
(正規分布表は省略しています)
問題編
問題
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて29ページの正規分布票を用いてもよい。
ある市の市立図書館の利用状況について調査を行った。
(1) ある高校の生徒720人全員を対象に、ある1週間に市立図書館で借りた本の冊数について調査を行った。
その結果、1冊も借りなかった生徒が612人、1冊借りた生徒が54人、2冊借りた生徒が36人であり、3冊借りた生徒が18人であった。4冊以上借りた生徒はいなかった。
この高校の生徒から1人を無作為に選んだとき、その生徒が借りた本の冊数を表す確率変数を $X$ とする。
このとき、 $X$ の平均(期待値)は $E(X)=\dfrac{\myBox{ア} }{\myBox{イ} }$ であり、 $X^2$ の平均は $E(X^2)=\dfrac{\myBox{ウ} }{\myBox{エ} }$ である。よって、 $X$ の標準偏差は $\sigma(X)=\dfrac{\sqrt{\myBox{オ} }}{\myBox{カ} }$ である。
(2) 市内の高校生全員を母集団とし、ある1週間に市立図書館を利用した生徒の割合(母比率)を $p$ とする。この母集団から600人を無作為に選んだとき、その1週間に市立図書館を利用した生徒の数を確率変数 $Y$ で表す。
$p=0.4$ のとき、 $Y$ の平均は $E(Y)=\myBox{キクケ}$ 、標準偏差は $\sigma(Y)=\myBox{コサ}$ になる。ここで、 $Z=\dfrac{Y-\mybox{キクケ} }{\mybox{コサ} }$ とおくと、標本数600は十分に大きいので、 $Z$ は近似的に標準正規分布に従う。このことを利用して、 $Y$ が215以下となる確率を求めると、その確率は $0.\myBox{シス}$ になる。
また、 $p=0.2$ のとき、 $Y$ の平均は $\mybox{キクケ}$ の $\dfrac{1}{\myBox{セ} }$ 倍、標準偏差は $\mybox{コサ}$ の $\dfrac{\sqrt{\myBox{ソ} }}{3}$ 倍である。
(3) 市立図書館に利用者登録のある高校生全員を母集団とする。1回あたりの利用時間(分)を表す確率変数を $W$ とし、 $W$ は母平均 $m$ 、母標準偏差30の分布に従うとする。この母集団から大きさ $n$ の標本 $W_1,W_2,\cdots,W_n$ を無作為に抽出した。
利用時間が60分をどの程度超えるかについて調査するために\[ U_1=W_1-60,U_2=W_2-60,\cdots,U_n=W_n-60 \]とおくと、確率変数 $U_1,U_2,\cdots,U_n$ の平均と標準偏差はそれぞれ
\begin{eqnarray} & & E(U_1)=E(U_2)=\cdots=E(U_n)=m-\myBox{タチ} \\[5pt] & & \sigma(U_1)=\sigma(U_2)=\cdots=\sigma(U_n)=\myBox{ツテ} \\[5pt] \end{eqnarray} である。ここで、 $t=m-60$ として、 $t$ に対する信頼度95%の信頼区間を求めよう。この母集団から無作為抽出された100人の生徒に対して $U_1,U_2,\cdots,U_{100}$ の値を調べたところ、その標本平均の値が50分だった。標本数は十分大きいことを利用して、この信頼区間を求めると\[ \myBox{トナ}.\myBox{ニ} \leqq t \leqq \myBox{ヌネ}.\myBox{ノ} \]になる。
考え方
幅広く、基本的な内容が問われるセットです。計算量も多くはなく、過去問などで練習していれば、それほど難しく感じるところはないでしょう。
【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)
(正規分布表は省略しています)
解答編
問題
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて29ページの正規分布票を用いてもよい。
ある市の市立図書館の利用状況について調査を行った。
(1) ある高校の生徒720人全員を対象に、ある1週間に市立図書館で借りた本の冊数について調査を行った。
その結果、1冊も借りなかった生徒が612人、1冊借りた生徒が54人、2冊借りた生徒が36人であり、3冊借りた生徒が18人であった。4冊以上借りた生徒はいなかった。
この高校の生徒から1人を無作為に選んだとき、その生徒が借りた本の冊数を表す確率変数を $X$ とする。
このとき、 $X$ の平均(期待値)は $E(X)=\dfrac{\myBox{ア} }{\myBox{イ} }$ であり、 $X^2$ の平均は $E(X^2)=\dfrac{\myBox{ウ} }{\myBox{エ} }$ である。よって、 $X$ の標準偏差は $\sigma(X)=\dfrac{\sqrt{\myBox{オ} }}{\myBox{カ} }$ である。
解説
借りた本の冊数 $X$ が $1,2,3$ となる確率は、それぞれ $\dfrac{54}{720}$, $\dfrac{36}{720}$, $\dfrac{18}{720}$ なので、期待値は
\begin{eqnarray}
& &
1\times\dfrac{54}{720}+2\times\dfrac{36}{720}+3\times\dfrac{18}{720} \\[5pt]
&=&
\dfrac{54+72+54}{720} \\[5pt]
&=&
\dfrac{1}{4}
\end{eqnarray}
です。また、 $X^2$ の期待値は、
\begin{eqnarray}
& &
1^2\times\dfrac{54}{720}+2^2\times\dfrac{36}{720}+3^2\times\dfrac{18}{720} \\[5pt]
&=&
\dfrac{54+144+162}{720} \\[5pt]
&=&
\dfrac{1}{2}
\end{eqnarray}
となります。分散は $E(X^2)-\{E(X)\}^2$ で表されるので、 $\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{4^2}=\dfrac{7}{16}$ だから、標準偏差 $\sigma$ は\[ \sigma=\dfrac{\sqrt{7} }{4} \]となります。
解答
アイ:14
ウエ:12
オカ:74
解答編 つづき
問題
(2) 市内の高校生全員を母集団とし、ある1週間に市立図書館を利用した生徒の割合(母比率)を $p$ とする。この母集団から600人を無作為に選んだとき、その1週間に市立図書館を利用した生徒の数を確率変数 $Y$ で表す。
$p=0.4$ のとき、 $Y$ の平均は $E(Y)=\myBox{キクケ}$ 、標準偏差は $\sigma(Y)=\myBox{コサ}$ になる。ここで、 $Z=\dfrac{Y-\mybox{キクケ} }{\mybox{コサ} }$ とおくと、標本数600は十分に大きいので、 $Z$ は近似的に標準正規分布に従う。このことを利用して、 $Y$ が215以下となる確率を求めると、その確率は $0.\myBox{シス}$ になる。
解説
$Y$ は二項分布に従います。なので、平均は $E(Y)=600\cdot 0.4=240$ となり、標準偏差は\[ \sigma=\sqrt{600\cdot 0.4\cdot(1-0.4)}=12 \]となります。
$Z=\dfrac{Y-240}{12}$ とおくと、 $Z$ は近似的に標準正規分布に従うと考えられるので、
\begin{eqnarray}
& &
P(Y\leqq 215) \\[5pt]
&=&
P(Y-240\leqq 215-240) \\[5pt]
&=&
P\left(\dfrac{Y-240}{12}\leqq \dfrac{-25}{12}\right) \\[5pt]
&=&
P\left(Z\leqq -\dfrac{25}{12}\right) \\[5pt]
&=&
P\left(Z\geqq \dfrac{25}{12}\right) \\[5pt]
&=&
\dfrac{1}{2}-P\left(0\leqq Z\leqq \dfrac{25}{12}\right) \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。 $\dfrac{25}{12}=2.083\cdots$ なので、正規分布表から $0.4812$ なので、\[ 0.5-0.4812=0.0188 \]と計算でき、 $0.02$ だと求められます。
解答
キクケ:240
コサ:12
シス:02
解答編 つづき
問題
また、 $p=0.2$ のとき、 $Y$ の平均は $\mybox{キクケ}$ の $\dfrac{1}{\myBox{セ} }$ 倍、標準偏差は $\mybox{コサ}$ の $\dfrac{\sqrt{\myBox{ソ} }}{3}$ 倍である。
解説
$p=0.2$ のとき、 $Y$ の平均は $600\cdot0.2=120$ なので、 $p=0.4$ のときの $\dfrac{1}{2}$ 倍です。
標準偏差は\[ \sqrt{600\cdot 0.2\cdot(1-0.2)}=4\sqrt{6} \]なので、 $p=0.4$ のときの $\dfrac{4\sqrt{6} }{12}=\dfrac{\sqrt{6} }{3}$ 倍となります。
解答
セソ:26
解答編 つづき
問題
(3) 市立図書館に利用者登録のある高校生全員を母集団とする。1回あたりの利用時間(分)を表す確率変数を $W$ とし、 $W$ は母平均 $m$ 、母標準偏差30の分布に従うとする。この母集団から大きさ $n$ の標本 $W_1,W_2,\cdots,W_n$ を無作為に抽出した。
利用時間が60分をどの程度超えるかについて調査するために\[ U_1=W_1-60,U_2=W_2-60,\cdots,U_n=W_n-60 \]とおくと、確率変数 $U_1,U_2,\cdots,U_n$ の平均と標準偏差はそれぞれ
\begin{eqnarray} & & E(U_1)=E(U_2)=\cdots=E(U_n)=m-\myBox{タチ} \\[5pt] & & \sigma(U_1)=\sigma(U_2)=\cdots=\sigma(U_n)=\myBox{ツテ} \\[5pt] \end{eqnarray} である。
解説
母平均は $m$ なので、
\begin{eqnarray}
& &
E(U_1) \\[5pt]
&=&
E(W_1-60) \\[5pt]
&=&
E(W_1)-60 \\[5pt]
&=&
m-60 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。
また、定数を引いても、各値は同じ値だけスライドするだけなので、散らばり具合は変わらず、分散や標準偏差は変わりません。そのため、 $\sigma(U_1)=30$ となります。一応計算すると、
\begin{eqnarray}
& &
\left(\sigma(U_1)\right)^2 \\[5pt]
&=&
\left(\sigma(W_1-60)\right)^2 \\[5pt]
&=&
E\left[(W_1-60)^2\right] -E\left[W_1-60\right]^2 \\[5pt]
&=&
E\left[W_1^2-120W_1+3600\right] -(m-60)^2 \\[5pt]
&=&
E\left[W_1^2\right] -120E[W_1]+3600 -m^2 +120m -3600 \\[5pt]
&=&
E\left[W_1^2\right]-m^2 \\[5pt]
&=&
30^2
\end{eqnarray}となり、たしかに、 $\sigma(U_1)=30$ となります。
解答
タチ:60
ツテ:30
解答編 つづき
問題
ここで、 $t=m-60$ として、 $t$ に対する信頼度95%の信頼区間を求めよう。この母集団から無作為抽出された100人の生徒に対して $U_1,U_2,\cdots,U_{100}$ の値を調べたところ、その標本平均の値が50分だった。標本数は十分大きいことを利用して、この信頼区間を求めると\[ \myBox{トナ}.\myBox{ニ} \leqq t \leqq \myBox{ヌネ}.\myBox{ノ} \]になる。
解説
標本平均は、平均が $50$ で、標準偏差が $\dfrac{30}{\sqrt{100} }=3$ の正規分布に従うと考えられます。95%の信頼区間を求めるには、正規分布表から0.475となる値を見ればよいので、1.96だとわかります。よって、信頼区間は
\begin{eqnarray}
50-1.96\cdot 3 \leqq t \leqq 50+1.96\cdot 3 \\[5pt]
50-5.88 \leqq t \leqq 50+5.88 \\[5pt]
44.12 \leqq t \leqq 55.88 \\[5pt]
\end{eqnarray}となります。解答欄には、 $44.1\leqq t\leqq 55.9$ と答えます。
解答
トナニ:441
ヌネノ:559