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センター試験 数学II・数学B 2019年度 第5問 解説

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【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)

問題編

問題

(注:正規分布表は省略しています)

 以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて 29 ページの正規分布表を用いてもよい。

(1) ある食品を摂取したときに、血液中の物質 A の量がどのように変化するか調べたい。食品摂取前と摂取してから 3 時間後に、それぞれ一定量の血液に含まれる物質 A の量(単位は mg) を測定し、その変化量、すなわち摂取後の量から摂取前の量を引いた値を表す確率変数を $X$ とする。 $X$ の期待値(平均)は $E(X)=-7$ 、標準偏差は $\sigma(X)=5$ とする。

 このとき、 $X^2$ の期待値は $E(X^2)=\myBox{アイ}$である。

 また、測定単位を変更して $W = 1000X$ とすると、その期待値は $E(W) =-7\times 10^{\myBox{ウ} }$ 、分散は $V(W) = 5^{\myBox{エ} } \times 10^{\myBox{オ} }$ となる。


(2) (1)の $X$ が正規分布に従うとするとき、物質 A の量が減少しない確率 $P(X \geqq 0)$ を求めよう。この確率は\[ P(X\geqq 0)=P \left(\dfrac{X+7}{5}\geqq \myBox{カ}.\myBox{キ}\right) \]であるので、標準正規分布に従う確率変数を $Z$ とすると、正規分布表から、 次のように求められる。\[ P(Z\geqq \mybox{カ}.\mybox{キ})=0.\myBox{クケ} \quad\cdots ① \]

 無作為に抽出された 50 人がこの食品を摂取したときに、物質 A の量が減少するか、減少しないかを考え、物質 A の量が減少しない人数を表す確率変数を $M$ とする。 $M$ は二項分布 $B(50, 0.\mybox{クケ})$ に従うので、期待値は $E(M)=\myBox{コ}.\myBox{サ}$ 、標準偏差は $\sigma(M)=\sqrt{\myBox{シ}.\myBox{ス} }$ となる。ただし、 $0.\mybox{クケ}$ は①で求めた小数第 2 位までの値とする。


(3) (1)の食品摂取前と摂取してから 3 時間後に、それぞれ一定量の血液に含まれる別の物質 B の量(単位は mg) を測定し、その変化量、すなわち摂取後の量から摂取前の量を引いた値を表す確率変数を $Y$ とする。 $Y$ の母集団分布は母平均 $m$ 、母標準偏差 $6$ をもつとする。 $m$ を推定するため、母集団から無作為に抽出された 100 人に対して物質 B の変化量を測定したところ、標本平均 $\bar{Y}$ の値は $-10.2$ であった。

 このとき、 $\bar{Y}$ の期待値は $E(\bar{Y})= m$ 、標準偏差は $\sigma(\bar{Y})=\myBox{セ}.\myBox{ソ}$ である。 $\bar{Y}$ の分布が正規分布で近似できるとすれば、 $Z=\dfrac{\bar{Y}-m}{\mybox{セ}.\mybox{ソ} }$ は近似的に標準正規分布に従うとみなすことができる。

 正規分布表を用いて $|Z|\leqq 1.64$ となる確率を求めると $0.\myBox{タチ}$ となる。このことを利用して、母平均 $m$ に対する信頼度 $\mybox{タチ}$ %の信頼区間、すなわち、 $\mybox{タチ}$ %の確率で $m$ を含む信頼区間を求めると、 $\myBox{ツ}$ となる。 $\myBox{ツ}$ に当てはまる最も適当なものを、次の 0 ~ 3 のうちから一つ選べ。

 0: $-11.7\leqq m\leqq -8.7$
 1: $-11.4\leqq m\leqq -9.0$

 2: $-11.2\leqq m\leqq -9.2$
 3: $-10.8\leqq m\leqq -9.6$

考え方

(1)は、期待値や分散に関する問題です。一番初めは、分散ではないことに注意しましょう。

(2)は、正規分布を標準正規分布に変換する問題で、よく出るタイプですね。それと二項分布と関連させた問題もよく出る問題です。

(3)は、母平均の推定の話で、これもよく出るタイプです。

最近よく出ているタイプの問題が集まっていて、どれも変なひねり方はありません。オーソドックスなタイプばかりなので、教科書の内容がわかっていれば対応できるレベルです。


【選択問題】(第3問~第5問から2問選択)

解答編

問題

(注:正規分布表は省略しています)

 以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて 29 ページの正規分布表を用いてもよい。

(1) ある食品を摂取したときに、血液中の物質 A の量がどのように変化するか調べたい。食品摂取前と摂取してから 3 時間後に、それぞれ一定量の血液に含まれる物質 A の量(単位は mg) を測定し、その変化量、すなわち摂取後の量から摂取前の量を引いた値を表す確率変数を $X$ とする。 $X$ の期待値(平均)は $E(X)=-7$ 、標準偏差は $\sigma(X)=5$ とする。

 このとき、 $X^2$ の期待値は $E(X^2)=\myBox{アイ}$である。

解説

$X^2$ の期待値は、 $X$ の分散ではないことに注意しましょう。 $X$ の分散は\[ \left(E(X)\right)^2-E(X^2) \]です。この値は、標準偏差を2乗したものなので、 $25$ であることがわかります。また、 $E(X)=-7$ なので、
\begin{eqnarray} (-7)^2-E(X^2) &=& 25 \\[5pt] E(X^2) &=& 49+25=74 \\[5pt] \end{eqnarray}であることがわかります。

解答

アイ:74

解答編 つづき

問題

 また、測定単位を変更して $W = 1000X$ とすると、その期待値は $E(W) =-7\times 10^{\myBox{ウ} }$ 、分散は $V(W) = 5^{\myBox{エ} } \times 10^{\myBox{オ} }$ となる。

解説

期待値は、各値を足して個数で割ったものなので、各値が1000倍されれば、期待値も1000倍されます。よって、 $W$ の期待値は、 $X$ の期待値の1000倍なので、\[ E(W)=-7\times 10^3 \]となります。

分散は、各値に対して、平均との差の2乗を計算し、それらを足して個数で割ったものです。各値も平均も1000倍になるので、平均からの差の2乗は、1000倍の1000倍になります。よって、 $W$ の分散は、 $X$ の分散の $1000^2$ となります。 $X$ の分散は、標準偏差の2乗なので、 $25$ です。よって、\[ V(W)=25\times1000^2=5^2\times 10^6 \]となります。

解答

ウ:3
エオ:26

解答編 つづき

問題

(2) (1)の $X$ が正規分布に従うとするとき、物質 A の量が減少しない確率 $P(X \geqq 0)$ を求めよう。この確率は\[ P(X\geqq 0)=P \left(\dfrac{X+7}{5}\geqq \myBox{カ}.\myBox{キ}\right) \]であるので、標準正規分布に従う確率変数を $Z$ とすると、正規分布表から、 次のように求められる。\[ P(Z\geqq \mybox{カ}.\mybox{キ})=0.\myBox{クケ} \quad\cdots ① \]

解説

$X$ が正規分布に従うとき、 $X$ から期待値(平均)を引き、標準偏差で割ると、標準正規分布に従うようになります。 $X\geqq 0$ の左辺を、そのように変形すると
\begin{eqnarray} X & \geqq & 0 \\[5pt] X+7 & \geqq & 7 \\[5pt] \frac{X+7}{5} & \geqq & \frac{7}{5}=1.4 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。

$P(Z\geqq 1.4)$ の値を、正規分布表から求めてみましょう。 1.4 と 0.00 が交差しているところを見ると、 $0.4192$ となっています。これは、 $P(0\leqq Z\lt 1.40)$ のことなので、
\begin{eqnarray} P(Z\geqq 1.4) &=& P(Z\geqq 0)-P(0\leqq Z\lt 1.40) \\[5pt] &=& 0.5-0.4192 \\[5pt] &=& 0.0808 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。小数第2位までであれば、 $0.08$ となります。

解答

カキ:14
クケ:08

解答編 つづき

問題

 無作為に抽出された 50 人がこの食品を摂取したときに、物質 A の量が減少するか、減少しないかを考え、物質 A の量が減少しない人数を表す確率変数を $M$ とする。 $M$ は二項分布 $B(50, 0.\mybox{クケ})$ に従うので、期待値は $E(M)=\myBox{コ}.\myBox{サ}$ 、標準偏差は $\sigma(M)=\sqrt{\myBox{シ}.\myBox{ス} }$ となる。ただし、 $0.\mybox{クケ}$ は①で求めた小数第 2 位までの値とする。

解説

先ほど求めたように、物質 A の量が減少しない確率は $0.08$ だったので、50人のうち物質 A の量が減少しない人数を表す確率変数 $M$ は、二項分布 $B(50,0.08)$ に従います。よって、期待値は\[ 50\times 0.08=4 \]となります。解答欄に合わせると、 $4.0$ です。

また、標準偏差は
\begin{eqnarray} \sigma &=& \sqrt{50\cdot 0.08\cdot(1-0.08)} \\[5pt] &=& \sqrt{4\cdot0.92} \\[5pt] &=& \sqrt{3.68} \\[5pt] \end{eqnarray}となります。解答欄に合わせると、 $\sqrt{3.7}$ となります。

解答

コサ:40
シス:37

解答編 つづき

問題

(3) (1)の食品摂取前と摂取してから 3 時間後に、それぞれ一定量の血液に含まれる別の物質 B の量(単位は mg) を測定し、その変化量、すなわち摂取後の量から摂取前の量を引いた値を表す確率変数を $Y$ とする。 $Y$ の母集団分布は母平均 $m$ 、母標準偏差 $6$ をもつとする。 $m$ を推定するため、母集団から無作為に抽出された 100 人に対して物質 B の変化量を測定したところ、標本平均 $\bar{Y}$ の値は $-10.2$ であった。

 このとき、 $\bar{Y}$ の期待値は $E(\bar{Y})= m$ 、標準偏差は $\sigma(\bar{Y})=\myBox{セ}.\myBox{ソ}$ である。 $\bar{Y}$ の分布が正規分布で近似できるとすれば、 $Z=\dfrac{\bar{Y}-m}{\mybox{セ}.\mybox{ソ} }$ は近似的に標準正規分布に従うとみなすことができる。

解説

母標準偏差が $6$ で、標本の大きさが $100$ なのだから、標本平均の標準偏差は、母標準偏差を標本の大きさのルートで割って\[ \dfrac{6}{\sqrt{100} }=0.6 \]となります。

解答

セソ:06

解答編 つづき

問題

 正規分布表を用いて $|Z|\leqq 1.64$ となる確率を求めると $0.\myBox{タチ}$ となる。このことを利用して、母平均 $m$ に対する信頼度 $\mybox{タチ}$ %の信頼区間、すなわち、 $\mybox{タチ}$ %の確率で $m$ を含む信頼区間を求めると、 $\myBox{ツ}$ となる。 $\myBox{ツ}$ に当てはまる最も適当なものを、次の 0 ~ 3 のうちから一つ選べ。

 0: $-11.7\leqq m\leqq -8.7$
 1: $-11.4\leqq m\leqq -9.0$

 2: $-11.2\leqq m\leqq -9.2$
 3: $-10.8\leqq m\leqq -9.6$

解説

$|Z|\leqq 1.64$ 、つまり、 $-1.64\leqq Z\leqq 1.64$ となる確率を、正規分布表から求めてみましょう。1.6 と 0.04 が交差するところを見ると、 $0.4495$ です。これは $0\leqq Z\leqq 1.64$ となる確率なので、 $-1.64\leqq Z\leqq 1.64$ となる確率は、これを2倍して\[ 0.4495\times2=0.899 \]となります。解答欄に合わせると、 $0.90$ となります。

このことから\[ P \left(-1.64 \leqq \dfrac{\bar{Y}-m}{0.6} \leqq 1.64\right)=0.90 \]が成り立つことがわかります。この右辺のカッコの中を変形していきましょう。 $\bar{Y}=-10.2$ であることも使って
\begin{eqnarray} & & -1.64 \leqq \dfrac{\bar{Y}-m}{0.6} \leqq 1.64 \\[5pt] & & -0.984 \leqq -10.2-m \leqq 0.984 \\[5pt] & & -0.984 \leqq 10.2+m \leqq 0.984 \\[5pt] & & -11.184 \leqq m \leqq -9.216 \\[5pt] \end{eqnarray}となります。よって、解答欄にあう形に合わせれば\[ P(-11.2\leqq m\leqq -9.2)=0.90 \]となります。

解答

タチ:90
ツ:2

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